日本企業でも管理職や役員に女性が登用される比率は年々上がっているが、その速度は海外諸国に比べて遅い。そこで指摘される「能力や経験の不足」、「子育て期のキャリアの中断・離職」、「そもそも女性が管理職に就きたがらない」といった理由は、“男性の長時間労働”や“女性への家事・子育て・介護時間の偏り”、および「男性だから」、「女性だから」などの“固定観念”に起因していることは間違いない。女性活躍推進のため、企業は何をすべきなのか。
日本企業の「女性活躍推進」を阻む2つのネックと解決策を考える
池永 肇恵 氏
講師:

元内閣府 元内閣府男女共同参画局長 池永 肇恵 氏

東京大学教養学部卒業。外資系銀行勤務を経て1987年経済企画庁入庁。同調査局、国民生活局、物価局等、内閣府男女共同参画局等を歴任。その間、厚生労働省、一橋大学経済研究所、法政大学大学院政策創造研究科への出向を経験。滋賀県副知事、内閣府男女共同参画局長を務めた後、2020年8月退職。現在は、非常勤で、民間企業の社外役員、公益財団法人や独立行政法人の役員、大学や大学院の講師等を務めている。

諏訪 康雄 氏
講師:

法政大学 名誉教授/認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク理事長 諏訪 康雄 氏

法政大学 名誉教授/認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク理事長
1970年に一橋大学法学部卒業後、ボローニャ大学(イタリア政府給費生)、東京大学大学院博士課程(単位取得退学)、ニュー・サウス・ウェールズ大学客員研究員(豪州)、ボローニャ大学客員教授、トレント大学客員教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、厚生労働省・労働政策審議会会長等を経て、2013年から2017年まで中央労働委員会会長。現在、法政大学名誉教授、認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク理事長。主な著書に『雇用政策とキャリア権』(弘文堂・単著)、『雇用と法』(放送大学教育振興会・単著)、『労使コミュニケーションと法』(日本労働研究機構・単著)、『労使紛争の処理』(日本労使関係研究協会・単著)、『外資系企業の人事管理』(日本労働研究機構・共著)、『キャリア・チェンジ!』(生産性出版・編著)など。

「女性活躍」の意味とネックを捉えた進め方

「女性活躍」の意義と、その推進を阻む2つのネックとは

本日は、企業における「女性活躍の意義」や、「女性活躍を進めるためにはどうすればよいか」についてお話をさせていただきます。まず、「なぜ女性活躍が必要なのか」を考え、その現状をデータで見ていきます。「女性活躍を進めたいけれど、どう進めればよいのか分からない」、「進めるのが難しい」といった声がありますが、そこには共通する2つの大きなネックがあります。「男女のワークライフ・アンバランス」と「根強い固定観念や思い込み」です。これらについても触れながら、最後に私なりの提言を申し上げたいと思います。

それではまず「女性活躍の意義と現状」についてです。“女性活躍の意義”は、どこにあるのでしょうか。女性だけではなく、ダイバーシティの推進によって多様な視点が入ると、そこにイノベーションが生まれます。そして、イノベーションは企業の成長を生み出します。イノベーションには、「プロダクトイノベーション」と「プロセスイノベーション」があります。プロダクトイノベーションにより、これまでなかった機能・素材・色・デザインなどを持つ製品や、新しいサービスが生まれます。プロセスイノベーションにより、これまで体力に自信がなかった人などが活躍しやすくなり、すべての人が成果を出せるような環境が生まれます。例えば、「これまでは男性しか運べなかった重い機材の軽量化が進むことで、結果的に女性だけでなく男性も疲れにくくなる」といったことです。また、すべての人にとって働きやすい職場になることで、家事や子育て、介護、プライベートと仕事の両立がしやすくなり、一人ひとりの能力が発揮されることで生産性が向上し、同じく企業の成長に結びつきます。
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