前回は、HR総合調査研究所が2012年9月上旬に行った「2013年度新卒採用」についてアンケート調査の中から2013年度新卒採用の結果を報告した。今回は2014年度新卒採用について解説したい。企業の採用戦略に変化が感じられる内容だ。

2014年度新卒採用での課題

2014年度新卒採用での課題を問うた設問では、毎年の定番回答が多い。定番を紹介すると、
・志望度の見極め。
・早期に学生の認知度を上げる。
・採用手法の変更(面接・筆記試験・グループディスカッションの見直し)。
・より質の高い学生の確保。本社所在地以外の地域での採用力の強化。
・成長できる人材の見極め、メンタル不調に強い人材の確認。

要約すると、学生の認知度を上げ、質の良い学生を集め、選考手法に工夫を凝らし、タフな学生の志望度を確認して、内定辞退を防ぐ、というものだ。

新しい課題もある。まず増えているのはSNSへの言及だ。昨年の調査では、採用課題としてSNS利用を挙げる企業は少なく、SNSは発展途上の媒体という意見が大半だったが、今年は違う。導入を検討している企業がかなり目立つ。
また大学との関係強化も多く、
・近隣の大学キャリアセンターとの繋がり強化。
・国公立大学との繋がり基盤作り。
なども目立つ。中には「いままで弊社は媒体を一切使わない手法で採用してきたが、この手法を使う企業が増えてきている。このフィールドでのプレイヤーが増えてくるため、そのほかの手法が必要になってきそうだ」と書いている企業もある。キャリアセンターからも訪問企業が増え始めているとの声を聞く。

また単年度の新卒採用という視点での課題ではなく、「新卒採用と中途採用の境を無くす、などを検討」という人材要件そのものを見直す企業もある。
65歳までの雇用義務化を受け、「65歳までの雇用延長問題と新卒採用とのバランス」を挙げる企業もある。おそらく学生というターゲットを追うだけでなく、社内の高齢社員の活用状況と新卒採用しての育成をバランスさせることは、これからの人事施策で重要性を増していくだろう。

インターンシップの実施状況に変化なし

「2013年度新卒採用の総括と2014年度の課題調査」結果報告【2】

昨年に行われた経団連の倫理憲章改定でもっとも大きな変化は、採用広報の開始が12月に後ろ倒しになったことだが、インターンシップにも大きな影響を与えた。採用を目的としたインターンシップが禁じられ、期間も5日以上とされたのだ。

では実際に2014年度採用へ向けてインターンシップを実施した企業は、どれくらいあるのだろうか?
全体で見ると、インターンシップを実施した企業は「昨年は実施しなかったが、今年は実施した(実施の予定)」4%と「昨年も今年も実施した(実施の予定)」25%を併せて3割弱だ。
インターンシップを実施しなかった企業は「昨年も今年も実施しなかった」68%と「昨年は実施したが、今年は実施しなかった」3%を併せて7割強である。
つまり実施状況については昨年とあまり変化がなく、増減もそれほどない。
ただ規模によって傾向が異なる。実施企業は「1001名以上」でかなり多く、「昨年は実施しなかったが、今年は実施した(実施の予定)」と「昨年も今年も実施した(実施の予定)」を併せると42%になる。「301名~1000名」と「300名以下」の企業は20%台だから、かなり大きな違いと言える。規模が大きいほど、インターンシップに熱心に取り組んでいると言える。

【図表1】インターンシップの実施状況

突出して多いのは、期間が1週間と2週間のインターンシップ

「2013年度新卒採用の総括と2014年度の課題調査」結果報告【2】

倫理憲章が改定される以前は、One Dayインターンシップが盛んだったが、どう変わったのか?
期間の短い半日や1日のインターンシップは激減し、1週間程度(5日以上)と2週間程度のインターンシップが突出して多くなっている。ともに4割前後に達している。倫理憲章の規定はおおむね守られているようだ。
もっとも学生にとって、これがいいことかどうかはわからない。One Dayインターンシップにも学生の就活意識を高める効果があったからだ。その機会が失われている。

学生のアンケートを読むと、選考直結型や有給のインターンシップを望む声があるが、今回の調査で見る限り、実施企業は少ない。有給のインターンシップは3%、選考直結型はわずか1%だ。

【図表2】実施したインターンシップのタイプ

講義から実践型へシフト

インターンシップで工夫している点を見てみよう。
・少人数で、社員と同等の業務経験をして頂く内容にした。
・学生一人一人が感動と成長を感じて卒業できること、当社のファンになってくれることを目的としてプログラムを組んでいる。
・実際に弊社のサービスを非日常的な空間(無人島)で体験して頂いたあと、学生達に企画・運営側になってもらい、人を楽しませるために全力を尽くしてもらう。インターン生向けに一からプログラムを企画するのは今年初。
・新規に学習キットを企画・作成して実施。学生には分かりやすくなったとの評判。
・MRという仕事を理解してもらうため、シュミレーションではあるがより身近に感じる工夫をしている。例えば顧客である医師との対話など。
・長期(外国人)インターンの場合は、テーマ設定とチューター選定に気を使っている。
・勉強会からより実践的な方向にシフト中。
・選考に直結させるべく、業界希望者に応募者を限定している。

座学やワークショップ形式から、実際の業務を体験させる内容に変わってきていることがうかがえる。

2014年度新卒採用の実施予定施策

「2013年度新卒採用の総括と2014年度の課題調査」結果報告【2】

2014年度新卒採用で実施予定の施策を問うた結果、もっとも多いのは「自社セミナー・説明会」の80%、続いて「学内企業セミナー」と「就職ナビ」が76%である。2013年度までは「就職ナビ」がずっとトップの座を守ってきたが、ついにその座を明け渡すことになった。
4位は「適性検査」73%であり、5位が「自社採用ホームページ」69%だ。昨年より「適性検査」を重視する企業が増えている印象だ。
6位と7位は大学関係で、「求人票」が66%、「キャリアセンター訪問」が52%になっている。おおむね納得できる数字であり、驚くべきものではない。

【図表3】2014年度新卒採用で実施する施策(複数選択可)

ターゲットを絞ったリアルなコミュニケーション重視へ

「2013年度新卒採用の総括と2014年度の課題調査」結果報告【2】

「2014年度新卒採用でとくに力を入れる施策」と質問の仕方を変えたところ、上記と異なる結果になった。「学内企業セミナー」56%と「自社セミナー・説明会」55%は変わらず上位だが、「就職ナビ」はランクを大きく落とし、28%になっているのだ。かなり低い数字である。
WEBでのコミュニケーションから、ターゲットを絞り込んでFace to Faceでのリアルなコミュニケーションに軸足が移ってきたと言えよう。

【図表4】2014年度新卒採用でとくに注力する施策(3つまで選択可)

就職ナビの費用割合を減らす企業が増える

「2013年度新卒採用の総括と2014年度の課題調査」結果報告【2】

2000年代に入ってから、企業の採用活動と学生の就職活動のメディアは「就職ナビ」一辺倒になっていたが、どうやら潮目が変わってきているように感じる。今回の調査では「就職ナビにかける費用割合の増減」を問うている。

最も多いのは「前年と同じ」だが、就職ナビにかける予算を「増やす」のは業種、規模を問わず10%以下だが、「減らす」は20%前後ある。全体の採用経費が増えないとすると、就職ナビの予算は減り始めているのだ。

【図表5】採用予算全体に占める就職ナビの予算

「待つ」のではなく、「狩り」に出かける採用へと潮目が変化

これまで定番だった就職ナビが退潮気味になった理由だが、人事のコメントからいくつかを紹介しておく。

・リクルートサイトを活用しての採用活動の限界を感じている。企業名が知られていないだけに、もっと積極的にターゲット層の学生と関わる手法を取り入れ、ハンティング型の採用活動をしていきたい。
・母集団形成型採用は、弊社ターゲットの確保が出来ないので、今後実施しない。
・ナビだけに頼った活動に限界を感じている。
・自社ホームページとFacebookでの反応が増加傾向にあるため、就職ナビの使用頻度や露出を減らしたい。
・就職サイト中心から学校訪問を通じて学内企業セミナーでの直接面談中心への採用手法に切り替えていく方向になると思われるから。

これらのコメントを読むと、いま起きている変化がよくわかる。就職ナビからのエントリーを「待つ」のではなく、採用担当者がターゲットを「狩り」に出かけようとしているのだ。

就職ナビに代わって重要性を増しているのが「大学対策」だ。多種多様なターゲット校に対する施策を実施している。主だった施策を紹介しておこう。
・学内合説への申し込み
・求人票の送付
・懇談会への出席
・ターゲット校学生限定のDM
・教授とのパイプづくり
・ターゲット校OB社員を活用した研究室訪問
・インターン生を通じた口コミ
・キャリアセンター訪問

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:WEBアンケート
調査期間:2012年9月3日~12日
有効回答:233社(メーカー89社、非メーカー144社)

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