私の家族について
最初に私の家族についてご紹介します。子供が3人いますが、長男は自閉症という障害を持って産まれました。自閉症はこだわりが強く、コミュニケーション能力に欠陥があるのが特徴です。幼稚園は集団生活ができずに2ヵ月で退園、小学校でもトラブル多発で、私は頻繁に呼び出されました。山登りが好きな子で、毎週家族で山登りをしました。中学時代はイジメによって不登校になり、高校時代は幻聴に悩まされました。その後も社会性が身につかず、今でも週に3回施設に通う生活が続いています。次に私のパートナーについてお話しします。1984年に急性肝炎で入院したのを皮切りに、以後20年にわたって肝硬変やうつ病で入退院を繰り返しました。また、2000年から2001年にかけて3回も自殺未遂をしました。そもそも、なぜうつ病になったのか。要因はいろいろありますが、一つは自分が原因で障害を持った子供を産んでしまったと思っていたこと。もう一つは、彼女は典型的なA型人間で、家事などに手を抜かない完璧主義者だったためです。自分が病院で寝ている間、旦那が仕事をしながら家事もして、障害のある子供の面倒まで見ている状況が辛かったのでしょう。自分を責め、それがうつ病を悪化させていました。
この苦境をどうやって乗り切ったか
1984~1987年、パートナーは肝炎のため3年間で5回入院。3人の子供は当時、中2、小6、小5。そうした中、私は仕事も家事もすべて計画的・戦略的に行おうと、毎朝5時半に起床して、3人分の食事と弁当を作り、18時には退社。土曜は病院に見舞いに行き、日曜は一週間分の家事をしました。一方、会社では仕事の計画性・効率性を徹底させました。1997年~2003年の間に、パートナーは約40回の入院を繰り返しました。できるだけ計画的・戦略的行動をしようと心掛けましたが、残念ながら私は経営企画室長をやっていました。つまりトップマネジメントのスタッフです。社長から会長、副社長、専務までいろいろな人がおり、上司が常に7~8人いるような状態です。当時の東レは会議の回数が多い上に時間も長く、資料も読み切れないくらいありました。おかげで私は定時には帰れなくなりました。
ただ、私は持って生まれた楽天主義者で、いつかきっと良い日が来ると信じていました。あれだけ入退院を繰り返していた我がパートナーですが、2003年以降は一度も入院をしていません。なぜ彼女は回復したのか。2003年は私が東レ経営研究所の社長になった年です。
私は社長ですから、会社の仕事のやり方は私が決められます。つまらない会議はやらない、会議はできるだけ短くする、資料は簡潔にまとめる、という方針をとりました。忙しいときの残業は仕方ないですが、通常は全員定時に帰ってもらいました。私自身も毎日家に早く帰り、彼女をサポートできるようになったので、それが安心感に繋がり、うつ病を治していったのだと思います。
私は自分の家族のために時間を確保しなければなりませんでした。それは皆さんも一緒だと思います。映画を観たい、本を読みたい、自己啓発の勉強をしたい、いろいろとやりたいことがあるのに、それができない最大の障害が、長時間労働と非効率労働です。仕事の成果と長時間労働とは、必ずしも関係はありません。
仕事の進め方の基本10箇条
現在、安倍内閣が働き方改革を推進し、多くの企業でワークライフバランスという言葉が飛び交っています。ワークライフバランスとは、日本語で「仕事と生活の調和」という意味です。しかしこれは自分の仕事を定時に終わらせて、私生活を充実させようということではありません。ワークライフバランスとは、個人も会社も共に成長するという経営戦略です。ですから、その人がそれまで20時、21時まで残っていたとしたら、定時に帰るようになっても、それと同じか、それ以上の結果を会社に残さなければなりません。要するにワークライフバランスというものは、仕事の改革があって初めて実現できるのです。よって、きちんとしたタイムマネジメントが求められます。
私が課長になったとき、部下全員に「仕事の進め方の基本10箇条」というものを配信し、毎日のように言い続けました。そして次の職場でも同じことを言い続けてきましたので、38歳で課長になってから東レ研究所の社長を辞めるまで、実に20年以上、毎日同じ話をしてきたということになります。私は良い習慣は、才能を超えると思っています。10箇条は以下の通りです。
(1)計画主義と重点主義…仕事の計画策定と重要度を評価。すぐに走り出してはいけない。
(2)効率主義…最短コースを選ぶこと。
(3)フォローアップの徹底…自ら業務遂行の冷静な評価を行い、次のレベルアップに繋げる。
(4)結果主義…仕事はそのプロセスでの努力も理解するが、その結果で評価される。
(5)シンプル主義…事務処理、管理、制度、資料、会話はシンプルを持って秀とする。
(6)整理整頓主義…仕事の迅速性に繋がる。
(7)常に上位者の視点…自分より上の立場での発想は仕事の幅と内容を高度化する。
(8)自己主張の明確化…しかし他人の意見をよく聞くこと。
(9)自己研鑽…向上心は仕事を面白くする。
(10)自己中心主義…自分を大切にするということは人を大切にするということ。
タイムマネジメントに必要な3つのポイント
タイムマネジメントで最も大事なのは何かを正しく掴むことです。つまり、タイムマネジメントとは時間の管理ではありません、仕事の管理です。ここで私が実践してきた仕事術のポイントを3つご紹介します。必ずしも直接皆さんの役に立つとは限らないので、意図を咀嚼して聞いてください。1つ目は、計画先行・戦略的仕事術です。主なポイントとしては、戦略的計画的立案は仕事を半減させる、スケジュール化の癖をつける、最初に品質基準を決める、デッドラインを決めて追い込む、最初に全体構想を描く、締め切りは1週間前、締め切りは交渉次第、スケジュール表で時間を見る、時間予算を把握する、自分へのアポイントを入れる、部下の昇格を1年前から準備する、部下力を強化する、などが挙げられます。
2つ目は、時間節約・効率的仕事術です。ポイントとしては、プアなイノベーションより優れたイミテーションを繰り返す、仕事は発生したその場で片づける、拙速を旨とせよ、時には寝かすことが有効、人は決めつけろ、口頭より文書が時間節約・様式を決定する、長時間労働は「プロ意識」「想像力」「羞恥心」の欠如、などが挙げられます。
そして3つ目は、時間増大・広角的仕事術です。ポイントとしては、パレートの法則・捨てる仕事を決める・拙速を旨とせよ、出ない・会わない・読まない、上司との付き合いは最重要課題である、2段上の上司と上手に付き合う、会議は最小限にしてミーティングは頻繁に行う、隙間時間の活用・いつも身近に仕事のファイルを持つ、などが挙げられます。
より良いタイムマネジメントを実現させるためには、まず働き方と生き方に、決意と覚悟を持つこと。そして、仕事の工程表を作ることが大事です。このようなトップの意識と行動が会社を変えると思います。
1つ目は、計画先行・戦略的仕事術です。主なポイントとしては、戦略的計画的立案は仕事を半減させる、スケジュール化の癖をつける、最初に品質基準を決める、デッドラインを決めて追い込む、最初に全体構想を描く、締め切りは1週間前、締め切りは交渉次第、スケジュール表で時間を見る、時間予算を把握する、自分へのアポイントを入れる、部下の昇格を1年前から準備する、部下力を強化する、などが挙げられます。
2つ目は、時間節約・効率的仕事術です。ポイントとしては、プアなイノベーションより優れたイミテーションを繰り返す、仕事は発生したその場で片づける、拙速を旨とせよ、時には寝かすことが有効、人は決めつけろ、口頭より文書が時間節約・様式を決定する、長時間労働は「プロ意識」「想像力」「羞恥心」の欠如、などが挙げられます。
そして3つ目は、時間増大・広角的仕事術です。ポイントとしては、パレートの法則・捨てる仕事を決める・拙速を旨とせよ、出ない・会わない・読まない、上司との付き合いは最重要課題である、2段上の上司と上手に付き合う、会議は最小限にしてミーティングは頻繁に行う、隙間時間の活用・いつも身近に仕事のファイルを持つ、などが挙げられます。
より良いタイムマネジメントを実現させるためには、まず働き方と生き方に、決意と覚悟を持つこと。そして、仕事の工程表を作ることが大事です。このようなトップの意識と行動が会社を変えると思います。
経営改革実践の例 (SCSKの場合)
続いて、私がコンサルティングをした企業の事例をご紹介します。SCSKは、従業員12,000人のITベンダーです。同社は経営改革として、オフィス移転(1人当たりスペース2倍)、日次週次での業務の優先順位付け、1best運動(電話1分、議事録1枚、会議1時間)、合言葉「smart work challenge 20」(前年比20%残業減、有給20日)を提唱、リフレッシュデーの策定(毎週水曜+週2日/週3日)、裁量労働制・フレックスタイム・テレワーク導入などを行いました。
また、すべての部長を巻き込んで、以下の3つを約束――(1)人を大切にします、(2)確かな技術に基づく最高のサービスを提供します、(3)世界と未来を見つめて成長し続けます――。さらに、早く帰ることが正しい・恰好がいい、女性が活躍できない会社に未来はない、といった文化の改革も行いました。同社の取り組みの中で特にユニークなのは、減った残業代を社員に還元したことです。そのようにして残業が減っていく中、同社は5年連続増収増益という大きな成果をあげています。
経営改革実践の例 (長岡塗装店の場合)
もう一つ、中小企業の事例もご紹介します。長岡塗装店は島根県松江市の従業員数9名ほどの小さな会社です。この会社の悩みは社員が辞めていくことでした。そこで離職防止のために社員一人ひとりに寄り添う施策を実行していきました。例えば、出産祝い金10万円・弾力的育休・保育料・介護料の支援、子育て・妊娠中の社員のための休憩室・短時間制度、子供参観日・代休・振替休日・子供手当(1万円/20歳まで)、各種研修・セミナー・講演会への参加奨励、技能士の国家試験・各種資格取得の奨励・費用の補助、定年70歳など。
こうした個々の社員に合わせた対応により、資格者の増加・仕事の質の向上・モチベーション向上、社員の定着、売上・利益の拡大、さらに社員数は9人から26人に、 子供の数は0人から23人に、子供のいる社員の数は0人から14人に増えるなど、さまざまな効果が見られました。同社の成功要因は一体何か。キーワードとして挙げるならば、小さい会社だからこそできる、人はみな何らかの制約を持っている、社内の多様な立場の人たちを尊重しあえてこそチーム力が向上する、そして、トップが動く、です。
リーダーに求められることとは?
最後に、リーダーのマネジメントについてお話しします。自分と人を活かすマネジメントとはどういうものでしょうか。そのポイントは、自分の考えを確立させる(主体性を持つ)、目的を明確にする(自分のミッションとは?)、優先順位を決める(何が重要か?)、仕事の効率化の両輪であるコミュニケーションと信頼関係を大切にする、その人に合わせた対応をする、多くを語らず多くを聴く、時間的(精神的)余裕を持つ、自分流のリーダーの在り方を確立させる(自然体で)などが挙げられます。本来、マネジメントに必要なリーダーシップとは何でしょう。リーダーの定義は、勇気と希望を与える人、会えて良かったと思う人、一緒に仕事をして楽しい・幸せだと感じる人。そしてそのリーダーに必要な要素・素質は、思いやりがあること、真摯であること、揺ぎなき倫理を持つことだと思います。
私は自分の著書の中で、「働く君に贈る25の言葉」というものを書きました。そこから5つの言葉を抜粋してご紹介します。まずは、「目の前の仕事に真剣になりなさい。」そして、「欲を持ちなさい。」欲が磨かれて志になります。「自分を偽らず素のままに生きなさい。」「自分を磨くために働きなさい。」そして、「それでもなお人を愛しなさい。」
以上、ご清聴ありがとうございました。
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