内定出しは2014卒採用よりもさらに前倒しに
4月下旬時点での採用計画数に対する内定者数の割合(内定充足率)を、過去2年間の同時期と比較してみた。まず見ていただきたいのは「0%」の割合である。2013年卒採用と比較して、2014年卒採用では15ポイントも減少したが、2015年卒採用ではさらに3ポイント減少し、4月末の段階で内定者がゼロの企業の割合は35%にとどまった。「1~10%」の割合も前年よりも減少しており、それ以上の内定充足率の企業の割合が増えていることになる。
[図表1]4月末時点での企業の内定充足率
3月までに内定出しピークの企業が増加
今度は内定出しのピーク時期を見てみよう。
まずは文系であるが、「4月後半」までのほぼすべての時期で過去2年間よりも高いポイントとなっている。特に「3月前半」は過去2年との開きが大きい。「3月後半」までの累計ポイントで見てみると、2014年卒採用では4%に過ぎなかったが、2015年卒採用では11%と7ポイントのアップである。さらに、「4月後半」までの累計でみると、2014年卒採用が36%なのに対して、2015年卒採用では44%となっている。ちなみに、2013年卒採用では「4月後半」までの累計は31%であった。
[図表2]文系学生への内定出しのピーク時期
「4月前半」が突出した理系採用
続いて理系の内定出しピークを見てみよう。3月までのピークについても過去2年間より高い数値ではあるが、注目すべきは「4月前半」の集中具合である。2013年卒採用 10%→2014年卒採用 14%と前回も伸びてはいたが、今年は23%と一気に9ポイントも高くなっている。ほぼ4社に1社は「4月前半」が内定出しのピークであったことになる。「4月前半」までの累計は、2014年卒採用で23%であったものが、2015年卒採用では33%にもなっている。
[図表3]理系学生への内定出しのピーク時期
内定出しは進むも終了時期はそれほど変わらない
企業の内定出しのペースは昨年を上回るものの、採用活動の終了時期の見込みを訊いてみると、それほど早くはならないようである。それどころかかえって遅くなる企業が増えている。「ほぼ選考は終了した」は14%で変わらないものの、「5月終了」「6月終了」「7月終了」はいずれも昨年よりも減少し、「8月終了」「9月以降終了」が増えている。
企業側の採用意欲の高まりは、企業からしてみれば採用競争率の激化を意味し、思うようにエントリー者が集まらない企業や、後述するように内定辞退者が増えている企業を生んでいるわけである。一部の人気企業は昨年よりも速いペースで採用活動を進める一方、多くの企業は採用活動の苦戦を覚悟しているのである。
[図表4]採用活動の終了見込み時期
一部の学生に内定が集中し、内定辞退者が増加
これまでの内定辞退者の数を昨年同時期と比較してもらったデータがこちらである。2013年卒採用から2014年卒採用にかけては、「昨年よりも少ない」とする企業が22%から33%へと大きく増えたのに対して、今年は一転している。「昨年よりも少ない」とする企業が23%と10ポイントも減少したのに対して、逆に「昨年よりも多い」とする企業が2014年卒採用の14%から29%へと倍増しているのである。
昨年よりも早いペースでの内定出しが行われたため、昨年であればもう少し後に内定辞退していた層が、今年はすでに辞退しているということも考えられるが、一部の学生に内定が集中したことが予想される。後述する学生のデータも参照していただきたい。
[図表5]内定辞退者の増減
未内定者が昨年よりも減少
ここからは学生の状況を見てみたい。
学生調査は、楽天「みんなの就職活動日記」の協力の下に実施している。回答者は、就職意識の高い学生割合が多いため、一般的な調査よりも内定取得率は高めに出ていることをお断りしておく。ただし、経年比較や大学クラス別比較では影響は少ないはずである。
まずは文系学生の4月末時点での内定保有社数を訊いたデータである。2014年卒文系と2015年卒文系のグラフを比較してみると、減少しているのは「0社」と「1社」で、増えているのは「2社」「3社」「4~6社」「7~9社」。つまり、未内定学生と1社だけの内定保有者が減少し、複数の会社から内定を取得している学生の割合が増えているのである。未内定者は47%から43%へ、1社だけの内定保有者は30%から28%へそれぞれ減少し、2社以上の内定保有者は、2014年卒では23%だったものが2015年卒では30%となっている。内定保有者の半数以上は複数内定を持っていることになる。
※内定保有者に占める複数内定保有者率 2014年卒43.4%→2015年卒52.6%
[図表6]4月末時点での内定社数(文系学生)
大学クラスにより内定状況は大きく異なる
内定者保有社数を大学層別にみると、内定取得者(「0社」以外)の割合が大学層により明らかに異なるのがわかる。内定取得者の割合(以降、内定率)を見ると、「旧帝大クラス」75%、「早慶クラス」79%と極めて高いのに対して、「中堅私大クラス」51%、「その他私大」39%とかなりの開きがある。
また、内定社数にも注目したい。「早慶クラス」では実に49%が複数社の内定を保有している。「旧帝大クラス」「上位国公立大クラス」「上位私大クラス」も37~39%と極めて高い割合になっている。
[図表7]4月末時点での大学層別内定社数(文系学生)
複数内定保有者が昨年よりも増える
続いて理系について見てみよう。
「0社」の割合は前年とさほど変わらないものの、「1社」の学生割合は41%から33%に減少し、「2社」「3社」「4~6社」「7~9社」がいずれも増えている。文系と同様、複数社から内定を取得している学生が増えているのである(27%→35%)。
理系の全体割合では、未内定32%、1社だけ内定33%、2社以上内定35%となっており、文系と同様、内定者の過半数は複数内定を持っている状況となっている。
※内定保有者に占める複数内定保有者率 2014年卒39.7%→2015年卒51.5%
[図表8]4月末時点での内定社数(理系学生)
早慶クラスの6割は複数社の内定を取得
内定者保有社数を大学層別にみると、こちらも内定取得者の割合が大学層により明らかに異なるのがわかる。「早慶クラス」では88%が内定を取得しており、複数内定の保有者も6割近い。一方、「その他私大」では内定保有者は45%と5割を切っているとともに、複数内定の割合も26%にとどまる。また、推薦制度の利用者の多い「旧帝大クラス」や「上位国立大クラス」では、「1社」のみ内定保有者の割合が4割前後と高くなっている。
[図表9]4月末時点での大学層別内定社数(理系学生)
【調査概要】
■企業調査
調査主体:HR総研(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2014年4月21日~4月30日
有効回答:396社(1001名以上 71社, 301~1000名 131社, 300名以下 194社)
■学生調査
調査主体:楽天株式会社(みんなの就職活動日記)
調査企画:HR総研(HRプロ株式会社)
調査対象:就職活動中の大学生、大学院生
調査方法:webアンケート
調査期間:2014年4月21日~5月1日
有効回答数:1,482名
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