30代女性のリアルな仕事のこだわり、キャリア作りのヒントとは
続いて、働く女性の代表として30代前半の2人が登壇し、トークセッションが行われた。登壇者は、株式会社アタックセールスアソシエイツで営業コンサルタントを務めながら働く女性を支援する活動を展開する山本なつみ氏と、株式会社パーソルホールディングスで新卒採用リーダーを務める時田幸枝氏。ファシリテーターはBe yourself代表の岩下宏一氏が担当した。仕事においてこだわっていることを問われると、山本氏は「働きやすい環境を自ら作ること」を挙げた。自身が複数回の転職を経験する中で、挨拶をする、職場の懇親会に参加するなど、同僚と積極的にコミュニケーションをとって人間関係を構築することを心がけてきたという。「周りの人に期待するのではなく、自分から変えていき、自分にとってやりやすい職場に変えていくべき」とアドバイスした。
また、女性がライフステージに応じて働き方を変えていくためには、20代から積極的にキャリアを積み、選択肢を増やしておくことが大切だと強調。キャリアに悩んだ時は、業界・業種や年代の違う人と交流して、新しい価値観に触れてほしいと、会場の参加者にエールを贈った。
一方、時田氏のこだわりは、現在携わっている採用分野だ。時田氏にとって、自分と関わる人に幸せになってもらうことが生きがいであり、採用分野は求職者の人生の大きな転機となることにやりがいを感じているという。「入社後に活躍してもらえるか見極める仕事は責任重大だが、入社後に『時田さんに誘われて入ったからよかった』と言われると大きな喜びを感じる」と語った。
さらに、キャリア形成に関しては「個人の在り方」と「働くこと」のベクトルを揃えることを提案。自分にとって心地よい姿やわくわくする瞬間とは何かを問い直すことが、幸せなキャリアを考えるヒントになるとアドバイスした。
本音トークから垣間見える仕事観 ワークショップで活発な意見交換
イベントの締めくくりは、求職者と企業の採用担当者が働き方・キャリア・生き方を本音で語り合うワークショップだ。約20名の参加者が3つのグループに分かれ、あらかじめ用意されたお題をランダムに選び、自由なトークを展開した。くつろげる空間を演出するため、テーブルにはお茶とお菓子が用意され、セッション終了ごとにグループのメンバーをシャッフルしながら約1時間で3回のセッションが実施された。お題の内容は多岐に渡る。「自分らしさって何ですか?」「あなたにとって幸せな時間とは?」「何の部活に入っていましたか?」など、参加者の内面や過去の経験を引き出しやすい内容となっていた。
あるテーブルのお題は「絶対に失敗しないとしたら何をしたいですか?」というものだった。参加者からは「起業したい」「海外で事業を展開するために人脈を作りたい」「田舎で米作りなど、現在の仕事と全く違うことをやってみたい」といった意見が出た。
打ち解けた雰囲気の中で、「株を始める」「宝くじを買う」といった話題も広がった。すると同じテーブルのメンバーから、「もし確実に大金が手に入るとしても、楽して稼ぐだけではあまり嬉しくない。人から感謝されることも、自分にとっては大切な報酬だ」という意見も引き出された。参加者の仕事観が垣間見えた瞬間だ。
また、企業側向けに女性活躍の状況を問うお題も用意されており、企業の魅力発信の機会となっていた。ある企業は、現在は男性社員の割合が高いものの女性が活躍できる仕事内容であること、女性社員の育児休暇制度が手厚いことなどを紹介し、参加者からの個別の質問にも回答していた。
イベントを主催したゼスト株式会社の樫村代表は、今回のワークショップの形式は特に女性がキャリアを考えるうえで効果的だという。「求職者と企業がテーブルを囲んで自己解放する形式は、男性よりも女性のほうが得意。共感、気づき、刺激などを得て、次の行動に結びつきやすい」と考えている。いずれのテーブルも終了時間まで話題が尽きることなく、活発な意見交換が繰り広げられた。
採用の質を重視する企業にとって 価値ある手法
今回のようなキャリアイベントを通じたダイレクト・ソーシングは、従来の採用手法と比較すると遠回りに思える。しかし、規模の大きなイベントでは実現しづらい本音のコミュニケーションは、求職者との確かな関係を構築でき、結果として魅力的な人材獲得やミスマッチ防止に有用である。従来の採用手法と比べて手間がかかる面はあるが、採用の質を重視したい企業においては検討する価値がありそうだ。- 1
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