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「週休3日制」とは
「週休3日制」とは、1週間のうち3日間を休日として付与する制度だ。また、全社員が対象ではなく、希望者に限定して「週休3日制」を適用することを「選択的週休3日制」と言う。現状では、「週休2日制」もしくは「完全週休2日制」を採用する企業が大半だが、近年大企業をはじめとして「週休3日制」を導入するケースが増えつつある。「働き方改革」とは? 目的や関連法、取り組み事例をわかりやすく解説
「週休3日制」の3つの導入パターンと例
「週休3日制」といっても、運用方法によって以下の3パターンに分けることができる。それぞれについて、見ていこう。
●給与維持型
「給与維持型」は、休日を1日増やしながらも、給与水準は維持するタイプの「週休3日制」だ。出勤日における就業時間は変わらないので、週休2日制と比較すると総労働時間が減少することになる。労働時間を減らしても給与水準を維持するには、生産性の向上が不可欠となってくる。1日8時間労働×週5日(40時間)→1日8時間労働×週4日(32時間)で給与は維持
●総労働時間維持型
「総労働時間維持型」は、休日が増えても週休2日制と同じ総労働時間を維持するタイプの「週休3日制」を言う。具体的には、残りの稼働日の労働時間に2時間ずつ上乗せしていくことになる。給与水準に変化はないものの、稼働日の負担は大きいのでフォロー体制が重要となる。1日8時間労働×週5日(40時間)→1日10時間×週4日(40時間)で給与は維持
●給与減額型
「給与減額型」は、休日が増え労働時間が減少する分(全体の2割)の給与を減額するタイプの「週休3日制」だ。従業員からすれば、休日が増えるのはメリットだが、給与が減るのはデメリットとなる。休日を増やす必要性を感じていない従業員からは不満が出るかもしれない。1日8時間労働×週5日(40時間)→1日8時間労働×週4日(32時間)で給与は8割に減少
「週休3日制」が注目されている背景
ところで、今なぜ「週休3日制」が注目されているのか、その背景に着目したい。●ワークライフバランスの価値観の拡大
働き方改革の推進により、ワークライフバランスを重視する考え方がかなり定着してきている。これに伴い、仕事だけでなくプライベートを大切にする人が増えている。趣味や自己啓発などへの時間をより多く確保したい人にとっては、「週休3日制」は魅力的に映ることだろう。「ワークライフバランス」の意味と正しい使い方とは? 企業事例や推進のメリットを解説
●副業・兼業への関心の高まり
終身雇用や年功序列などの制度はもはや崩壊しつつある。勤務年数を重ねたからといっても昇給は期待しにくい状況と言える。そうした中で、「少しでも収入を高めたい」ということで副業・兼業に関心を持つ人が増えている。「週休3日制」であれば、副業・兼業にも時間を割きやすくなる。「副業・兼業」の意味や違いとは? 企業側が知っておくべきメリットや注意点を解説
●労働人口の減少
今や日本の労働人口は減少傾向にあり、どの企業も人手不足に悩んでいる。しかも、介護や育児を余儀なくされている人も少なくない。どうしたら、上手く両立できるかという課題に取り組んでいかなければならないが、「週休3日制」の導入は有効な解決策になると見込まれている。●シニア人材活用の重要度向上
高齢化が加速する中、企業には70歳までの継続雇用が求められている。そのため、近年はシニア人材が増えている。そうした人材をいかに活用していくか、企業としてしっかりと考えていかなければいけない。高齢であっても、無理なく働き続けられる環境づくりの一環としても「週休3日制」への注目度は高い。●政府による柔軟な働き方改革の推進
内閣府が、2021年6月に発表した『経済財政運営と改革の基本方針2021』で「週休3日制」を推奨した影響も大きい。ここでは、従業員の休日を増やすことによって、育児・介護・ボランティア、兼業の活用につながると指摘している。政府が柔軟な働き方を呼び掛けたことを受けて、企業の取り組みが加速している。「週休3日制」のメリット
ここでは、「週休3日制」を導入するメリットがどこにあるのかを説明したい。【従業員のメリット】
●ワークライフバランスの向上
休日が1日増えることで休養の時間も増え、心身がリラックスできるとともにワークライフバランスを向上できる。空いた時間を使って、家族と過ごしたり、趣味や自己啓発はもちろん、病気の療養に充てたりすることもできる。それぞれの事情に応えながら仕事を進めていきやすくなる。●育児・介護との両立
「週休3日制」になると休みが1日増えることになる。当然ながら、プライベートに充てられる時間が確保しやすくなり、仕事と育児・介護との両立がしやすくなる。精神的にも余裕を持てるはずだ。●健康維持がしやすい
「週休3日制」により、ゆとりのある働き方が実現できるようになる。その結果、自身の健康にも今まで以上に気遣うことができる。また、病気治療中の方や心身に障害がある方も、休みが増えることで就業しやすくなるのは間違いない。●副業・スキルアップの時間確保
「週休3日制」を導入すれば、これまで以上に副業・兼業への時間を割きやすくなる。また、スキルアップや自己啓発に取り組みたいと思っている人にとっても、絶好の機会となるであろう。【企業のメリット】
●人材確保と離職率の低下「週休3日制」を導入している企業は、求職者からすると魅力的に映る。多様な働き方を受け入れてもらえると判断できるからだ。その分、人材の確保がしやすくなる。また、ワークライフバランスを実現しやすい環境であれば、従業員の満足度も高い。自ずと離職率の低下につなげていける。●生産性向上休日が増えた分を取り返すためには、効率的に業務を遂行することが重要となる。当然ながら、何らかの工夫や仕組み作りが欠かせないので、従業員も生産性をいかに高めていくかを考えるはずだ。また、ワークライフバランスが向上することで従業員のモチベーションが高まり、結果として仕事のパフォーマンスがアップすることも想定される。●コスト削減全従業員の定休日を1日増やせば、その分の光熱費や通信費などの固定費が削減できる。しかも、何らかの工夫を施し労働生産性を高め、従来通りの成果を導くことができれば、コストが削減し利益率を上げられる。
●コスト削減全従業員の定休日を1日増やせば、その分の光熱費や通信費などの固定費が削減できる。しかも、何らかの工夫を施し労働生産性を高め、従来通りの成果を導くことができれば、コストが削減し利益率を上げられる。
「週休3日制」のデメリット
「週休3日制」はメリットばかりではない。デメリットもあることも触れておきたい。【従業員のデメリット】
●給与減少の可能性
これは、給与減額型の「週休3日制」を導入した場合に想定されるデメリットだ。単純に計算しても給料の2割はカットになってしまう。さらには、賞与や残業手当にも影響が出てくる。従業員にとっては、悩みの種となるはずだ。●長時間労働化の懸念
休日が1日増えたとしても業務量に変更がなければ、勤務日の業務時間は長くなる。そのため、長時間労働に陥りやすくなる。疲労も溜まるだけに、仕事に対するモチベーションが下がる懸念がある。●評価機会の減少
週末以外の休みが異なっていると、上司と勤務日が合わなくなる従業員がいたりして、評価に差が出やすくなることが想定される。昇進や昇給にとって、大きなデメリットとなるに違いない。そうした不安を抱かれないよう、企業側としては適正に評価できる仕組みを設計する必要がある。【企業のデメリット】
●勤怠管理や人事評価の複雑化
「週休3日制」を導入すると、勤怠管理や人事評価などの業務が複雑化しやすくなる。選択的週休3日制の場合は特に顕著だ。従業員によって、勤務日数や総労働時間が異なってくるからだ。結果的に、人事・労務関連の業務負担が多大になってしまう。●機会損失のリスク
「週休3日制」の導入は、ビジネス上の機会損失をもたらすリスクもあり得る。特に営業職は顕著となる。営業日が減少することで取引先とコミュニケーションを取る機会が減ってしまうからだ。また、新たな顧客から問い合わせがあったとしても、その日が休みだと、スピーディに対応できず、ビジネスチャンスを逸してしまうかもしれない。●従業員の業務量の偏り
選択的な「週休3日制」を導入した場合、当然ながら従業員の間には業務量や成果に差が出てきてしまう。選択しない従業員からすれば不平不満が出てくるのは間違いないだけに、何らかの仕組みを検討しなければいけない。「週休3日制」の導入の流れ
次に、「週休3日制」の導入に向けた流れを説明しよう。(1)目的の明確化
まずは、なぜ「週休3日制」を導入するのかという目的を明確化したい。たとえば、従業員の離職率が高まっている企業であれば、離職率の低下を目的として導入するということが考えられる。(2)導入対象者の選定
目的を明確にしたら、次は対象となる従業員を選定しよう。正社員だけなのか、契約社員も含めるのか、企業の状況に基づいて検討していく必要がある。また、全員を対象とするのでなく、希望者のみとする場合には、該当者が休んだ分の業務の補填をどうするか、休みを取っていない従業員の満足度やモチベーションをいかに維持していくかも問題となる。それらも含めて、最終的な対象者を確定するようにしたい。(3)運用パターンの選択
「週休3日制」には、給与維持型や総労働時間維持型、給与減額型などの運用パターンがあることを既に説明した。自社では、その中のどれを選択するのかを検討する必要がある。(4)規定の決定とワークフローの再編成
賃金の取り決めや有給休暇の取得条件、副業の解禁、休日の取り方、利用期間などに関する規定も決めなければいけない。また、ワークフロー(業務の流れ)を再編成しておくこともぜひお薦めしたい。いつ、誰が、何をするのか。業務の棚卸しをする必要がある。(5)システムの見直し
「週休3日制」を導入するとなると、当然ながら勤怠管理や給与計算、人事評価などの考え方や業務の進め方も変わってくるはずだ。当然ながら、それぞれに関連したシステムを導入している企業では見直しが求められる。(6)運用
「週休3日制」に対応したシステムに変更した後は、それをしっかりと運用していく必要もある。何らかの不都合が生じた場合には、迅速に手を入れていき業務への影響をできる限り少なくするようにしたい。「週休3日制」導入のポイント
「週休3日制」を導入する際のポイントを取り上げたい。●目的を従業員と共有する
「週休3日制」だけではないが、新たな制度や施策を導入する際には、目的を明確化した上でそれを従業員と共有することが重要となる。特に、導入することで給与が減少したり、労働時間が増加したりする場合は猶更だ。丁寧に説明し、周知徹底を図らないと組織に大きな弊害を招いてしまう。●連携体制を強化する
休日が増えることで従業員同士や上司・部下間でのコミュニケーション不足が起きやすくなる。結果的に、業務が上手く進まなくなる可能性も否めない。これまで以上に連携体制を緻密にする姿勢が重要だ。●社内外に情報共有できる仕組みを作る
時間や場所に関わらず、社内外で情報共有ができる仕組みを作ることも大切だ。会社が新たに休日と位置付けたその日も社会全体で見ると稼働している。予想しない事態にもスムーズに対応できるようにしておかなければいけない。●副業の解禁を検討する
「休日が増えることによって、給与が減ってしまうのでは」という不安を軽減するためにも、副業・兼業の解禁を検討するようにしたい。収入を補填できるし、社外での業務を経験することで従業員本人のスキルアップや意識の向上にもつなげていける。「週休3日制」を導入する企業の事例5選
最後に、「週休3日制」を導入した企業の事例を紹介する。●ファーストリテイリング
ファーストリテイリングは、「1日10時間×週4日勤務」の変形労働制を導入することで、週休3日でもフルタイムと同額の給与を維持している。主に、育児・介護との両立や自己研鑽を目的とした社員が活用し、特に共働き家庭では家族との時間が増加。土日勤務が原則となるため、平日の休みを活用して私生活を充実させる効果が見られていると言う。●ヤフー(LINEヤフー)
ヤフー(現LINEヤフー)は、育児や介護などの家族サポートが必要な従業員向けに「えらべる勤務制度」を導入。月単位で働く曜日を柔軟に変更でき、週休2日制への復帰も自由するなど、従業員が自分のニーズに応じて働き方をカスタマイズできる柔軟性の高さが特徴だ。これによって例えば、小学校の夏休み期間だけ8月限定で週休3日を選択するなど、ライフステージに合わせた働き方が可能となった。●みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループは2020年12月から「週休3日・4日制度」を導入した。社員の希望により、事由を問わず週に1日または2日の休みを追加でき、給与は週休3日で従来の約8割、週休4日で約6割に減少する仕組みだ。「社員自らが働き方をデザインし、モチベーションを高められるよう働き方の選択肢を拡充」するのが狙いだという。●リクルートホールディングス
リクルートホールディングスは2021年4月の関連7社統合を機に、年次有給休暇とは別に「フレキシブル休日」として年間約15日を自由に設定できる制度を導入し、年間休日を130日から145日に増やした。これにより、年間所定労働時間と給与を変えず“週休約3日”を実現しただけでなく、週に必ず3日休むのではなく、例えば2日しか休まなかった週の翌週に4日休むなど、休み方も柔軟に設計できるようになった。●日本マイクロソフト
日本マイクロソフトは2019年と2020年に「週休3日制」をトライアル導入し、生産性が向上する成果をあげている。トライアルでは、土日に加え金曜日を休業日とし、給与は維持したまま「特別有給休暇」として処理。会議は30分以内、最大5人までとするなど業務効率化も同時に推進した。その結果、印刷枚数が58.7%、電力消費が23.1%減少し、社員の92%が支持を表明。自己啓発やレジャーなどプライベートの充実にも貢献したという。まとめ
“人事は流行に従う”とも言われているが、「今話題だから」、「政府が呼び掛けているから」などといったノリで「週休3日制」を安易に導入するのは禁物だ。メリットとデメリットがあることを踏まえて、自社にとって相応しい制度であるかを十分に検討してもらいたい。まずは、「トライアル」で実施してみるのがお勧めだ。利用者だけでなく、利用していない従業員に対しても定期的に面談やアンケート、満足度調査を実施するとともに、他社の事例も研究しながら、最適な仕組みを構築していく必要がある。よくある質問
●「週休3日制」は1日何時間働くのか?
「週休3日制」の労働時間は導入パターンによって異なる。例えば「労働時間維持型」では、「週5日/1日8時間勤務」から「週4日/1日10時間勤務」に変更することで、週40時間を維持する。●「週休3日制」になると給料は減るのか?
「給与維持型」では休日が増えても給料は変わらず、「労働時間維持型」では総労働時間が変わらないため給料も同額となる。ただし「給与減額型」では労働時間の減少に伴い給料も減少し、例えば週32時間勤務なら給料は約80%となる。●「週休3日制」の義務化はいつから?
「週休3日制」の義務化は2025年4月現在では予定されていない。政府は2021年に「経済財政運営と改革の基本方針2021」において「選択的週休3日制」の普及を促す方針を示したが、あくまで企業や個人の自主的な選択に委ねられている。- 1