ライフステージのターゲットを絞る人事戦略
健康寿命が延びる現代では、70代の方にも積極的に働いていただく必要があるでしょう。しかし、若い世代もいる企業でシニア層を雇用し続けることは、若手層のモチベーションを下げる可能性もあります。例えば役職定年を廃止し、役職にシニア層がずっと居続けると、若手は「自分には上にあがれるチャンスはない」と思うからです。また、急速にIT化やデジタル化が進んだ現代では、シニア層の過去の経験が通用しない状況が起きています。なんでも自分で試行錯誤した昭和世代には、知識を「シェア」する平成世代の考え方を理解できない方もいるそうです。人材不足をカバーするには多様な人材が必要ですが、その分時代の変化やジェネレーションギャップにもかなり気を使わなければなりません。
そこで考えられる人事戦略が、特定のライフステージにいる人材を雇用ターゲットにすることです。
例えば、人事の仕事をしていると、リクルートの人材戦略はとても秀逸だと感じます。若い世代を積極的に採用し、35歳までに「卒業」という形式で世の中に出ていくことが望ましいとされています。しかもリクルート出身者は、起業家など各所で活躍しています。そのため、「元リク」はブランド力があります。このように、リクルートは20代~35歳までのライフステージに絞って人材を活用していると思われます。
つまり近年の転職市場の活性化を背景に、自社の事業戦略も考えながら、どのライフステージをターゲットするのかを考える必要があるでしょう。
最近は新卒採用を行っても、数年で辞めることが当たり前になりつつあります。それであれば、最初から新卒は採用せず、基礎力のある社会人経験3~5年以上の若手層に絞る方が企業としては効率的です。
またシニア層には、まだ転職の可能性がある50歳手前をめどに早期退職していただくほうが、企業も働く人もお互いに幸せな可能性があります。つまり、あえて「セカンドキャリア」企業として人材戦略をたて、30歳前後~50代が働く企業にすることも有効な手段です。
課題は50代以降の活用です。これからは、50代~70代のライフステージに絞って採用を行う企業も増えてくる可能性があります。50代以降の強みは豊富な人生経験です。この資産を活用したビジネスであれば、シニア層を積極的に活用できます。こうした企業は「サードキャリア」あるいは「ラストキャリア」として人材戦略を打ち出していくこともあり得ます。
このように、今後はライフステージごとに働く企業が分かれてくるでしょう。ライフステージを絞ることで、コスト削減だけでなくリクルートのような「卒業」戦略も考えやすくなります。働く人にとっても企業の選択肢がわかりやすくなり、企業と人材がお互いにウィンウィンになれる可能性があります。
あなたの企業は「ファーストキャリア」企業でしょうか、それとも「セカンドキャリア」企業でしょうか。それともシニア層をターゲットにした「ラストキャリア」企業でしょうか?
参考文献:経産省 平成31年2月発表「事業承継・創業政策について」(PDF)
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