信頼とは何を意味するでしょう? ある人や物を頼ることができるという信念や自信と定義できます。一方、信頼が少なすぎたり多すぎると危険です。頭と心、事実と本能のバランスを取って良好な決断を下し優れた判断をしたときに、健全な信頼が生まれます。
健全な信頼環境で働けば仕事への満足感、やる気にあふれた社員、生産性の向上、ストレス低下、イノベーションの増大、すぐれた接客、スタッフの定着率の向上などのメリットにつながります。
信頼感と敬意には密接な関係があります。あなたが私を信頼しなければ、私を信頼に足るとは思わず敬意も払わないでしょう。あなたが私に敬意を持たなければ、私のことを信頼できるとは思わないでしょう。あなたが私を信頼できると思わなければ、私のことを信頼することも敬意を払うこともないでしょう。
不信感はどのような形で表れるでしょうか? 6つの注意信号があります。 (1) やる気の低下とモチベーションやイニシアチブの欠如、 (2) 欠勤や遅刻が多く、離職率が高い、 (3) コミュニケーションが遠慮がちだったり、ゴシップや噂話が盛んで誤った情報が流れる、 (4) スタッフの間に不安や懸念が広がっている、 (5) ひねくれた行動や不審な行動 、(6)受け身または攻撃的な行動やコミュニケーションの6つです。
日本では不信感のレベルを見極めるのが難しいことがあります。上司であるあなたは当然ながら、事実を知ることが最後になるでしょう。実情を知りたいなら、スタッフの一人ひとりとオフィス外でざっくばらんに話をしてはどうでしょう。中年以上の日本人は呑みに行くのが職場の習わしですが、そこでは上司の悪口を言ってもお酒のせいにできます。
信頼を取り戻すにはどうすればよいでしょうか? まず、重要なサイクルがあることを知っておくことが必要です。 (a) ある出来事をきっかけに相手との信頼関係がこわれた (b) 落胆、怒り、恨み、不安を味わった (c) その問題に対して感情的にならず、一歩引いて実情について考える時間を取ることが必要 (d) 状況についての自分の考えや感情を相手と話し合う。
日本ではここが一筋縄ではいきません。日本人はなかなか本音を話さないからです。ある社員が何を心配しているか答えを聞き出すまでに、まるまる1時間かかった経験もあります。永久に返事をしないのではと思った矢先に彼女がようやく口にしたのは「お話できません」でした。
(e) 寛大になり、相手に挽回するチャンスを与えることが必要 (f) そうすれば、プラスの結果と名誉挽回につながる可能性がある (g) 時間が経ちさらに明るい結果が生まれれば、ついには再び信頼が築かれる。
無駄な取組ではありません。積極的になり5つのステップを取ることで信頼を高め回復することができます。
1. エゴを忘れて、自分自身の弱さをさらけ出します。権威のある人物としてではなく、人間らしく振舞うことです。
2. 自分のものの見方を素直に見直し、信頼を失ううえで自分が果たした役割の責任を取ります。自分の思い込みを吟味し自分に正直になって、自分が果たした役割を振り返ります。
3. 内密に相手と会って、自分の見解や懸念を伝えます。相手の意見を尋ねて、オープンな気持ちで親身になって耳を傾け相手の立場に身を置きます。自分は黙って、主に相手に話をさせます。
4. 失った信頼を取り戻すには、相手はあなたに、あなたは相手に何を求めているか突き止めます。相手の話に耳を傾けきちんと理解しているか確認します。定期的に会って進度を評価します。
5. 自分の側の約束をきちんと守ります。百聞は一見に如かずです。
表情。あなたの顔の表情が誤解を招くことがあります。部下は全員、上司の表情で毎日のムードを推し量る優秀な「上司ウォッチャー」です。日本の上司は真剣なときも集中しているときも怒った顔も同じに見えることが多く、この点で不利です。ご自分の表情のチェックを怠りなく。
次は行動です。あなたの立ち居振る舞いや性格はすべてプラスかマイナスに分類されます。この人に対する態度はどうでしょう? 何も言わなくても、ボディランゲージで一目瞭然かもしれません。
発言内容はどうでしょう? 選んだ言葉、取り上げる事実、ストーリー、知識、相手をエンゲージするうえですべてが大事な役割を果たします。
最後に最も重要なのは話し方です。声のトーン、調子、スピード、強弱すべてが相手にメッセージを送ります。話し方によってメッセージの内容を打ち消すのでなく、内容に合わせることが必要です。
これに加えて、デール・カーネギーの著書「人を動かす」をお奨めします。人とうまく接する方法についての不朽の名著です。初めて読む方はもちろん、以前読んだことのある方は読み直してみてください。あなたの人生が変わるかもしれませんよ、私の人生はこの本で変わりました。
- 1