※最新版※【2024(令和6)年度版:法改正】フリーランス新法やマイナ保険証の詳細追加<社労士監修>
「フリーランス法」の対象を整理
「フリーランス保護法」の対象は、下記の図の赤い矢印の取引で、いわゆるBtoBの取引が対象です。緑色の矢印のように雇用契約を締結している場合には、労働法の対象ですので「フリーランス法」の対象にはなりません。引用元:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」
さて、もう1つのポイントは、「従業員を使用している企業」と「従業員を使用していないフリーランス」間の取引が本法律の対象である点です。このときの「従業員を使用している」とは、「週の所定労働時間が20時間以上かつ継続して31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用すること」です。「現在の雇用保険の対象になる従業員の有無」と思っていただくと大きな間違いはありません。
まとめたものが以下の図です。なお、「特定業務委託事業者」は「企業」、「特定受託事業者」は「フリーランス」と読み替えるとわかりやすいです。
引用元:前掲の図と同様
対象企業の義務項目と実務対応のポイント
「フリーランス法」の対象企業では、下記の内容が義務化されます。(2)報酬支払期日を納品日から60日以内に設定・期日内の支払
(3)以下の7つの行為の禁止(1ヵ月以上の業務委託の場合)
・受領拒否
・報酬の減額
・返品
・買いたたき
・購入、利用強制
・不当な経済上の利益の提供要請
・不当な給付内容の変更、やり直し
(4)募集情報の的確表示
(5)育児介護等と業務の両立に対する配慮(6ヵ月以上の業務委託の場合)
(6)ハラスメント対策に係る体制整備
(7)中途解約等の事前予告・理由開示(6ヵ月以上の業務委託の場合)
それでは、実務上の対応を具体的に解説します。
●期間の考え方
前述の義務項目のうち、(3)の禁止行為等は1ヵ月、(5)の育児介護等との両立配慮と(7)の中途解約等の事前予告・理由開示は6ヵ月以上の業務委託をする場合が対象です。この期間は、原則「業務委託をした日」から「契約終了日と給付受領予定日のうち遅い日」の期間で見ます。なお、業務委託契約が複数回行われるケースでは、「契約の当事者が同一であり、提供する業務の内容が一定程度同一性がある」ことと「空白期間が1ヵ月未満である」ことをいずれも満たす場合には、空白期間も含めた期間で見ます。例えば、4月1日~6月30日の業務委託契約の後、7月15日~9月30日で類似業務の業務委託契約を締結した場合には、4月1日~9月30日を1つの期間とみなします。
●報酬の支払期日の設定と支払義務
報酬の支払期日は、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内の期間内で定めます。「支払期日」は前述(1)の必須明示事項の中にありますので、契約時に明確化すべき内容です。支払期日が明確に定められていない場合には、下記のように設定されます。●物品等を受領した日から60日を超えた日で定めたとき …… 受領した日から起算して60日目
ただし、「元委託者→自社→フリーランス」のように、自社で委託している事業をフリーランスへ再委託している場合は、下記3点をフリーランスへ明示していれば、支払期限を「元委託者と定めた報酬支払期日から起算して30日以内」で定めることができます。
●元委託者の商号、氏名、法人番号等、元委託者を識別できるもの
●元委託業務の報酬の支払期日
●育児介護等と業務の両立に対する配慮
今後は、育児介護等と業務の両立の配慮がフリーランスに対しても求められます。下記はあくまで一例ですが、このような申し出があった場合には配慮が必要です。●就業時間の短縮、育児介護と両立可能な就業日・時間の設定
●オンライン対応
●子の急病等による納期の変更
検討した結果配慮が難しい場合には、配慮できない理由の説明まで求められます。法改正による義務項目の中には「ハラスメント対策」もありますから、不当な配慮拒否はトラブルの元です。
ただし、これらの配慮はフリーランスの申出があった場合に行えばよいこととされており、あらかじめ育児介護等の有無を把握した上で申出がない場合も配慮することまでは求められていません。
いかがでしたか。すべての義務項目の実務上の注意点には触れられませんでしたが、特に気をつけたいポイントを抜粋して紹介しました。本法律の対象取引がある場合には、11月までにきちんと準備しましょう。
- 1