30期連続の増収増益、2032年までに3,000店舗・売上高3兆円達成を目標に掲げるニトリホールディングス。製造・物流・販売など幅広い業務分野や国の垣根を越えて、短期での配置転換を繰り返す「グローバル高速配転教育」に取り組んでいる。組織全体に精通しながらも、小売業としての鋭利な現場感覚を持ち、改革を推し進めることができる「変化対応力」に溢れた世界人財を育成する独自の教育手法の全貌を語る。

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五十嵐 明生 氏
株式会社ニトリホールディングス
執行役員 組織開発室室長

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ニトリのグローバル人財育成

ニトリは急成長企業ではない

ニトリの人材育成の背景には、3つのキーワードがあります。

・ロマンとビジョン
・製造物流小売業
・スペシャリストの育成

ロマンとは企業理念で、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」、これがニトリの唯一の目的です。企業理念は、ニトリのロマンとして、全社員で共有しています。ニトリの原点は、創業者の似鳥がアメリカの暮らしを見たときから始まりました。昭和47年当時の日本の家具は、メーカー主導の生産であったため、値段が高く、色、柄を自分の好みに合わせるのがとても困難でした。一方アメリカの家具は、手頃な値段で、自分好みを自由にコーディネートして選べました。創業者の似鳥はそんなアメリカを見て、「日本にも豊かな暮らしを提供したい」という想いを抱き、ニトリを創業しました。

ロマンを達成するためには、長期ビジョン、計画が必要です。似鳥が最初に掲げた数値目標は、2003年までに100店舗1,000億円の売上でした。(創業1967年)当時のニトリは2店舗で1.6億円の売上でしたので、その壮大なビジョンは周囲を驚かせました。世間的にはニトリは急成長の企業のイメージがあるかもしれませんが、創業時のロマンを大切にし、ビジョンに基づいた計画を実行して、確実にクリアしていっただけなのです。

現在は509店舗を展開し、2032年までに3,000店舗を目標としています。これも壮大な数字だと思われるかもしれませんが、この目標を達成するために、社内でどうやって仕組み化して、無理のないように達成できるかというのを常に考えています。

ニトリのビジネスモデル『製造物流小売業』

ニトリのグローバル人財育成
目標の100店舗を達成できた原動力は、製造物流小売業というビジネスモデルです。ニトリは家具屋で、元々の機能は小売業です。当時は問屋から仕入れていましたが、どうしても値段が高くなり、コーディネートもできず、ニトリのロマンが達成できないと考えていました。1985年のプラザ合意で円高になったので、輸入を行うようになり、貿易機能を自社で持つようになりました。1994年にはインドネシアの工場を買収して、自社製品を海外で作れるようになり、製造、貿易まで手がけるようになりました。こうして次第に、販売実績データをマーケティングに活かして次の商品を作る、という流れができ、お客様に安くて高品質でコーディネートできる商品を提供できるようになってきたのです。

結果として、商社、貿易、製造、品質検査、物流、マーケティングなど、職種の多い会社となり、様々な業種の方がニトリに入るようになりました。海外でも販売を行うようになり、さらに多様な人材が集うようになりました。そんな中で、社員が働きやすい環境をつくろうとしています。

多数精鋭を実現する教育

ニトリのグローバル人財育成
ニトリのロマンとビジョンを実現するためには、独自のビジネスモデルを支えながら企業成長に貢献する多くのスペシャリストを育てなければいけません。ですから、少数精鋭ではなく、多数精鋭を目指しています。それを実現するため、ニトリが採用時に求める人物像のポイントは、チャレンジ思考、チェンジ思考、上昇志向などが挙げられます。そして、コミュニケーションが取れ、自分から発信でき、相手の話を受け入れられる人です。

新入社員には、「80歳からの逆算したキャリアプラン」というものを行ってもらっています。ゴールから逆算して今の施策を考えられるようになるためです。20年後の自分、10年後の自分、5年後…1年後という目標の立て方を新入社員に教育しています。

なぜ役員まで店舗で働くのか?

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