欧州における企業・政府・教育機関が連携した「高度人材育成」の仕組みとは
国際教養大学 客員教授/中央職業能力開発協会 参与 山内 麻理氏
ドイツの職業訓練「デュアルシステム」とは
このセッションでは、「欧州における企業の枠を超えた高度人材育成の仕組み」というテーマで、労・使、政府、教育機関等、「ソーシャルパートナー」の人材育成における役割について議論したいと思います。講演の流れですが、まず「欧州の職業訓練制度」として、ドイツの「デュアルシステム」という若者向け職業訓練をご紹介し、同国のソーシャルパートナーがいかに連携して人材育成に貢献しているかをお話したいと思います。次に、「その他の欧州主要国の人材育成の特徴」について、企業の役割と政府の役割に注目しながら議論したいと思います。最後に「日本への示唆」として、日本の現状が海外の研究者からどのように評価されているかということに触れながら、結論をまとめていきたいと思います。欧州における職業訓練制度で世界的に有名なのは、ドイツの「デュアルシステム」です。主に高校在校生や卒業生が参加する職業訓練で、企業内OJTと職業学校での座学、2つを組み合わせて実施されます。
デュアルシステムを支える「ソーシャルパートナー(ステークホルダー)の連携・役割明確化」が、この仕組みの大きな特徴です。企業OJTに参加する訓練生は、訓練先企業の近くにある職業学校に通い、訓練後の職業資格付与は各地の商工会議所の担当。全体のコーディネーションは、日本でいえば経産省と厚労省の両方に関連する組織である「BIBB(連邦職業教育訓練機構)」が担います。
- 1