前回に引き続き、HR総合調査研究所が、全国の国公私立大学キャリアセンターを対象に2012年9月18日~10月26日に実施した調査の概要を紹介したい。今回は、企業、大学共に前年よりも注力したいという学内企業セミナーの見込みと、既卒者に対する対応状況、キャリアセンターの抱える課題について見てみたい。

大学規模が学生の就活格差につながっている

「大学キャリアセンター調査」結果報告【2】

企業も大学も学内合同企業セミナーへの取り組みを強化していることはすでに報告済みだ。その開催月と大学規模別の違いを分析してみよう。
 全体の大学を集計したグラフと大学規模別に集計したグラフの2種類を用意した。開催数が圧倒的に多いのは12月~2月の3カ月だ。1月が少し少ないが、これは試験があるので上旬、中旬に開催できないからだ。
 選考が本格化する3月、4月は少なくなり、一段落した連休明けの5月から7月にかけてまた増える。ただし2月と比べると半分以下になっている。
 夏休み中の8月、休みが明ける9月にも1割ほどの大学が実施するが、10月になるとほとんどなくなる。ただキャリアセンターを取材すると「2014年卒は状況次第。秋からも学内合同企業セミナーを実施する可能性がある」という声を聞くから、増える可能性もある。

図表1: 学内合同企業セミナーの開催月(全体)

「大学キャリアセンター調査」結果報告【2】

大学規模別も見て欲しい。まず気付くのは10月と11月を除くすべての月で大規模校(5001人以上)の学内合同企業セミナーの実施率が中小規模校(1001人~5000人、1000人以下)よりも高いことだ。その差は大きく、2月、3月以外は2倍近い差になっている。大学規模が学生の就活格差につながっていると言えるかもしれない。

図表2: 学内合同企業セミナーの開催月(大学規模別)

学内合同セミナー参加企業数に悩む小規模校

「大学キャリアセンター調査」結果報告【2】

学内合同企業セミナーの実施状況は大学規模別で大きな差があったが、キャリアセンターはどのような施策を取っているのだろうか? 学内合同企業セミナーへの企業招致について問うた設問の結果が興味深い。大規模校では「企業数は多く集まると予測しているので、これまでと変わらない」(64%)との回答が3分の2近くを占めている。ところが中規模校では52%と半数近くに低下し、小規模校では38%しかない。

 最も問題意識が鮮明に表れているのは「企業数がそれほど集まらないと予測するので、数を集めるために積極的に開拓する」という項目の数値だ。大規模校6%、中規模校9%と少なく、中大規模校では招致企業数に悩みはなさそうだ。ところが小規模校では36%が招致企業数について悩み、積極的に開拓しようとしている。

図表3: 学内合同企業セミナーへの企業招致方針(大学規模別)

ほとんどの大学が既卒者の就職支援を実施

「大学キャリアセンター調査」結果報告【2】

政府は「大学既卒者の卒業後3年間は新卒扱い」と経済界に要請を出している。HR総研の調査では、新卒扱いとして門戸を開いている企業は多いが、実際に既卒者を採用した実績を持つ企業はとても少ない。
 大学にとっても未内定のまま卒業した既卒者は大きな課題になっている。そこで既卒者就職支援について聞いたところ、「すでに実施している」(93%)と大多数の大学が取り組んでいる。また「今後実施する予定」(2%)もある。
 ただキャリアセンターへの取材でも、既卒者への支援の限界を指摘する声を聞くことが多い。そもそもキャリアセンターが忙しい。3年生のキャリア指導と4年生の就職支援が重なっているし、3年生が就活を始める12月になっても数割の4年生は未内定だから、12月~3月までは3年生と4年生の就職支援が重なっている。
 学生はキャンパスにいるが、既卒者はキャンパスにいるわけではない。学生は学内専用ナビを使えるが、既卒者はアクセスできない。それに未内定のまま卒業した者の多くはキャリアセンターを使ったことのない者が多く、連絡先がわからないということが多い。
 このように考えると、大学の既卒者支援には限界がありそうだ。学生への就職支援でハローワークがキャリアセンターに協力しているが、既卒者ではさらなる協力体制が必要だ。

図表4: 既卒者への就職支援

2014年卒学生支援で目立つ施策は「対策」だけでなく「支援体制」の構築

最後に2014年卒学生支援で目立つ強化施策をフリーコメントの中から引用してみたい。
 まず目立つのは筆記試験対策だ。多くのキャリアセンターが強化しており、「本学の内定率が低い理由は、筆記試験になかなか合格しないからである。11月より、国語と数学の補講を行う予定である」「国語力強化(読解・文章作成)のための講座実施」というコメントもある。
 個人面談によるピアサポートも重視されている。「学生タイプに応じた支援強化」はどのキャリアセンターでも課題になっており、学部学科別の違いも大きい。そこで「学科別に出向いての出前ガイダンス」を実施するキャリアセンターもある。
 キャリアセンター単独の就職支援には限界がある。そこで教員やOB・OGとの協力体制を構築する施策も多い。
 「教員の意識改革」「各ゼミと就職課とのタイアップ」「教員向け就職の流れ説明会を行い、全学的な協力体制の構築」「演習担当教員との連携」「学生の就職活動状況等をキャリアスタッフ(事務)と指導教員が共有するサポートシステム(電子カルテ)の構築強化」「学部との連携、特に教員による学生への声かけ、卒業生との連携、保護者との連携」などの声がある。
 OB・OGや内定取得済み4年生を活用する施策も多い。「4年生(内定者)との座談会」「OG等社会人から直接話を聞く機会を設け、仕事に対する理解を深める」「OB・OGとの交流」などのコメントがある。

 これまでの強化施策では「面接対策」「ES対策」「グループディスカッション対策」など「対策」がつく項目が多かった。学生個人の「就活という戦闘」で役立つスキル向上というニュアンスが強かった。今回の調査では「支援体制」に関わる施策が多い。どうやらキャリアセンターが戦闘支援にとどまらず、支援体制という戦略に足を踏み入れたように感じる。

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:全国の国公私立大学キャリアセンター
調査方法:調査票を郵送し、回答をFAXにて回収
調査期間:2012年9月18日~10月26日
有効回答:285大学(1000人以下60校、1001~5000人143校、5001人以上82校)

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