「問題解決力」や「コミュニケーション力」を身につけられる対話型鑑賞

“対話型鑑賞”で養える、ビジネスに欠かせない「問題解決力」や「コミュニケーション力」。
白木氏は本日のワークショップを振り返り、「対話型鑑賞」とビジネスの関係性について言及した。アート作品の鑑賞後の対話が、果たしてビジネスの現場でどのように活きるのか。氏は先述した4つのアクションを意識することで、身につけられるビジネススキルがあるという。

では、一つ目の「観る」を実践することで、どのような効果が生まれるのだろうか。自分の感覚でアート作品を観察することにより、「観察力」や「問題発見力」を養えるそうだ。人は見たいものしか見ない特性があるため、何かを見る、見ないという選択をしていることを前提として考える必要があるという。そうすることで、今まで見えてこなかった業務上の問題が発見できる。

自分の考えを根拠立てて持つ、二つ目の「考える」では、「思考力」や「問題解決力」が身につけられるそうだ。「多様な視点で物事を見る癖をつけることで、思考力に深さも出てくる」と白木氏は話す。ビジネスの現場においても、物事の根拠や理由を論理的に考えていくことで、課題解決の糸口が見つけやすいということだ。

次に三つ目の「話す」では、対話の際に自分の考えを根拠とセットで述べることにより、「言葉にする力」を鍛えることができるという。例えば日常生活においても、自分の体験をきちんと言語化して家族や友人に伝えることで、コミュニケーション力を伸ばす訓練ができるだろう。

最後の四つ目の「聞く」の実践では、「多様性を受容する力」が身につくという。実はこの「聞く」という行為が最も難しいとされる。人間は変化を嫌う生き物だからだ。そのため、意識的に相手の話を否定せず、他者の価値観を受け入れることが大事だと白木氏は話す。ビジネススキルを磨くとなると書籍やセミナーを思い浮かべがちだが、楽しく気軽にロジカルな能力を鍛えられるのが対話型鑑賞の最大の魅力と言える。

人材の多様化、テレワークの定着が進んでいく社会に対話型鑑賞がフィットする

最後に白木氏は、「今後、多様な人材と働く機会が増える社会になっていくからこそ、対話型鑑賞が果たす役割は大きい」と対話型鑑賞の重要性を説いた。ビジネスの現場では自分と価値観の異なる同僚が増えるため、忍耐力が時に求められる。そのような際、「例えば“多様性を受容する力”が身についていれば、理解できないというネガティブな感情を、面白いというポジティブな感情に変換できる」と話す。

今後、テレワークが定着していく社会になると、オフィスで顔を合わせる機会は減っていく。白木氏は、一緒に働く上司や同僚の考えを理解するうえで、「職場で対話型鑑賞を行うことにより、仲間がどのような価値観を持っているか、把握も進みやすい」という。最後に、対話型鑑賞を実践するうえでのコツに触れ、「観る、考える、話す、聞くという4つのアクションを意識しながら、ぜひ対話型鑑賞を日常化してほしい」と呼びかけイベントを締めくくった。

対話型鑑賞で身につけられる「コミュニケーション力」や「問題解決力」、「多様性」。これらのスキルは、コンセプチュアルスキルやヒューマンスキルに分類され、ビジネスにおいても重要視されている。テレワークが定着していくであろうWithコロナ/Afterコロナ時代では、顔が見えないコミュニケーションが中心になるため言葉にする力が必要になってくる。また、VUCAと呼ばれる不確実性のある時代に突入した今、問題を解決するスキルがこれまで以上に求められている。そんな状況下でパフォーマンスを発揮していくために、楽しみながらビジネススキルを鍛えられる対話型鑑賞を、職場の部署内やチーム内でぜひ実践してみてはいかがだろうか。

講師

  • 白木

    白木 知裕氏

    1985年岐阜県生まれ。2010年(株)ベネッセコーポレーション入社、高校生向け教材やテスト等の商品企画・開発を担当。 2015年4月より(株)Benesse i-Careerへジョイン。 大学生向け商品やサービスの商品企画・開発・営業などに携わる。 最近は、大学生のよりよいキャリア実現をサポートするためのオンライン番組を毎晩配信中。対話型鑑賞との出会いは、山口周さんの書籍「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)」。ベネッセアートサイト直島にて、ファシリテートの研鑽を積む。趣味は、野球・ピアノ演奏・カブトムシ・お手紙コンサル。取り組みは、読売新聞にも掲載されている。

  • 渡邊

    渡邊 めぐみ氏

    1989年福岡生まれ。2015年(株)ベネッセコーポレーション入社、高校生のキャリア・小論文・探究教材の開発・編集職を経てフリーランス。詩のソムリエ。ビジネスマンなど「非アーティスト」向けのアートや文学をたのしむワークショップ・講座を全国で手がける。趣味は料理。特技は裏拳。港区との協働事業でアートを使った場づくりをしていた際に、対話型観賞に出会い、おもしろさにハマる。2018年夏に芸術資源開発支援機構でファシリテーションを身に着け、小学生向けや大人向け、ビジネスパーソン向けに対話型観賞を実施している。

  • 1
  • 2

この記事にリアクションをお願いします!