社員の採用や評価にあたって、人事が重視するポイントとして良く挙げられるのが「協調性」だ。他のメンバーと良い人間関係を構築していけるかどうかの判断材料となる。どんな人が「協調性」を持ち合わせているのか。どう見極めることができるのか。今回は「協調性」の定義や「協調性」がある人の特徴、そして見極め方について詳細に説明していきたい。
「協調性」とは? 協調性がある人の特徴と見極め方を解説

「協調性」とは?

最初に「協調性」とは何かから説明していきたい。

●「協調性」の意味

「協調性」とは自分と異なる立場や環境にある人の意向を汲み取り、協力して共通の目標・目的の実現に向けて仕事をしていける能力を指す。といっても、ただ単に人と仲良くするだけではなく、相手の意図に従ってばかりのイエスマンでも決してない。自分の意見や考えを持ちながらも、周囲の意見や考えにも上手く合せられる能力を意味する。

● コミュニケーション能力や社交性との違い

「協調性」はコミュニケーション能力とのつながりが深い。コミュニケーション能力とは、自分の意見や考えを周囲に思い通りに伝えられる、または相手が言いたいことを的確に理解できる能力だ。コミュニケーション能力が高ければ、「協調性」も持ち合わせており、逆にコミュニケーション能力が低いと「協調性」が低いこともあるので、この二つはかなりリンクしている。

また、社交性とは誰とでもすぐに仲良くなれる性質を言う。付き合う、仲良くなろうとする相手は自分と性格や考え方が似ているケースがほとんどだ。これに対して、「協調性」は性格や考え方が異なる相手と調和を図っていこうとする行動を指す。

ビジネスにおいて「協調性」が必要な理由

では、どうしてビジネスにおいて「協調性」が重視されるのであろうか。必要な理由を何点か挙げたい。

●仕事の効率につながるため

仕事を進めるためには、立場や意見・考えの異なる人を巻き込み、同じ目標を目指していく必要がある。「協調性」に優れた人は周囲とのコミュニケーションを円滑に図れるだけに、意思疎通の不十分さに起因するトラブルは発生しにくい。その分、効率的に仕事を遂行できる。

●会社の理念が浸透しやすくなるため

「協調性」を持ち合わせた人は、物事に対する理解や共感する能力にも長けている。素直に受け入れることができるからだ。そのため、企業が掲げる理念やビジョンも腹落ちしやすく、自ずとそれらに則った理想的な行動をするので成果もいち早く導いていける。

●人間関係が良好になるため

職場においては、良好な人間関係が求められる。円滑なコミュニケーションが図られていれば、取引先との間で万が一トラブルが発生したとしても、問題の解決に向けて上司や同僚と協力しながら迅速かつ的確な対応を図ることができる。

●人事評価に影響するため

ビジネスに「協調性」が必要な理由の一つに、人事評価への影響が挙げられる。人事評価には、能力考課と業績考課、情意考課という3つの評価基準がある。このうち、「協調性」が関わってくるのは、組織の目標達成に向けてどのような行動や姿勢を示したかを評価する情意考課だ。ここでは、周囲のメンバーと上手く連携できていたか、歩調を合わせて仕事をしていたかが重視される。まさに、「協調性」が問われることになる。

●役割分担が適切に行えるため

役割分担が明確でないと重複して業務を進めていたり、場合によっては誰も着手しない空白なゾーンが生まれたりする。それでは、生産性に優れたチームを作ることはできない。やはり、効率的・効果的に組織の目標・目的を実現していくには、「協調性」を重視した上でそれぞれの役割を明らかにし、各自に何を期待しているかを示していく必要がある。

「協調性」がある人の特徴7選

「協調性」がある人にはどんな特徴があるのであろうか。ここでは7つのポイントを紹介したい。

●人の話を聞いて向き合う

「協調性」に優れた人はヒアリング力が高い。そのため、相手の立場に立ってしっかりと話を聞き、自分事として受け止められる。もし、相手の意見や考えが間違っていても、むげに否定はしない。最後までじっくりと聞こうという姿勢が見られる。そのため、相手も自ずと心地良い気分でやりとりしてくれる。

●視野が広く洞察力に優れている

視野が広く洞察力に優れているのも「協調性」のある人に共通して見られる特徴だ。瞬時にその場の人間関係を的確に見抜けるのも、その現れと言って良いだろう。その場にいる人の中で、誰が決定権を持っているのか、誰にどう働きかけると自分の意図がスムーズに伝わるかをスピーディーに判断できる。

●感情をコントロールできる

組織の一員として働くためには、感情をコントロールする力も必要となる。自分勝手な発言や行動を繰り返してばかりだと、職場の人間関係を悪くさせてしまうからだ。その点、「協調性」に優れた人は、何か突発的な出来事に遭遇しても感情的にならず、いつも通りに冷静沈着に対応することができる。

●ルールを守ることができる

スポーツと同様、ビジネスシーンでもルールを守ることは重要となる。各自が好き勝手に動き回っていては、組織としての総合力を発揮できないからである。その点、「協調性」がある人はルールをしっかりと把握し、それに則って仕事を進めることができるので評価されやすい。

●自ら相手のために行動する

誰かが仕事で悩んでいたり、困っていたりしたら、進んで手を差し伸べるのも「協調性」のある人の特徴だ。それができるのも、常に周囲を見渡しているからと言って良い。事態を的確に捉えるのはもちろんのこと、「こういう流れになるのでは」と先読みして手伝うことが可能だ。

●自分の意見を押しつけない

「協調性」のある人は、決して自分の意見を押し付けることはせず、相手の立場を尊重する。自己主張し過ぎてしまうと組織の雰囲気やバランスを乱す恐れがあることを知っているからだ。たとえ、相手とは意見が違っていてもしっかりと耳を傾けられ、「ここは相手の意見を尊重しよう」と判断した場合には臨機応変な対応もできる。

●チームワークを大切にする

会社は一つの組織であり、チームでもある。それだけに、いかに他のメンバーと協力・連携しあい、スムーズに仕事を進めていけるかが重要となってくる。しかも、メンバーの年齢も考え方もさまざまである。最近であれば、国籍も多様だ。そうした人たちが一体となって仕事に取り組んでいくためにも、「協調性」は不可欠となってくる。

「協調性」がない人の特徴

一方、「協調性」がない人にはどのような特徴があるのか。何点か挙げたい。

●自己主張が強い

会議などでさまざまな意見が出されても、自分の主張の正当性に固執し周囲の考えを決して受け入れないとしたら、混乱が極まるばかりである。「協調性」のない人は、人の意見に耳を傾ける一方で調整を図ることが苦手だ。そのため、最後まで自分の意見を押し付けることに捉われがちである。

●プライドが高い

プライドが高いのも、「協調性」に欠ける人の特徴だ。常に自分を優先しがちなので、人の意見に耳を貸さないことも珍しくない。また、自分の意見は間違っていないという自信があるのため、否定的な意見を言われるのを極端に嫌がる。結果として、職場の雰囲気も悪くなってしまう。

●自分中心である

「協調性」がない人は、自分中心的な性格が多い。そのため、自分の意見が通るのが当たり前で人の意見は聞くのも無駄と考えているほどだ。こうした性格のメンバーが一人でもチームにいると、全体の雰囲気が悪くなり社員のモチベーションは下がってしまう。

●融通が効かない

とかく、「協調性」のない人は融通が利かず、臨機応変な行動を苦手としている。何をするにしても、「自分は正しい」と思い込んでしまいがつだ。視点が自分にばかり向いているので周りの人がどんな意見や考えを持っているのか、どのような状況にあるのかといったことに興味を示さないことが多い。最悪の場合、ミスやトラブルなど会社に影響する大きな問題につながってしまう。

●人の話を聞かない

相手の話を聞かない、興味を持てないというのも「協調性」のない人の特徴だ。「自分には関係ない」と思い込んでいるからである。そうかと思えば、自分の話をするのは好きである傾向が強い。こうしたタイプは、組織の中で働いた場合、様々な部署に迷惑をかけてしまうと言って良い。

●ルールを守れない

ルールを守れない人は「協調性」がないと言わざるを得ない。例えば、無断で会社を休む、連日遅刻を繰り返す、職場に相応しくない服装で出勤するなどだ。組織の一員である以上は、ルールに準拠した行動が求められる。

「協調性」がある人を採用する方法

ここでは、採用にフォーカスして「協調性」がある人を見極めるポイントはどこにあるのか解説していく。

●グループ面接を行う

1対1ではなく、グループでの面談を行うのも効果的だ。そうした場を通じて、自分の意見に固執せず、他のメンバーに気遣った発言ができているか、自分だけでなく全体を見渡せる視野の広さがあるかを判断できる。最近では、人事の狙いを先読みして、こうした機会で敢えてリーダーシップを発揮し、良い印象を与えようという求職者もいる。留意して選考に臨むようにしたい。

●協調性やチームワークに関する考え方を聞く

面談などで人となりを理解するために、敢えて「協調性」やチームワークに関する見解を質問するのも良い方法だ。例えば、以下の質問を投げかけてみてはどうだろうか。

・あなたがチームワークを発揮できたと思えるエピソードを教えてください。
・チームの一員として行動する際に心がけていることは何ですか。

●適性検査を実施する

適性検査も選択肢に織り込みたい。適性検査は応募者の性格特性を数値として可視化してくれる。質問に回答してもらうことで、「協調性」の有無もわかるため推奨したい。

社員の「協調性」を高める方法

最後に、現場で活用できる社員の「協調性」を高める方法が幾つか紹介したい。

●組織体制を見直す

新たな施策に取り組む前に、まずは現在の組織体制が「協調性」を育むに相応しい状況であるのか見直してみよう。意外と、他者との協力以上に個人の成果創出を優先する組織があるかもしれない。組織体制をチェックしてみることで、「協調性」が上手く機能できていない原因が見つかるだろう。

●チームビルディング研修を行う

チームビルディングとは組織におけるチームワークを強化する取り組みを指す。研修を通じて、社員各自の「協調性」や主体性、連帯感を高めることでチーム全体の生産性や仕事に対するモチベーションをアップできる。具体的には、アクティビティやスポーツなどを用いて協力の重要性を理解するプログラムがある。

●チームワークを促進するゲームを実施する

チームワークを高めるゲームを実施し、判断力や論理的思考を楽しく身に付けていくのも効果的だ。例えば、チームごとに配布された紙だけを用いてタワーを組み上げていくペーパータワーや制限時間内にチームメンバーを誕生日順に並び替えるバースデーライン、謎解き、ボードゲームなどが挙げられる。

まとめ

多くの企業では採用や人事評価の項目として「協調性」を取り入れている。仕事に対する気持ちや態度など、いわゆる情意評価の重要な要素として位置づけられているからだ。人事として社員の「協調性」の有無、レベル感が容易に把握できれば苦労はしないが、実際にはそうではない。「何を見れば判断できるのか」「何を聞けば良いのか」と悩んでいるのが実態ではないだろうか。今回の記事を通じて「協調性」の概要についてインプットしながら、自社に合った「協調性」の見極め方、育成フローの構築を目指し、効果的な仕組みづくりやツールの活用も検討してみてはいかがだろうか。
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