強いチームを作るためには、チームのメンバー一人一人が自分で考え、自分で工夫し、自分で動くことが習慣化されている必要があります。要するに「自律型」の人材を育てるのがまずは私たち上司としての役割です。
 しかし、自律型の人材が集まっているのに、成果の出せない「弱い」チームは数多く存在します。自分で考えて動いてはいるものの、一人一人がバラバラに動いているいわゆる「一匹狼集団」です。
  では、チームを一匹狼集団にしてしまう上司は手を抜いているのでしょうか?

 そんなことはありません、むしろ熱心にメンバーに指導を行っているケースが多いのです。メンバーがお客様対応に困っている時は、進んで同行をしてフォローします。企画で悩んでいる時は、自分のアイデアを提供して助言を行います。もちろんメンバーのミスも全力でカバーします。
 このような上司の行動を見ていると、むしろ理想の上司とも言えます。

 しかし、このような上司の大きな欠点は、メンバー一人一人に対してアプローチをするだけで、メンバー間で相乗効果を出させるような仕掛けを施していないということです。一人一人のメンバーは上司のフォローのおかげで仕事がうまく進むことも多いのですが、チームとしてのまとまりはなく、情報を提供し合ったり、アイデアを出し合うことはほとんどありません。
 では、どうすればよいのか?いくつかのアイデアをご提示します。

◆メンバーだけのプチミーティングを設ける
 前述した面倒見の良い上司は、自分でミーティングを仕切り、一人一人に熱心にアドバイスを行います。メンバーも上司のアドバイスに期待して、すぐに上司の意見を求めてきます。つまり、メンバー同士がディスカッションする時間がありません。
 そこで、メンバーだけで行う「プチミーティング」を行うことをお勧めします。例えば、毎週1回、朝の時間を30分くらい使って現在一人一人が抱えている案件を紹介し合ってアイデアを共有する場を設けるといった内容です。上司が介在しないので、気楽に自由にアイデアを出し合えますし、朝に行うのでダラダラと長引くこともありません。

◆チーム内の役割は、主担当・副担当
 チーム内で役割を振る際は、一人一役ではなく、必ず主担当と副担当を決めます。主担当が主に役割を担うのですが、副担当も協力することが求められます。副担当も、別な役割においては主担当でありその副担当と協力します。これは、比較的有名なやり方ですが、本当にやっている職場は非常に少なく、実際にやっている職場では確実にメンバー間の相乗効果が表れています。

◆各メンバーの「今の仕事状況」を見える化
 各メンバーが現在抱えている仕事内容を「見える化」します。最近では、グループウェアなどのシステムで各自のスケジュールを見ることができる会社が多いですが、私は「スケジュールを紙に印刷してカベに貼りだす」ことをお勧めしています。
 カベの前を通る際に、ふと他のメンバーのスケジュールを目にして、「あ、山下さんは明後日大切なプレゼンだな・・・。私の資料を提供しよう」「森田さんは、明日から2日間研修か。留守の間に何かやってほしいことはないかな」といったことことが起こります。
 グループウェアにスケジュールを入れるだけですと、必要な人のスケジュールを見に行くだけで、全員のスケジュールを把握することはなかなか難しいのです。

◆口を出さず、人に振る
 メンバーが私たち上司に助言を求めてきた際には、思わず「あれも、これも」と手厚く指導をしてしまいがちです。それ自体は悪いことではありませんが、メンバー間の相乗効果は出にくくなってしまいます。上司自らが口を出すことは簡単ですが、敢えてそれをガマンし、「その件だったら、佐藤さんが得意だから聞いてみたら?」と振ってしまいましょう。不親切な上司と思われるのを恐れてはいけません。メンバーとメンバーをつないで、メンバー同士が相乗効果を出すことを期待してください。

 一人一人を自律型にしようと努力している上司は多いですが、チーム自体を自律型にしようとしている上司は、思ったよりも多くないのが現実です。
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