テクノロジー活用は企業収益に影響
調査ではまず「組織文化への浸透度」、「テクノロジーの導入状況」、「テクノロジーの活用度」の3つの観点から企業スコアを算出し、スコアの上位10%を「先行企業」、下位25%を「出遅れ企業」と定義して分析を行った。テクノロジー活用と企業の業績との関連性を、2015年から2023年の業績評価指標に基づき調査した結果、先行企業の収益成長率は出遅れ企業の2倍以上であることがわかった。さらに2018年に限定して見ると、出遅れ企業は年間で15%の増収機会を失っていることも判明した。このままのテクノロジー活用方法だと、約3年後には46%の増収の機会が失われる恐れがあるとの見方も示している。アクセンチュアに在籍するテクノロジーサービスの最高責任者バスカー・ゴーシュ氏は、「出遅れ企業は十分な戦略を立てないままにテクノロジーを導入した結果、見合った恩恵が得られず後れを取っている。一方、世界を代表する先進企業は、人との調和可能なシステム構築へ積極的な投資を行っている」とコメントしている。
イノベーション創出とサービスの付加価値を高める次世代システムの定義
先行企業においては、パートナー企業と相互連携を図りながら、人間とシステムの協働による新たな付加価値とイノベーション創出を目指し、次世代システムの構築に取り組んでいることがわかった。その特徴を3つに分類し、定義したものが以下のとおり。(1)境界線がないシステム:先行企業ではITシステムと企業、人とマシンの境界線を取り払うことで、パートナーシップとアイデアの活性化を図っているという。
(2)適応力に長けたシステム:自律学習と改善、環境の変化に適応できるシステムの構築によって、従業員の迅速で的確な意思決定に繋げている。
(3)人間と調和するシステム:人との会話、見聞きした内容理解が可能なシステム構築をしている。違和感のないコミュニケーションの実現を図り、企業の優位性を高める効果を得ている。
先行企業と出遅れ企業の間で浮き彫りとなった「対照的な意識の差」
さらに、先行企業と出遅れ企業との間には、テクノロジー導入と組織変革への考え方に乖離があることも分かった。「俊敏性と柔軟性をもたらすテクノロジーの導入」については、先行企業の98%がAIを導入しているのに対し、出遅れ企業での導入率は42%に留まっている。また、先行企業ではクラウド活用についても積極的で、AIやアナリティクスといったテクノロジーの利用を効果的に行うことを考えているようだ。先行企業の95%が「イノベーションの源泉としてクラウドを捉えている」と回答した一方、出遅れ企業は30%に留まる結果となった。
「資産としてのデータ管理」については、「自社データは十分な信頼性を担保している」と考える先行企業は94%と、出遅れ企業を30%上回った。また、90%の先行企業でデータ品質を確保するために、なんらかの対策を行っていることもわかった。さらに、「従業員に対して体験型学習プログラムを提供している」という先行企業は73%と、出遅れ企業の約3倍となった。人材スキルの向上という点でも両企業間には対照的な意識の差があるようだ。
企業には、イノベーションの創出に向けて、テクノロジーの潜在的な価値を引き出すことが求められている。そのためには、AIやクラウドなど目的に合致したテクノロジー導入だけでなく、有効に活用することは増収機会につながるという意識をもって取り組むことがイノベーションの創出成功への鍵となりそうだ。