「ブレインストーミング(ブレスト)」は、ビジネスにおける会議でお馴染みの集団発想法である。あまりにも定番な手法なのでわかっているつもりになりがちだが、その定義や正しいやり方をきちんと把握できているだろうか。意外と盲点があるため、今一度理解を深めてほしい。そこで本稿では、「ブレインストーミング」の意味や4つの原則、進め方、代表的な手法を一通り解説していく。
ブレインストーミングで意見を共有する若いビジネスパーソンのイラスト

「ブレインストーミング(ブレスト)」とは?

「ブレインストーミング」とは、集団でアイデアや問題の解決策を創出する集団発想法の一つである。会議の席で、複数のメンバーが短い時間でアイデアを出しあい、まとめ上げていく際に用いられる。ビジネスシーンでは、「ブレスト」と略されるケースが多い。

「ブレインストーミング」が注目され始めたのは、1950年代に遡る。米国の実業家アレックス・F・オズボーン(Alex F. Osborn)が、広告・マーケティング業界で使い始めたことがきっかけとなった。以来、数多くの企業がこの手法を活用し、独創的なアイデアを効率的に見出してきている。


「ブレインストーミング」のメリット

ところで、なぜ「ブレインストーミング」はこれほどまでに定着しているのであろうか。そのメリットを考察してみたい。

●多様なアイデアが生まれる

「ブレインストーミング」を行うことで、会議の参加メンバー全員がさまざま立場から自由な発想で多様なアイデアを出し合える。それを続けていく中で思考が練られ、問題に対してベストな解決策を発見することができる。結果として、組織にイノベーションが加速されることになると言える。

●結束力が強まる

実は、「ブレインストーミング」は問題解決以外のシーンでも役立つ。これを行うことで、会議の参加者全員がそれぞれの思考や価値観、信念を共有することができ、お互いを深く理解しあえるようになる。また、問題解決に向けて一緒にアクションをすることで、仲間意識も醸成される。自ずと、チームとしての一体感や結束力は強まる。

●アイデアが共有できる

「ブレインストーミング」には、多数のアイデアを共有できるメリットもある。通常の質疑応答だと一つの回答に対して議論していくことになるが、誰かが提示したアイデアを他の複数のメンバーが一斉に共有できるので、非常に効率的と言える。

●相互刺激により個々の成長が見込める

「ブレインストーミング」の場では、参加者同士が意見交換を行うことができる。他のメンバーの意見やアイデアは、自分とは全く視点が異なっていることも珍しくない。なので、新鮮に映るし刺激を得ることができる。その経験を積むことで、参加者の能力を高めていくことも可能となる。

●視点の偏りを避けられる

自分一人であれこれと考えて問題を解決していければ、心理的には楽なはずだ。しかし、どうしても視点が偏る可能性が高い。その点、「ブレインストーミング」に立場や考え方が違うメンバーも参加し、それぞれが自由に意見やアイデアを出し合うことができれば、一人では思いつかなかったような解決策と出会えるかもしれない。

「ブレインストーミング」のルール(4原則)

「ブレインストーミング」を成功させるためには、守るべきルールが4つある。それらを取り上げたい。

(1)アイデアを批判・否定しない

まずは、アイデアを批判・否定しないことだ。判断をするのも良くない。むしろ、「ブレインストーミング」の場ではアイデアの良し悪しは問わないという強いスタンスを貫くべきだ。とにかく、誰であってもリラックスな雰囲気の中で気軽に発言できる場にする必要がある。結果的に数多くのアイデアを集めることができるはずだ。

(2)どんなアイデアも歓迎する

一見、現実的であるとは思えないようなアイデアに新たな価値を創造するヒントが秘められているということもあり得る。それだけに、従来にはない発想であっても素直に受け入れる姿勢が「ブレインストーミング」には求められる。もちろん、発言者が何の気兼ねなく自由にアイデアを言えるような空気感を作り上げておかないといけない。そこは、リーダーやマネージャー、上司の率先的な行動を期待したい。

(3)質より量を重視する

「ブレインストーミング」では、質よりも量を重視することも重要だ。とにかく、できるだけ多くのアイデアを集めるようにしていきたい。沢山のアイデアを募ることで、より広範囲に渡る解決策を導き出すことができる。

(4)アイデアを結合・発展させる

「ブレインストーミング」で参加者全員のアイデアを出し切った段階で、関連性のあるアイデアを組み合わせ、一つのグループとしてまとめることも欠かせない。これを行うことで、さらに新たなアイデアを見つけ出し、アイデアを発展させることができるからだ。アイデアの出しっ放しは絶対にしてはいけない。

「ブレインストーミング」のやり方

では、実際に「ブレインストーミング」を行う際の段取り・やり方を説明しよう。

(1)問題と目的を明確にする

まずは、「ブレインストーミング」ではどんな問題を扱うのか、何が目的なのかを参加者全員に対して、明確に提示しておかないといけない。「自由に言いたいことを言えば良い」であっても、参加者が目的を理解していなければ、意味のあるアイデアが出てこないからである。あくまでも、ゴールをクリアにした上で、そこに向かってセッションを行っていくことが重要となる。

(2)ファシリテーター(進行役)と参加者を決める

次に、会議のファシリテーター(進行役)と参加者を決める必要がある。ファシリテーターの役割は、会議の舵取りだ。話がそれない、散漫にならないようにするためにリードしていかなければいけない。また、参加者の創造性を引き出す適切な質問を投げかけることも重要となる。

並行して、議論を行うためには参加者を複数決めて集める必要もある。その際に、ポイントとなるのは異なったバックグランドや価値観を持つ人材を選出することだ。

(3)制限時間の中でアイデアを出せるだけ出す

「ブレインストーミング」は、延々と行えば良いというわけではない。集中力がどうしても下がっていくからだ。それだけに、限られた時間の中でどれだけ沢山のアイデアを集められるかがポイントとなってくる。数多くアイデアを提示することで、より幅広い視点から解決策にアプローチすることができる。

(4)アイデアをまとめる

「ブレインストーミング」を通じて、ある程度アイデアが想起された段階で、アイデアをまとめる必要がある。言い換えれば、アイデアを整理するということだ。その上で会議としての結論を出すようにしたい。

「ブレインストーミング」に役立つフレームワーク

続いて、「ブレインストーミング」に役立つフレームワークを幾つか紹介したい。

●KJ法

KJ法は、「ブレインストーミング」で出たアイデアをカードや付箋に書き出し、グループ化しながら、情報を分類・整理していく手法を言う。これを用いることで、論理的に情報を整理できる点が特徴だ。具体的には、以下の4つのステップがある。

1)アイデアにラベルを付ける
2)付箋にアイデアを書き込む
3)付箋をグループごとに分けて図解化させる
4)アイデアを文章としてまとめる

●マインドマップ

マインドマップは、頭の中で考えていることを視覚的に表現する思考整理法だ。課題解決や製品開発、組織改革などの場面で活用されることが多い。マインドマップは、以下のステップで作成していける。

1)メインテーマを決める
2)サブブランチを決める
3)サブブランチとメインテーマを線でつなぐ
4)マインドマップに色を付け加える

●SCAMPER法

SCAMPER法は、創造性開発研究家のボブ・エバールが開発した「ブレインストーミング」の手法だ。その特徴は、複雑な問題に対してイノベ―ティブな解決策を見つけ出すことができることにある。そのため、多くの企業で使用されている。実際には、以下の7つの質問に回答することによって問題を定義付けていく。

1)Substitute:代わりになるものはあるか。
2)Combine:何かと組み合わせられるか。
3)Adopt:応用することはできるか。
4)Modify・Magnify:改良・調整できる点はあるか。
5)Put to other uses:他の何かに使えないか。
6)Eliminate:取り除けるものはないか。
7)Reverse・Rearrange:入れ替え、再編できるものはあるか。

●マンダラチャート

マンダラチャートは、9×9のマスから成る目標達成ツールである。そのセンターに自分(自分たち)が達成したいビジョンを書き、それを囲む8つのマスにサブテーマを示し、さらにその周りにサブテーマを遂行するための課題やアクションを落とし込んでいく。目標達成までのプロセスの全体像が一目瞭然で可視化されるのがメリットと言える。

●SWOT分析

SWOT分析とは、企業の内部環境と外部環境を分析するためのフレームワークだが、実は「ブレインストーミング」でも応用できる。集められたアイデアに実行する価値があるかどうか、以下のように議論してみるのもお勧めだ。

強み (Strengths): そのアイデアは、どのように競合他社より優れていると言えるか。
弱み (Weakness): アイデアの実行を妨げる欠陥があるか。
機会 (Opportunities): そのアイデアによって、他にどんな利益が得られるか。
脅威 (Threats): そのアイデアを実行すると、どんなリスクがあると見込まれるか。

まとめ

どの企業も生産性の向上を余儀なくされている。「何か今までにない、画期的な商品やサービスを生み出せないか」、「従来よりも効率的な手法を考え出せないか」などと現場にさまざまな指示が経営陣から出されているはずだ。そんな時に役立つのが、「ブレインストーミング」だ。会議やワークショップの場で、皆でさまざまな視点からアイデアを出し合い、フレームワークを用いることで、より良いアイデアへと集約・発展させていくことができる。しかも、短い時間であっても多くのアイデアを集められるとあって、タイパ(タイムパフォーマンス)の観点でも優れている。スピード感のあるイノベーションが求められる今日、改めて「ブレインストーミング」が持つ価値を理解し、現場で実践してもらいたい。

よくある質問

●「ブレインストーミング」の4原則は?

「ブレインストーミング」やアイディア出しをおこなううえで、意識しておきたい4つの原則は、以下である。

(1)アイデアを批判・否定しない
(2)どんなアイデアも歓迎する
(3)質より量を重視する
(4)アイデアを結合・発展させる

●「ブレインストーミング」とは、簡単に言うと?

「ブレインストーミング(ブレスト)」とは、簡単に言うと、複数人でアイデアや問題の解決策を出していく集団発想法のことである。短時間でアイデアを出しあい、まとめ上げていく。
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