12月解禁となって2年目の2014年卒採用。2013卒採用との違いはどこにあるのか。今年の動向をHR総研が4月末に調査した企業向け採用動向調査、学生向け就職活動調査、大学キャリアセンター向け調査をもとに、3回に分けて紹介する。第1回は「内定時期」についてみてみる。

4月後半を内定ピークとし、6月後半は大幅減少

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

図表1と2は、企業の内定出しのピーク時期を文系、理系別に集計したデータの過去3年分を比較したものである。
 文系では、3月までは過去2年間よりも低調だったものの、「4月前半」に大きく伸び、昨年の2倍近くになっている。そのまま「5月後半」まで例年よりも高く推移し、逆に「6月以降」は昨年よりも8ポイントも少ない26%となっている。6月以降が内定のピークになる企業は4社に1社しかないということになる。

図表1:企業の内定出しのピーク(文系)

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

理系のデータを見てみると、3月までは昨年と同様の傾向を示していたものの、「4月前半」で文系と同じく大きく伸び、「4月後半」とする企業はさらに伸びて21%に達している。「4月前半」~「5月前半」とする企業は前年よりも4~6ポイントも伸び、逆に「5月後半」は5ポイント、「6月以降」は10ポイントもそれぞれ前年を下回る数値になっている。内定出しのピークが明らかに昨年よりも前倒しになっていることを表している。

図表2:企業の内定出しのピーク(理系)

4月末までに内定出し開始企業が大幅増加

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

もう一つ、4月下旬時点での採用計画数に対する内定者数の割合を、昨年同時期と比較した図表3を見てみよう。
 昨年と比較してみると、「0%」すなわち、まだ1人も内定を出していない企業の割合が大きく変化していることが分かる。昨年の調査では、過半数の53%の企業がまだ内定出しを始めていなかったのに対して、今年は38%にとどまっている。
 一方、「0%」以外の項目は、ほぼすべての項目で昨年の数値を上回っている。内定出しが昨年を大きく上回るペースで進められたことを、このデータが実証している。

図表3:採用計画数に対する内定者数の割合(2年比較)

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

同じデータを従業員規模別に見たものが図表4である。「0%」と答えた割合は、「300名以下」44%→「301~1000名」35%→「1001名以上」29%と、企業規模が大きいほど少なくなっており、大企業ほど内定出しが進んでいる。ちなみに、昨年の従業員規模別のデータを見てみると、「0%」の割合は、「300名以下」56%→「301~1000名」57%→「1001名以上」40%という結果であった。
 今年の特徴として注目すべきは、大企業の内定出しが早かっただけでなく、中堅・中小企業の内定出しも早いペースで進められてきたという点である。このことは、次に見る学生の内定保有状況に大きく影響を及ぼしている。

図表4:採用計画数に対する内定者数の割合(従業員規模別)

大学層に関係なく改善した学生の内定保有率

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

次に見る学生調査は、楽天「みんなの就職活動日記」登録会員の学生を対象としたものだ。就職意識が比較的高い学生割合が多いため、世間一般の平均値より内定率が高めに出ている点に留意いただき、大学グループ間の比較や、昨年データとの比較として参考にしてほしい。

 図表5と6は、4月下旬時点の学生の就職内定の保有率を調査し、過去2年と比較した文系と理系のデータである。
 まず文系から見てみよう。東日本大震災により選考時期を5月や6月に遅らせる企業が相次いだ2012年卒採用と比べて、昨年の2013年卒採用では大手企業の選考・内定出しは早かったものの、中堅・中小企業の選考・内定出しが遅かったことから、「旧帝大クラス」「早慶クラス」などの上位校が内定獲得率を伸ばした一方で、中堅・中小企業からの内定割合が多い上位校以外の大学グループは逆に内定保有率が低迷する結果となった。
 これに対して今年は、全体の内定保有率は53%で昨年の44%から9ポイント増と大きな伸びを記録。内訳を見ると、昨年も内定獲得率の高かった「旧帝大クラス」「早慶クラス」の伸びは微増にとどまった一方、このほかの大学グループは、16ポイントも伸びた「上位国公立大クラス」をはじめ「その他私立大学」にいたるまで軒並み数字を伸ばしている。これは、大企業だけでなく、中堅・中小企業の選考・内定出しが進んだことによるものだ。

図表5:4月末時点の内定保有率(文系、3年比較)

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

次に理系の状況を見てみる。文系と比べてもともと高かった全体の内定保有率は7ポイント増の68%に。大学グループ別で見ると、昨年8割前後と高い内定獲得率を誇っていた「旧帝大クラス」と「早慶クラス」が微減に転じた中、「上位私大クラス」が12ポイントも伸ばしたのをはじめ、その他の大学グループも昨年よりも伸びている。ただ、「その他私立大学」はわずかに伸びているものの、2年前の2012年卒採用の数値には程遠い状況である。理系の推薦制度による内定割合は年々低下しており、理系といえども中下位校にとっては厳しい就職戦線になっていると言える。

図表6:4月末時点の内定保有率(理系、3年比較)

大学グループで内定企業の規模がまるで違う現実

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

図表7と8は、内定保有学生に対して内定先企業の従業員数規模を聞いたものである。大学グループによる差異が明白だ。
 例えば、文系のデータで「5,001名以上」の超大手企業から内定をもらっている学生の割合を見てみよう。「旧帝大クラス」では、実に47%と半数近くに及ぶのに対して、「中堅私大クラス」「その他私立大学」では13%~14%にとどまり、逆に「300名以下」の中小企業の割合が36%に達する。

図表7:内定先企業の従業員規模(文系)

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

理系のデータでも、「5,001名以上」の超大手企業から内定をもらっている学生の割合は、最も大企業比率の高い「早慶クラス」では52%と過半数を超えているのに対し、「その他私立大学」では16%に過ぎない。企業規模に関係なく、選考・内定出しが早まったがために、学生の内定保有率はすべての大学グループで改善したものの、内定先企業の内容はまるで違うものになっている。大学格差が埋まることはなさそうである。

図表8:内定先企業の従業員規模(理系)

第一志望でなくても就活を終了する学生

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

内定を獲得した文系学生に就職活動の継続意向を聞いてみたのが図表9である。過去2年間と比較してみて分かるのは、「(内定獲得企業は)第1志望の企業ではなかったが内定したので終了する」学生が、2012年卒 6%→2013年卒 12%→2014年卒 15%と年々増加していることだ。逆に「第1志望の企業に内定したがまだ他も見たいので継続する」学生の割合は、2012年卒 27%→2013年卒 19%→2014年卒 16%と年々減少している。
 就職に対して淡泊になったとも考えられるが、最近の若者を評する際によく言われる「真面目さ」の表れではないだろうか。重複内定を「悪いこと」と考え、最初に内定を出してくれた企業に決めてしまうのである。企業の選考・内定出しスケジュールの前倒しに拍車がかかったのも、これらの学生の存在が少なからず影響しているのではないだろうか。

図表9:内定保有学生の就活継続意向(文系)

就職率の好転を予想する大学

「2014年新卒採用動向調査」結果報告【1】

大学キャリアセンターに2014卒学生の最終的な就職率を予想してもらったのが図表10である。「ほぼ変わらない」とする回答が57%で最も多かったものの、「かなり上がる」「ある程度上がる」と、前年と比較して好転予想をしている大学が25%という結果となった。上記で見たように、現時点での学生の内定保有率が前年よりも何ポイントか改善していたとしても、それは企業の選考・内定出しタイミングが前年よりも早まっていることに起因している要素が大きく、今後は逆に内定保有率の伸びが前年よりも鈍化してくる恐れがある。
 大学関係者には油断をしてほしくない。

図表10:2014卒学生の就職率予想

【調査概要】

■採用担当者
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年4月19日~5月1日
有効回答:436社(1001名以上 86社, 301~1000名 147社, 300名以下 203社)

■学生
調査主体:楽天「みんなの就職活動日記」
調査企画:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:就職活動中の大学生、大学院生
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年4月22日~5月1日
有効回答:2,678名(文系1,527名、理系1,151名)

■キャリアセンター
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:全国の大学キャリアセンター担当者
調査方法:郵送アンケート
調査期間:2013年3月18日~4月30日
有効回答:286大学

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