HR総合調査研究所が、2013年9月17日~30日にかけて実施した「2015年新卒採用&2016年新卒採用に関するアンケート調査」の結果をもとに、各企業の取り組みや考えていることについて報告する。有効回答は210社。

求人票が2015年新卒採用施策の上位に

「2015年新卒採用&2016年新卒採用に関するアンケート調査」結果報告

2015年度新卒採用で実施する予定の施策を複数回答で答えてもらった。回答数の上位は、「自社セミナー」「就職ナビ」「学内企業セミナー」「自社採用ホームページ」の4つ。いずれも約7割でほぼ同程度の回答数となった。この4つは採用広報の基本施策と言えるが、こられの施策の次に多かったのが「求人票」で64%にも達する。ここ数年、求人票活用企業が増えてきていたが、2015年卒採用に向けてはさらに拍車がかかったようである。

図表1:2015年新卒採用で実施する施策

特に注力する施策のトップは「学内企業セミナー」

「2015年新卒採用&2016年新卒採用に関するアンケート調査」結果報告

上記設問では実施する施策をすべて選択してもらったが、その中で特に注力する施策について最大3つまで選択してもらったのがこの設問である。最も多かった回答は「学内企業セミナー」で53%に上る。前問で「学内企業セミナー」を選択した企業は68%だったことを考えると、「学内企業セミナー」実施企業の78%は重要な施策としてとらえていることになる。
 「自社セミナー」は45%に止まるほか、「就職ナビ」を挙げた人は26%に過ぎない。いかに各企業が「学内企業セミナー」を重視しているかがわかる。

図表2:2015年新卒採用で特に注力する施策(最大3つ)

2015年度新卒採用に向けた重要な課題

2015年度新卒採用に向けた各企業の重要な課題を回答してもらったところ、「大学との関係強化」「2016年卒に向けた施策」が数多く寄せられた。
・学校関係者との関係強化。(その他サービス)
・母集団を確保するため、各校キャリアセンターとの関係強化が重要。(通信)
・ターゲット大学へのパイプ作り。(商社)
・新規採用校の開拓。キャリアセンター、担当教授との、実績に結び付く関係強化。(その他サービス)
・いかにしてターゲット学生に会い、弊社の魅力、特徴を訴求していくか。(電機)
・企業説明会の早期開催と選考期間の短縮。(情報処理・ソフトウェア)
・2016年を見据えた採用スケジュールの検討。(医薬品)
・2016年に向けたノウハウ構築。(繊維・アパレル・服飾)
・早い段階で、母集団を集められるか。(ゲーム・アミューズメント)
 そのほか、「内定辞退の削減」「質の採用」を挙げる声も多い。

優秀な地方学生にアプローチ強化

2015年新卒採用で新しく取り組みたい施策を聞いてみた。具体的な回答をいくつ紹介しよう。参考にしてほしい。
・大学の・OG懇談会への社員派遣。(情報処理・ソフトウェア)
・筆記試験に代わる斬新な採用手法(学生の興味をひく、面白いと思ってもらえそうな手法)。(情報処理・ソフトウェア)
・1Dayインターンシップ。(商社)
・理系学生をターゲットとして、社内OBによるリクルーター制度。(精密機器)
・小規模で特徴のある人材の集まる就職イベントへ参画。(繊維・アパレル・服飾)
・自社説明会の見直し(志望度の高い学生と低い学生を同じ土俵でみていたため、2015年度は分けた説明会を行う予定)。(百貨店・ストア・専門店)
・上位校学生2000人に対する企業プレゼンイベントに参画。(繊維・アパレル・服飾)
・Webセミナー実施。(繊維・アパレル・服飾)
・首都圏のみならず、地方からの採用。(通信)
・ストレス耐性の診断。(旅行・ホテル)
・学生を呼び込むのではなく、自ら学生のいるところに打って出て行く採用手法。(情報サービス・インターネット関連)
 今年は地方での採用拡大を挙げる声が目立つ。企業の採用意欲がますます旺盛になる中、首都圏での優秀層の採り合いは激化することが予想され、地方での優秀層の採り込みを画策し始めているようだ。

新スケジュールではより大学との関係強化がカギ

「2015年新卒採用&2016年新卒採用に関するアンケート調査」結果報告

2016年新卒採用では、採用広報開始が12月から3月へ、選考開始が4月から8月への後ろ倒しになるとともに、選考期間の短期化が行われる。新スケジュールに向けて、現時点で企業が考える施策はどうなっているのだろうか。
 解禁前の施策としてトップになったのは「キャリアセンターとの関係強化」で、回答者の半数に及ぶ。次いで「研究室との関係強化」と、大学対策が上位に並ぶ。インターンシップ関連の施策を選択する企業も併せると5割近くになる。大企業では、3分の1の企業が「リクルーター(OB/OG)の活用」を挙げる。

図表3:2016年新卒採用における解禁前の施策

インターンシップ開催時期が分散、長期化の見込み

「2015年新卒採用&2016年新卒採用に関するアンケート調査」結果報告

2016年新卒採用に向けたキーワードは「大学対策」と「インターンシップ」。これまでは8月-9月に実施するサマーインターンシップが主流で、10月以降に実施されるインターンシップは数が少なかった。2016年新卒採用を視野に入れた、来年のインターンシップはどうなるのだろうか。
 今回、インターンシップの開催予定月を複数選択で回答してもらった。最も多いのは夏期休暇中の「8月」で68%、次いで「9月」の41%。この2つの月が多いのは当然として、注目すべきは10月以降の数字である。「10月」から「3月」までの期間も、1~2割程度の企業がインターンシップを実施するという。採用広報が解禁となる3月まで、「インターンシップ」という名を借りたセミナーが増えそうだ。

図表4:来年のインターンシップ実施時期

新卒採用の無秩序化をもたらす新スケジュール

「2015年新卒採用&2016年新卒採用に関するアンケート調査」結果報告

2016年新卒採用からの新卒採用スケジュールでは8月からが選考開始となる。はたして企業はいつから選考を開始することになると予想しているのかを聞いてみた。
 結果は、見事に2つの山に分かれることとなった。1つめの山はこれまで通りの「4月」(28%)、そしてもうひとつは新スケジュールに沿った「8月」(29%)である。ふたつの山の高さはほぼ等しいが、「8月」との回答の中には、「表向き」あるいは「とりあえずは8月」としながらも、状況次第では前倒しになる企業が含まれるだろうから、実質的には「4月」派が最も多いと言える。
 7月までに選考を開始するという企業が実に3分の2に上る。

図表5:2016年新卒採用の選考開始時期

メーカー、非メーカーで分かれる選考開始時期

「2015年新卒採用&2016年新卒採用に関するアンケート調査」結果報告

大企業(1001名以上)に限って、メーカーと非メーカーの回答を比較してみたところ、全く異なる傾向が見られた。メーカーでは、「8月」とする企業が半数あるのに対して、非メーカーで「8月」との回答はわずか13%しかない。非メーカーで最も多いのは「4月」の25%、次いで「1月」の19%。採用広報の解禁が3月であることを考えると、「1月」をはじめ3月以前から選考を開始する企業は、インターンシップ参加者を選考対象とすることが予想される。インターンシップは、広報やキャリア支援の場としてではなく、採用そのものの施策として位置づけられていく傾向がより強くなりそうである。

図表6:大企業の2016年新卒採用の選考開始時期(メーカー・非メーカー別)

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年9月17日~30日
有効回答:210社

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