多くのシニア社員にとってキャリア再構築は避けて通れません。キャリアを再構築する上で重要なのは、シンプルに「できることを増やすこと」と「それを活かす場所を増やすこと」。人生100年時代。まだまだ働く意欲のある、世の中に貢献したいというシニア社員はたくさんいます。そんな人たちが新しい知識を習得し、市場価値を高める活動ができるようになり、それを活用する機会を社内外で得ながら活き活きと働ける環境があれば、会社はもっともっと価値ある存在になると信じています。

最終回は、リスキリング支援の観点から、シニア社員が自身の経験とスキルを活かせる“キャリア再構築”について考えます。
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第3回:もっと活き活きワクワク働き続ける~シニア社員と“共創”して生み出したい「未来の組織」とは

シニア社員への支援が会社の業績にも活きてくる「リスキリング」

「リスキリング」とは、これまでの経験や業務スキルとは異なる「新たな部門や分野」の知見を習得して自らを成長させることを意味しますが、その出口には大きく二種類あります。

【1】「習得した新しい知見」を活かして「新しい部門・分野」で活躍できるようにする。
【2】「新しい知見」と「これまでの経験やスキル」を掛け合わせ、従来業務のパフォーマンスを向上させる。


今回は【2】にフォーカスします。専門知識が豊富なシニア社員にとっては【2】の「スキルの掛け算」が有効に機能するケースがあるからです。

「ITスキル」はリスキリングの王様

第3回:もっと活き活きワクワク働き続ける~シニア社員と“共創”して生み出したい「未来の組織」とは
「スキルを掛け合わせること」を考える上で、特にお薦めしたいのは「ITスキル(デジタル化スキル)」とのかけ算です。多くの日本企業が対応を迫られているDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支えるベースにもなります。


まず、DX推進には2つのゴールがあります。
(1)お客様に提供するサービスや自社の事業自体を、“デジタルを軸に”見直す・革新する。
(2)自社内の仕事の進め方をアナログからデジタルに変革し、生産性を(飛躍的に)向上させる。


前者は難易度が高いのですが、後者は多くの人に「チャレンジできること」があります。

(2)のような業務改善を進める上で重要なポイントは、「現場の業務に精通した人」を中心に取り組むことが、成功への近道になるということです。現場業務に詳しい人間が「ITによる業務改善」を行うことで、「情報の可視化」や「ムダやムラの洗い出し」が適切に進み、省力化に繋がる業務フローの再構築の精度も高いものになります。さらに、ここで得られる「プロジェクトの進め方のフレームワーク」が、シニア社員にとって非常に貴重なノウハウになります。こうした「市場価値の高い業務スキル」を得ることが、今後の転職や副業といった活躍の場が拡がるきっかけにもなるでしょう。

また、「ITスキルを習得することはなかなか難しい」という人であっても、DX推進プロジェクトに積極的に取り組む事が重要です。「現場業務に精通した人」が「ITスキルの高い人」とチームを組んだプロジェクトで成果を出すという経験自体が、「DX推進ができるようになる」という「リスキリング」なのです。

ITスキルを習得することが、「錆びついた現状のスキル」を「市場価値の高いスキル」にリスキルする魔法になる可能性があります。どこから「リスキリング」に着手すべきか悩んでおられる方は、ぜひチャレンジすることをお薦めします。

シニア社員の「柔軟な働き方の実現」を人事制度からサポートする

「副業」をはじめる際の最初にクリアすべきポイントは、副業する時間や機会をどのように確保するか、という点なのですが、この際に、企業が行える最も有効な支援策は、「柔軟な働き方を許容すること」です。

例えば、「短時間勤務(&フレックスタイム)」や「リモートワーク」を活用できるなど、シニア社員自身がワークスタイルを形作っていけるようになることが重要です。勤務時間を減らして、シニア社員が保有するスキルを活用する時間の密度を上げられるようになれば、モチベーションにも良い効果をもたらすでしょう。

会社によっては、業務の性質上、柔軟な働き方の許容が難しい場合もあるかもしれません。
その際に目を向けたいのが、現在の業務プロセスが非効率であるがために「柔軟な働き方」が実現できないのかもしれない、ということです。そして、実際にこういったケースは比較的多いようです。

その場合は、まず現在の業務プロセス改善から着手してみることをおすすめします。「柔軟な働き方」が実現する土壌を作り、「副業」という選択肢に手を伸ばせるようになる環境を整備することが第一歩です。しかしながら、もちろん中には、「副業」は諦めざるを得ないケースもあるとは思います。

私自身の経験から「副業を進めて行く上での悩み」を振り返る

私自身が副業で個人事業をスタートした際に、最も困ったこと(悩んだこと)は「顧客開拓(の難しさ)」と「一人で事業をする不安(孤独感)」の2点です。

「副業するってそういうことでしょ?」と言われると返す言葉がありませんが、ここをクリアするまたはサポートする仕組みができると、副業で成功する社員を増やすことが可能です。副業が上手く行けば、本業にも好影響があります。精神的な安定やモチベーションアップが寄与することはもちろんのこと、副業で得た新しい知見を活かすことも期待できるからです。

このよくある「副業の悩み」を軽減し、解消する仕組みがあると、“副業の活動自体を活性化”することができますし、副業が成功する確率も上がります。そうなるための有効な手段は、「副業(を応援する)コミュニティ」を準備してあげることです。

副業(を応援する)コミュニティが力になれること

副業自体、以前は隠れてやる(裏技的な)イメージがありましたが、既に社会環境が変化し始めているように、これからは人事制度の一環として考える時代になっていくと思います。そして、社内の副業に関する情報はもっともっとオープンになっていくでしょう。

実は私の場合、副業先としての最初の顧客は“他部門の同僚が紹介してくれた”お客様でした。
社内システムの掲示板で副業を始めたことをカミングアウトしたところ、その掲示を見た同僚が知り合いの会社に声をかけてくれて契約に至ったのです。
また、サイボウズ社内には既に副業をしている社員が何人もいまして、その副業先輩社員の数人が「副業のお悩みあるある」を私にレクチャーするイベント(社内勉強会)を企画してくれました。とても勇気づけられました。
第3回:もっと活き活きワクワク働き続ける~シニア社員と“共創”して生み出したい「未来の組織」とは
「副業(を応援する)コミュニティ」があれば副業が成功する訳ではありませんが、“ペインポイントが減れば成功確率は上がる”ように、副業の成功につながることが期待できます。そして、こういったコミュニティは社内だけではなく、越境して会社間でもつながっていくと、更に面白い化学反応が生まれる気がしています。会社間コミュニティは難易度の高い試みだとは思いますが、この活動が副業支援を含めたシニア社員が活き活きと働き続ける環境づくりにきっとつながると信じ、こうしたコミュニティ活動を支援することについても、私自身はこれから挑戦してみたいと考えています。
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