HR総合調査研究所は2012年12月14日~12月27日にかけて「2014年度新卒採用に関するアンケート調査」を実施した。その調査結果を2回に分けて紹介する。
今回は2014年卒新卒採用計画数の増減、2014年度新卒採用の最重要課題、ターゲット校の設定状況、ターゲット校への施策を紹介する。

2013年卒と比べ増加している2014年卒採用計画数

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【1】

2014年卒採用計画数は2013年卒と比べ増加している。最も多いのは「昨年並み」で56%と過半数を占めているが、21%は「増やす」と回答し、「減らす」と回答した企業は8%に過ぎない。
 規模の違いもある。「1001名以上」の「増やす」は29%と高いが、「301名~1000名」では26%と減り、「1~300名」は16%と低くなる。
 注意したいのは昨年の数字との比較だ。前年同時期に聞いた2013年卒採用計画数は、「1001名以上」で33%、「301名~1000名」で27%、「1~300名」で20%が「増やす」としていたから、いずれの企業規模でもその数字より低くなっている。

図表1:新卒採用計画数の前年比増減(規模別)

採用計画数が多い「301名~1000名」の技術系採用

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【1】

企業規模別に技術系採用計画数の増減を見ると、約半数は「昨年並み」だ。しかしどの企業規模でも「増やす」が「減らす」の2倍~5倍になっており、採用意欲の強い企業が多い。
 とくに目立つのは「301名~1000名」の企業だ。「増やす」が22%と多く、「減らす」は4%に過ぎない。「301名~1000名」の技術系採用計画数を増やすメーカーが28%あり、全体規模別の数字を押し上げている。

図表2:技術系新卒採用計画数の前年比増減(規模別)

規模が小さいほど目立つ「未定」や「採用中止」(事務系採用)

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【1】

事務系新卒採用計画数の増減を見ると、「増やす」はどの企業規模でも1割程度で変わらない。そして「減らす」はあまり変わらず、6~9%だ。しかし「昨年並み」は「1001名以上」は60%であるのに対し、「301名~1000名」45%、「1~300名」41%とかなりの差がある。
 「未定」と「採用中止」の数字は規模別で変化しており、規模が小さいほど「未定」や「採用中止」が目立つ。事務系採用計画数の増減を見ると、小規模企業ほど景気動向に左右され、採用数の引き締め傾向が見える。

図表3:事務系新卒採用計画数の前年比増減(規模別)

ターゲット戦略が一般化し、大学が採用活動の中核に

新卒採用の環境が激しく変化している。2013年卒採用から採用広報が12月1日に変わったこともひとつだし、グローバル人材に対するニーズも高まっている。ソー活もどうやら広がりを見せ始めた。採用人事にはさまざまな課題があり、新規に取り組む採用手法が求められている。
 そこで今回のアンケートでは「2014年度新卒採用の最も重要なテーマ」を訊き、363社から回答を得た。書き方は人事によって異なるが、大きな課題は「厳選採用」と「内定辞退の防止」だ。
 「厳選採用」については「知識よりもコミュニケーション能力重視」(保安・警備・清掃、1001名~5000名)という企業もあるが、逆に面接の第一印象に左右されず、成績や筆記試験を重視するという企業もある。「採用数を増やしたいが、幹部候補人材の選考基準は下げられない。よって、非幹部候補生用の選考基準と初任給を新たに設定する」(通信、1001名~5000名)と学生の質に対応してコースを分ける取り組みもある。
 質の高い学生を厳選採用するための第一歩が母集団の形成だ。そのための施策が採用基準を明確化し、大学と学生の質を特定するターゲット戦略だ。今年は「大学」「キャリアセンター」「ターゲット大学」「ターゲット学生」という言葉が多く、次のようなコメントが多い。
 「各大学キャリアセンター、教授とのパイプ作り」(輸送機器・自動車、101名~300名)、「大学、専門学校とのパイプを太くして次年度採用にも繋げられるような関係作り」(情報処理・ソフトウェア、101名~300名)、「ターゲット大学との関係強化に伴う大学主催合同企業説明会への出展強化」(建設・設備・プラント、301名~500名)。
 「グローバル」という言葉を使っているコメントは363社中9社だが、いずれも比較的企業規模が大きい企業に偏っている。「300名以下」の企業からは「グローバル」の声は聞かれない。

ついに5割を超えたターゲット校設定企業

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【1】

HRプロが「ターゲット校」設定の調査を始めたのは2011年卒からだ。当時ターゲット校を設定していた企業は33%に過ぎず、過半の企業は設定していなかった。しかし年を重ねるごとに設定企業は増大し続け、2012年卒で39%、2013年卒で48%、そして2014年卒採用では52%と5割以上の企業がターゲット校を設定している。

図表4:ターゲット大学の設定の有無(経年比較)

ターゲット校数は8割が20校以下

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【1】

次に「ターゲット校」を設定している企業が「ターゲット校」とする大学数について訊いてみた。全体で見ると「1~10校」が過半の56%を占め、「11~20校」は25%だ。8割もの企業のターゲット校数は20校以下である。
 ただし企業規模によって様相は異なり、「1001名以上」では「1~10校」は30%にとどまり、「11~20校」と「21~30校」がほぼ同数だが、「301名~1000名」と「1~300名」では「1~10校」の比率が半数以上である。
 おそらく中堅中小は多くの大学を対象とする余力が少なく、大企業ほど多数の大学をターゲットにする体制を持っていると言うことだろう。

図表5:「ターゲット大学を設定している」企業のターゲット校数(全体)

ターゲットで最も多いのは「GMARCH・関関同立クラス」

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【1】

ターゲットとする大学グループだが、全体で最も多いのは「旧帝大クラス」でも「早慶上智クラス」でもなく、「GMARCH・関関同立クラス」の51%。続いて上位国公立クラス(筑波大、横国大等)と地方国公立大クラス(秋田大、山形大等)が40%、「理系単科大クラス(芝浦工大、東京電機大等)」が39%で続く。
 ただし、企業規模別で状況は大きく異なる。大企業では、「GMARCH・関関同立クラス」が72%、「上位国公立クラス(筑波大、横国大等)」と「早慶上智クラス」がともに56%、次いで「旧帝大クラス」が53%となる。これが中堅企業になると、「GMARCH・関関同立クラス」が最も多いことは変わらないものの、49%と半分以下しかない。以下、「地方国公立大クラス(秋田大、山形大等)」45%、「中位国公立クラス(埼玉大、横市大等)」37%、「上位国公立クラス(筑波大、横国大等)」35%と続き、「早慶上智クラス」は27%、「旧帝大クラス」は23%しかない。中堅企業以下では上位校は敷居が高いということなのだろう。

図表6:ターゲットとする大学グループ(全体)

突出して多いキャリアセンターとの連携

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【1】

「ターゲット層を採用するために実施・検討している施策」についての設問では「キャリアセンター訪問」(76%)と「大学主催の学内合同セミナー」(65%)が際だって多い。技術系採用で定番の「研究室訪問」は40%と3位。
 「先輩・リクルーターの活用」は32%、「内定者の活用」が28%、「業者による大学別の合同セミナー」が26%と続いている。「インターンシップの活用」は16%と低い。総じてターゲット大学のキャリアセンターとの連携が目立ち、他の施策を大きく引き離している。

図表7:ターゲット層を採用するために実施・検討している施策(全体)

ターゲット大学への施策はリアルな人的コンタクト

記述式で「ターゲット大学への特別施策」を訊いたところ、回答のほとんどはリアルな人的なコンタクトだった。回答企業164社から内容を紹介しよう。
 コンタクトの対象はまずキャリアセンター。「接触機会を多く持つこと。遠方であっても学校へ足を運ぶこと」(鉄鋼・金属製品・非鉄金属、101名~300名)、「キャリアセンター職員との人脈構築に限ります」(商社(専門)、101名~300名)、「直接訪問を実施すること。できるだけ当社の担当者を固定する」(電子、301名~500名)と職員との人脈作りを重視し、汗を惜しまない様子がうかがえる。
 次に重要なのは教官。とくにメーカー系は研究室との関係構築に熱心だ。「就職課やキャリアセンターではなく、研究室や教授との人脈構築を進めている」(精密機器、1001名~5000名)、「教授との友好関係」(医薬品、101名~300名)、「教授とのコネクション」(情報処理・ソフトウェア、301名~500名)、「研究室、就職担当教授からの紹介」(輸送機器・自動車、501名~1000名)と多くのメーカーが研究室とのパイプを作っている。研究室訪問は減ったと言われた時期もあったが、今回のアンケートを読むと復活しているように思える。

学内セミナーへの継続参加のためにキャリアセンターに協力

OB・OGを活用する企業も多い。「OB・OGを軸とした研究室へのアプローチ」(情報処理・ソフトウェア、5001名以上)、「リクルーター等のOB・OGによるフォロー」(化学、5001名以上)、「OB訪問や会社見学、懇親会等のへの優遇」( その他サービス、301名~500名)、「OB社員の活用」(鉄鋼・金属製品・非鉄金属、301名~500名)、「OB・OGが入社後に活躍しているので、その情報提供をしっかりと行う」(フードサービス、501名~1000名)などの声がある。OB・OG活用を挙げる企業はメーカー系が多いようだ。
 そしてこれらの活動で大学との関係を強化した上で、学内セミナーに参加している。ただ学内セミナーへの受け入れは学事日程や教室数の制約があり企業数が限られている。そこでキャリアセンターからの要請に応え、協力する企業は多い。たとえば「学内セミナーに継続して参加するため、11月以前のキャリアセンター主催イベントには積極的に協力する」(食品、1001名~5000名)という企業があるが、イベントに参加して講師を務めれば知名度が高まるのでプラスに働くはずだ。
 その他の施策としてはターゲットを絞った「メールDM送信」「DM送付」を実施する企業もある。

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2012年12月14日~12月27日
有効回答:511社(1001名以上 84社, 301~1000名 182社, 300名以下 245社)

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