ハザードマップによる災害リスクの把握
長期間にわたる新型コロナウイルスの流行で全国的に影響が出ていますが、地震や大雨など災害に関するニュースも各地で報告されています。リスクには、新型コロナウイルスのように事前に把握できないものもありますが、企業のBCP対策として、緊急時などのリスクを想定しておく必要があります。皆様の企業では、どのようなリスクが考えられるでしょうか。まず、安心して勤務するために、企業の環境は重要です。例えば、事業所の設立や移転の際に、「大雨による河川の増水」や「雨水による浸水」の予測を参考にされていますでしょうか。洪水、土砂災害、高潮、津波などによる各地域のリスクについては、国土交通省のハザードマップポータルサイト等で調べられます。「洪水浸水想定区域図・洪水ハザードマップ」では、河川が氾濫した際に浸水が想定される区域と、想定される水深(想定し得る最大規模の降雨)、浸水継続時間を確認することが可能です。
また、移転等が難しい場合でも、「災害対策基本法」に基づき、市町村長が指定した崖崩れ、土石流及び地滑りに対応する「指定緊急避難場所」を確認しておくことで、職員を安全に避難させることが可能です。もしものときのために、入社時の説明や、定期的な会議等で周知しておきましょう。
次に、安心して勤務するためには「事務所の中のセキュリティ」も重要です。入退出用のカードキー(鍵)や防犯カメラ、消火器などに加え、ネットワークセキュリティのUTM(統合脅威管理)、クラウドストレージの活用など、犯罪や災害、情報に対する事務所のセキュリティ対策として、ぜひご確認ください。
情報を守る「クラウドストレージ」の活用を
BCP対策において欠かせない「情報セキュリティ」に有効なのが、クラウドストレージです。クラウドストレージの特徴は、データをWeb上で保管・共有・管理し、フォルダやファイルごとにアクセス権限設定を設けられる点です。データを閲覧する権限、ダウンロードする権限、削除する権限などを企業が管理することで、情報漏洩を防ぐことが可能です。テレワークで業務を行うかどうかに関わらず、必要なツールの一つです。新型コロナウイルスを機に、迅速にテレワークを実施できたのは、ペーパーレス化が進み、クラウドストレージの活用ができていた企業ですし、今後のBCP対策としても有効です。仕事内容にもよりますが、「データさえあればテレワークで業務を進められる」という企業も多かったのではないでしょうか。
また、パソコンの急な故障により、パソコンの中に保存しておいたデータが復旧できなくなったり、誤ってデータを消去してしまったりするケースもよく耳にしますが、企業にとって情報は重要な資産になります。従業員個人に任せるのではなく、企業がまとめて管理し、データのバックアップをとることも重要です。データのバックアップは、個人では管理できないところに保存することで、万が一のときのときもデータを復旧することが可能です。
クラウドストレージを活用することで、複数の端末から同じデータが閲覧できます。また、パソコンが壊れてもデータはなくならない、パソコンを紛失してもクラウドストレージへのログイン情報が流出しない限りは外部からのデータ閲覧が防げる……などのメリットがあります。
その他にも、「USBメモリーに情報を保存して持ち運び、紛失してしまった」といったリスクもなくなります。最近は、USBメモリーはウイルスの感染の原因にもなっていて、USBメモリーや外付けハードディスクの使用を禁止している企業も多いです。パソコンでUSBメモリーや外付けハードディスクの使用を禁止するほか、アクセスを制限してUSBメモリーを無効にする方法もありますので、ぜひ、そういった機能を活用いただければと思います。
多様な働き方も「BCP(事業継続計画)」対策の一つに
企業でBCP対策を進めることで、「多様な働き方」も実現しやすくなります。やり方次第で、企業の事情に応じて従業員に副業・兼業を認めること、また、予想以上の受注時に外部の労働者を受け入れることなども可能になります。企業は新型コロナウイルスの流行に際し、休業せざるを得ない従業員に休業手当を支払ったり、雇用調整助成金を受給することで雇用を維持したりするなどの手段を取りました。緊急時、短期間であれば、これらの対応でも良かったと思いますが、コロナ禍は現在に至るまでの長期となり、雇用保険料の料率アップで、企業の負担は今後増えることになります。
一方で、コロナ禍を契機に、出向や副業・兼業制度を活かして成長した企業も多く見受けられました。新規事業へ転換した企業もありました。これらの事例も、BCP対策の一つとして参考にしてみてはいかがでしょうか。
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