第9回
自社としての「勝ち」を定義し
「勝ち」のための行動にダブルスタンダードは認めない
株式会社LIXILグループ
執行役副社長 八木 洋介 氏
Interviewer/株式会社セルム 常務取締役 田口佳子
2015年5月取材 ※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。
LIXILグループは、2011年4月に建設資材や住宅機器メーカー5社が統合して誕生した企業である。同年8月には、新しい企業の変革の舵取りのため、当時日本GEのCEOだった藤森義明氏が社長に就任し、「変革のためには人事が重要」として翌年4月に八木洋介氏がLIXILに迎えられた。
以来、日本企業の変革の1つの形として注目を集めてきた。
特に近年は、相次いで大型の海外M&Aを行うなど、グローバル化の動きを一段と加速させている。
この変革を人事の側面から加速させてきた変革のキーマン、執行役副社長 八木洋介氏に社内変革の取組と手応え、人事のプロとしてのリーダーシップについて、お話を伺った。
『人事は、人をその気にさせる「言葉力」を磨かなければならない』など、
インタビューはまだまだ続きます。ぜひダウンロードして、お読みください。
「勝ち」の定義・リーダーシップ・成功例、で変革は動き出す
田口
八木
私の考えでは日本企業の中で最もグローバルで通用しないことをやっているのが人事です。日本では仲良くやっていくことが良しとされ、同質性や公平性を重視します。経験重視という名の下で年功的な人事がまだまだ残っています。
世界ではそうではありません。世界は多様であり、そこに日本流を押し付けることはできません。
しかし、LIXILの社内では比較的早く何をしなければならないかを理解してくれたように思います。「我々は日本だから」といった変な抵抗がなかったところが、この会社のいいところです。
きちんとした船頭がいて、「勝ち」の定義とやり方を示して、いくつかの成功例がでてくると、皆、動き出します。
田口
八木
その時々の状況によって「勝ち」の定義がブレてはいけません。目標が定まらなければ戦略を立てられない、これは当たり前のことです。
田口
八木
やればできるじゃないか、という話で、変えることに対する恐怖心が和らいだと思います。
更に2015年の4月には、大きな組織改編を行いました。4つのテクノロジー事業と国内事業に再編するという大きなチャレンジです。これはある意味トップダウンで行うことですが、我々のような存在が競合に勝っていくためにはこのくらいのチャレンジは必要だ、と皆思うようになっています。これは大きなことです。
正しい事は成功させなければならない。
正義は勝たなければならない
田口
八木
「総論賛成、各論反対」などということを許した瞬間に会社はダメになります。「本音と建前」という言葉もありますが、本音なんて知ったことじゃありません。「やる」と言ったら最後、やるしかないのです。総論や各論、本音と建前とか、そんなダブルスタンダードは許してはいけないのです。
田口
八木
LIXILには外部から入った経営陣も多いですが、やるといったことにはコミットする、という人達の集団ですから一枚岩です。
もちろんバックグラウンドが違いますから何が正しいかに迷って躊躇する人もいました。社長の藤森はオープンな人間ですから、本当のことを言うのであれば、よく話を聞きます。ですから、行って直接コミュニケーションをするよう背中を押したこともあります。藤森に正しい情報をインプットすべきですから。
正しい情報をインプットしさえすれば、正しい方向へ向かう、これは私の信念です。
私も言ったことをちゃんとやりましたし、裏表はないことが、社内にも理解されたのでしょう。それで一緒にやっていこうとなってくれた。皆、勝ちに行こうと思っている集団なので、通じたのだと思います。
田口
八木
「これで勝たなければ雇用だって守れない」くらいの強いメッセージを出して、必ずやり遂げる。そうでないと勝てません。