すでに25年卒学生向けインターンシップが本格化している8~9月、24卒の就活動向は終盤に入りつつある。24卒学生の動きを振り返ることで、インターンシップ参加を経て内定を得る学生がどの程度いるのか、内定承諾した企業とはいつ頃出会ったのかなど、25卒学生の就活動向にも共通しそうな様々な情報が見えてくる。
HR総研と楽天みん就は、2024年卒学生の就職活動の動向調査を実施し、その結果について「就職活動編」と「就職意識編」の2回に分けて報告する。
今回は「就職意識編」として、内定承諾先への意識、就職活動や入社への不安、内定者が求めるフォローなど様々な項目に関する調査結果について、フリーコメントを含めて以下に報告する。

就職活動は「大変だった」が過半数、長期戦に疲れる学生も

まず、24卒学生の就職活動に対する所感を見てみると、文系・理系ともに「やや大変だった」が最多で、それぞれ34%、32%と3割を上回っている。「かなり大変だった」を合わせると「大変だった」の割合は文系56%、理系51%で過半数に上り、理系より文系の方が5ポイント高くなっている。「大変だった」と「楽だった」(「かなり楽だった」と「やや楽だった」の合計)を比較すると、文系・理系ともに「大変だった」の割合の方が顕著に高く、昨年までと同様に就職活動を大変に感じている学生の方が多い傾向が見られる(図表1-1)。

【図表1-1】就職活動に対する所感

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

就職活動に対する所感の理由について、フリーコメントで得られた主な意見を抜粋して以下に紹介する(図表1-2)。

【図表1-2】就職活動に対する所感の理由(一部抜粋)
●所感:かなり/やや楽だった

就職活動への所感の理由文理区分大学区分
3年生の夏頃からインターンシップに参加していたので、優遇を受けられ、非常に楽なステップで内定まで進めることができたため文系早慶大クラス
説明会やインターンシップがオンライン開催が主であったため、移動の時間や金銭を随分節約できた理系その他国公立大
早い時期から始めて、時期的に切迫する前にある程度終わらせていたから理系上位私立大
インターン経由で早期選考に乗ることができたので、早めに内定を獲得し余裕を持って就活を進められたため理系上位国公立大
自分の強みを存分に活かせたから。企業が親身に話を聞いてくれたから文系中堅私立大
思いのほか上手くいったが、業界によって内定が出るのが遅かったのでそこは焦った文系上位国公立大
Uターン就職することに決めたが、早期選考の誘いを頂いた会社が複数あった点と地元のなかでは進学校出身ということもあり、同じ高校出身者の人事の方とお会いすることもあり、他の人と比べると優しく対応して頂いた気がした点からやや楽だった印象があります文系早慶大クラス
笑顔が最大の強みとなった文系上位国公立大
自分を知ることができ、とても楽しかった理系早慶大クラス


●所感:どちらともいえない
就職活動への所感の理由文理区分大学区分
大変だと感じる反面、自分の知らない分野の仕事のことを知れて楽しい気持ちもあったから文系その他私立大
第一希望の会社に内定をもらえなかったので、楽だったとはとても言えない。だが、業界を変えたことで内定までの道のりは楽になった文系その他私立大
就活を早期に始め、結果的に1年3ヶ月ほどしていたため、長く、途中モチベーションが下がったこともあった。ただ、長い時間をかけて、自分という存在を見つめ続け、自分に合う企業を絞り込んだためか、2社のみにESを出し2社ともに内定をいただけて、本選考は楽だったと感じた。理系その他国公立大
1人でやることが多く辛かった。メンタルが強くなった理系中堅私立大


●所感:かなり/やや大変だった
就職活動への所感の理由文理区分大学区分
面接でどこを見られているのか最後までわからなかった文系旧帝大クラス
世間に必要とされてないように感じたこともあった文系上位私立大
真の「納得感」を得るためには地道な自己分析だけでなく企業の人たちとの話し合いがものすごく重要であった。適当に決められない性格だからこそ、時間がかかった文系上位国公立大
自分が入社したい企業を見つけることも大変だったし、その企業に内定をいただくのも大変だった理系中堅私立大
面接で企業ごとに志望理由を考えなければならないため理系旧帝大クラス
長期戦であるため大変だった文系上位私立大
どこも受からない、志望動機や就職活動の軸など、やりたいことや夢がないと言えないことにつまづいた文系上位国公立大
インターンの募集と期末試験の準備が重なったことで応募を見送った企業が何社もあるが、インターン選考に参加していたら秋以降の就職活動がもう少し楽だったのではないかと思う文系早慶大クラス
就職活動に対してどれだけ時間を掛けたかという点が結果に結びつかないことが多かったから。自分が落ちた企業に内定した友人の自慢話を聞くことが辛かったから理系旧帝大クラス
受験と違って偏差値が出ないため、自分のレベルを客観的評価する指標がない理系上位国公立大

「志望企業は大手志向」が理系で顕著に

2023年6月上旬時点で内定(内々定)を受けた企業の従業員規模(複数選択)は、文系では「1,001名~5,000名」の規模が最も多く41%、次いで「5,001名以上」が34%で、「501~1,000名」以下の中堅・中小規模の企業は3割以下となっており、企業規模が大きい方が高い割合となっている。理系では「5,001名以上」が最多で53%、次いで「1,001名~5,000名」が44%となっている。一方、「501~1,000名」以下の中堅・中小規模の企業は2割程度以下となっており、文系よりも顕著に企業規模が大きい方が高い割合となっており、理系学生の大手志向の傾向がうかがえる(図表2-1)。

【図表2-1】内定(内々定)した企業の従業員規模(2023年6月時点)

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

志望企業の規模に対する意識の変化について見てみると、文系では「企業規模は最初から問わなかった」が最多で37%、これに1ポイント差で「最初から大手志望で、最後まで変わらなかった」が36%などとなっている。一方、理系では「最初から大手志望で、最後まで変わらなかった」が圧倒的で52%と半数以上、次いで「企業規模は最初から問わなかった」が33%などとなっている。したがって、一貫して大手志望の学生は文系より理系の方が顕著に多く、企業規模にこだわりが強い傾向がうかがえる。また、文系・理系ともに志望する企業規模を就職活動の途中で変えた学生は少数派であることが分かる。

【図表2-2】志望企業の規模に対する意識の変化

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

強い入社意志で「内定承諾」する学生が理系で7割以上、不安はない?

すでに内定承諾した学生について、内定承諾先の企業に対する意識を見てみると、文系・理系ともに「内定承諾した企業に入社することを、強く希望している」が圧倒的で、それぞれ61%、74%となっており、理系では7割を超えている。ただし、「まだ他の企業も考えたい」や「入社する企業を絞り込めておらず、とりあえず承諾しておく」という意識の学生も文系では4割、理系でも3割近くおり、これらの学生は内定承諾後に内定辞退に転じる可能性もある。この結果からも、企業側は内定承諾を受けても安心できず、内定者フォローにも注力していく必要があるという現状を推測できる(図表3-1)。

【図表3-1】内定承諾の連絡を内定先に行う際の意識

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

内定承諾先を決断する際に不安を感じたかについては、「不安がある(あった)」が文系65%、理系56%で、6割前後に上っており文系の方が9ポイント高くなっている。就職先が決まる安堵もあるだろうが、特に複数の企業から内定を得ている学生は、その中から能動的に選択して内定承諾するという決断に対して、少なからず不安を持っているのだろう(図表3-2)。

【図表3-2】内定承諾先を決断する際の不安の有無

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

学生の過半数が持つ「入社に向けた不安」、その内容とは?

内定承諾後も入社に向けて不安を抱く学生も少なくないようだ。
内定承諾先への入社に対する不安の有無を聞いたところ、文系では59%、理系では53%といずれも過半数の学生が「不安がある」としている(図表4-1)。
入社に向けた不安にはどのようなものがあるのだろうか。

【図表4-1】内定承諾先への入社に対する不安の有無

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

入社に向けた不安の内容として最も多いのが「職場メンバーに馴染めるか」で56%、次いで「仕事で成果を出せるか」が49%、「配属先」が39%などとなっている。いずれも入社してみないとなかなか払拭できない内容が並んでいるが、これらの不安を少しでも解消し安心して入社できるよう、内定者に寄り添った企業からの内定者フォローが必要だろう。「内定承諾の決断自体」を挙げる学生が2割を超える点にもついても気をつけたい(図表4-2)。

【図表4-2】入社に向けた不安の内容

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

このような不安を含めて相談をできるような相手が内定承諾先の企業にいるかについては、「いる」とする割合は文系で53%、理系で60%となっており、相談相手がいる学生が過半数に上っている(図表4-3)。
ただし、相談相手が「いない」とする4割~半数近い学生に目を向けると、このような人たちが不安を募らせて入社直前での内定辞退に転じる恐れがある。企業は、連絡事項が無くとも定期的に連絡を取るなど、内定者が相談しやすい環境づくりも意識しながら内定者フォローに取り組むことが大切だろう。

【図表4-3】内定承諾先の企業に相談できる人はいるか

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

内定承諾先に持つイメージで「福利厚生の充実」が最多、文系と理系の違いは?

学生が内定承諾した企業に対して抱いているイメージについて見てみる。
文系・理系ともに「福利厚生が充実している」が最多で51%、50%と半数程度に上っている。これに次いで「社員を大切にしている」が文系で48%、理系で46%、「社会貢献を大切にしている」が文系で47%、理系で48%などとなっており、上位3項目には文系・理系で共通した項目が挙がっている。このような中、「仕事が面白い」については理系では4位に挙がり44%であるのに対して、文系では35%で理系より9ポイント低くなっており、顕著な差異が見られる。一方、文系で上位に挙がり、理系より特に高い割合の項目は「社員が生き生きしている」で、文系で44%(5位)なのに対して、理系では37%(10位)で7ポイント差となっている(図表5)。内定承諾先に感じている魅力のポイントは、文系と理系で共通項目も多いものの、一部では異なる項目もあるようだ。

【図表5】内定承諾した企業に対して抱いているイメージ

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

志望度が上がったエピソード、下がったエピソード

学生は、就職活動を始めてから志望企業の選択、内定承諾先の選択、その後の入社の決断など各ステップにおいて不安を抱きつつ様々な企業と対峙している。このような中、学生から得られたフリーコメントでの意見の中から、「志望度の上がったエピソード」と「志望度の下がったエピソード」について主なものを、抜粋して以下に紹介する(図表6-1,6-2)。

【図表6-1】企業の選考を受ける中で、志望度が上がったエピソード(一部抜粋)

志望度が上がったエピソード文理区分大学区分
期待しているよという声かけ。選考に通過していること文系中堅私立大
こちらの話をよく聞いてくれて、ESによく目を通してくれたと感じた時文系上位私立大
面接において「お互いを知る場にしましょう」と声をかけてくれ、こちらの話をしっかりと聞いてくれた時文系上位私立大
面接官の方が話しやすく、私自身のキャリアイメージを膨らませてくれたから文系上位私立大
一次面接通過者用の座談会があった文系上位私立大
適性テストを受けた際にその結果をフィードバックとして明らかにしてくれたこと。一次面接をして、その時間内で合否とフィードバックを伝えてくれたこと文系上位私立大
内々定後も就活を続けていいよと言ってくれたこと。自分の会社を選ぶだろうという自信と就活生への親身さを感じた文系その他国公立大
最終面接に向けて店舗見学を必須としていた企業で、店舗で働く方々のお話を伺えた際には志望度が上がりました文系中堅私立大
社員訪問の際、会社のいいところだけではなく仕事のしんどい点、泥臭い点なども教えてくださった文系上位私立大
面接の際に話したことを、次の面接のアイスブレイクで話してくれ、興味を持ってくれているように感じたこと理系上位国公立大
面接中、私のどのような質問にも真摯に答えてくれた理系上位国公立大
何か質問をメール出した際の返信がかなり速かった。学生に対してリスペクトを持って接してくれた。私の就職相談に人事が乗ってくれた理系上位私立大
面接で初めて本社に行ったこと。綺麗なこの場所で働きたいと思った理系旧帝大クラス

【図表6-2】企業の選考を受ける中で、志望度が下がったエピソード(一部抜粋)

志望度が下がったエピソード文理区分大学区分
ストレス耐性ばかり聞かれ、業務が厳しいことを察した時文系早慶大クラス
軽い面接で最終面接に進んだこと文系旧帝大クラス
説明会に参加しただけなのに、その後、企業が何度もエントリーしないかと電話をかけてきたこと文系中堅私立大
1週間以内に連絡すると言って何の連絡もなく、1ヶ月後に急に連絡してきて連絡が遅れたことを詫びることもせずに次の選考のお知らせをしてきたこと文系上位私立大
説明会等で、きつい話し方をしている時。自身はどちらかというと穏やかな職場で働きたいと考えていたので、社風に合っていないと考えた文系その他国公立大
興味がなさそうな感じで私の話を聞かれた文系早慶大クラス
インターンシップや内定者懇親会に参加する中で、同じく就活生や同期となる人のやる気のなさや人任せな瞬間を経験し、志望度が下がった理系上位私立大
競合他社を下げるような発言理系上位国公立大
ある企業の社員がリクルーター面談で自ら赤字だと言ったとき(当然、本選考には挑まなかった。)理系上位国公立大
オンライン面接で、面接官の顔やテンションが暗かったこと。今までの説明会での社員との落差で少しがっかりした理系旧帝大クラス
ジョブローテーション制度があり、技術志望でも最初の2年ほどは営業になる可能性があると伝えられたこと理系その他国公立大
その業界に関する良くないニュースを見聞きした理系上位私立大
面接時「こんな企業に来てくれてありがとうございます」等、あまりにも低姿勢な態度を取られた際、自分のレベルには合わない企業なのだろうと考え志望度が下がった理系上位国公立大
会社の強みを聞かれて、社員の人柄しか答えられなかった会社理系上位国公立大

内定者が求める「内定者フォロー」とは?

最後に、学生が内定承諾後に入社したい気持ちが高まった内定者フォローと、実施してほしい内定者フォローを見てみる。
まず、入社したい気持ちが高まった内定者フォローについては、「内定者懇親会」が最多で39%、次いで「若手社員との懇親会」が20%、「入社に向けた個人面談」が8%などとなっている。これらの取組みにより、入社先での最初のコミュニティとなる内定者同士で懇親を深めることにより安心感を得られ、歳の近い若手社員と話すことで入社後のイメージも持ちやすくなるなど、入社へのモチベーションを高めやすい効果が得られるのだろう(図表7-1)。

【図表7-1】入社したい気持ちが高まった内定者フォロー

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

企業に実施してほしい内定者フォローについては、「内定者懇親会」(56%)、「若手社員との懇親会」(38%)が入社したい気持ちが高まった内定者フォローと同様に上位2項目に挙がっており、これらに次いで「定期的な連絡」が30%で挙がっている。入社予定先から定期的に内定者に連絡を取ることで信頼関係の構築にも繋がるとともに、入社に向けての不安なことを相談できる機会にもなり、内定辞退の防止にも効果が期待できるだろう(図表7-2)。

【図表7-2】企業に実施してほしい内定者フォロー

HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職意識編】

【調査概要】

アンケート名称:HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査(6月)        
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2023年6月1~12日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:2024年卒業予定の「楽天みん就」会員学生
有効回答:607件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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