今年は、新型コロナウイルスの感染拡大による大きな影響を受け、企業が採用活動の予定を変更することで、先の読めない就職活動に対する学生の不安は高まっている。
このような非常事態の中ではあるが、「就職活動に取り組む学生の動向」と「就職活動への意識」について、HR総研は調査を行った。
今回は、「2021年卒学生の就職活動動向調査」【就職活動編】の結果を報告する。
<概要>
●就職活動をはじめた時期は、理系の半数以上で「2019年7月以前」
●参加したインターンシップ数(企業数)は理系で「4~6社」が最多、文系では「10社以上」が最多
●インターンシップに参加した時期は「8月」で6割、「2月」は昨年より減少、コロナの影響か
●新型コロナウイルスの感染拡大の中、「主催者側による中止を望む」学生が半数以上
●少なくとも1社以上のWeb説明会を視聴した学生は8割以上
●参加した面接形式は「対面式」が8割、「オンライン」は4割以上
●現時点で、理系の半数近くは「1社以上」の内定を獲得済み
就職を意識しはじめた時期は「学部3年生4~5月」が最多
まずは、学生が就職を意識し始めた時期について、文系・理系ともに「学部3年生(または修士1年生、以下同じ)4~5月」が最も多く、文系で22%、理系で29%と2割以上がこの時期に意識し始めていることが分かる。また、これに次いで「学部3年生6~7月」で文系21%、理系28%と僅差になっており、「学部3年生6~7月以前から(※)」就職を意識し始めた学生の割合は、文系67%、理系68%と7割近くなっている。
また、文系では、学部2年生以前から(※)」とする学生が23%である一方、理系では11%となっており、文系学生は理系学生より就職を意識し始める時期が早い傾向がうかがえる。
※学部3年生6~7月以前から:「大学入学前から」~「学部3年生6~7月」の合計
※学部2年生以前から:「大学入学前から」~「学部2年生から」の合計
【図表1】文理別 就職を意識しはじめた時期
就職活動をはじめた時期は、理系の半数以上で「2019年7月以前」
次に、実際に就職活動を始めた時期について、文系では「2019年5月以前」が最多で16%であり、理系では「2019年6月」が最多で27%となっている。
「2019年7月以前(※)」とする割合は文系で41%、理系で54%と半数を超えており、就職を意識し始める学生の割合は文系が理系より高い一方で、就職活動の開始時期については理系の方が文系より早く、就職ナビでのインターンシップエントリーサイトのオープンとなる6月に合わせて就職活動を開始する学生が多い傾向がうかがえる。
※2019年7月以前:「2019年5月以前」~「2019年7月」の合計
【図表2】文理別 就職活動をはじめた時期
参加したインターンシップ数(企業数)は理系で「4~6社」が最多、文系では「10社以上」が最多
就職活動の手始めとなる傾向がうかがえるインターンシップへの参加であるが、「参加したインターンシップ数(企業数)」については、文系で「10社以上」が最も多く21%で、理系では「4~6社」が最も多く28%となっているが、「10社以上」も19%と文系に負けてはいない(図表3)。
「2社以上(※)」の割合は文系79%、理系83%と約8割にも上り、複数社のインターンシップに参加している学生が大半であることが分かる。学生は、インターンシップの段階では幅広く企業や業界への理解を深め、自身のより納得できる就職に繋げるための場であるとともに、関心のある企業の採用選考のチャンスを得るための第一歩と捉え、積極的に複数のインターンシップへの参加をしていると推測される。
※2社以上:「2社」~「10社以上」の合計
【図表3】文理別 参加したインターンシップ数(企業数)
インターンシップに参加した時期は「8月」で6割、「2月」は昨年より減少、コロナの影響か
「インターンシップに参加した時期」については、「8月」「9月」がピークとなっている。文系・理系ともに 「8月」が最も多く文系56%、理系64%となっている。
例年、「8月」よりも「2月」の参加者数が多い傾向にあるが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企業の急遽中止あるいは学生の参加の自粛により、「1月」以降のインターンシップの参加者数が少なくなったものと推測される(図表4)。
【図表4】文理別 インターンシップに参加した時期
インターンシップの望ましいタイプは文系で「1DAYタイプ」が半数近く、理系では長期間タイプに肯定的
学生が考える「インターンシップの望ましいタイプ」については、文系では「半日・1日タイプ」が最多で46%を占め、次いで「2~3日」が36%、「1週間程度」が12%と、実施期間が長くなるほど「望ましい」とする学生の割合が減少している。一方、理系では「2~3日」が最も多く32%、「半日・1日タイプ」で30%、「1週間程度」で29%といずれのタイプも30%前後となっており、実施期間が長いタイプに対する肯定派が文系より多いことがうかがえる。「1週間程度」を選択した理由では、「グループワークだけではなく業務体験をしたいから」「短すぎると社員と交流する機会があまりなく、会社説明会とほぼ変わらない」などの声が挙がっている(図表5)。
【図表5】文理別 インターンシップの望ましいタイプ
インターンシップに参加した企業からのアプローチは「早期選考会の案内」が圧倒的
「インターンシップ参加企業からのアプローチ」は、2020年卒に引き続き「早期選考会の案内」が圧倒的に多く、文系で55%、理系では71%と7割を超えており、3月1日以前での企業による学生の呼び込みが強化されていることが推測される。「リクルーターからのフォロー」は理系で21%と文系より10ポイント高く、文系学生より理系学生に対するリクルーターによるフォローが積極的であることがうかがえる(図表6)。
【図表6】文理別 インターンシップに参加した企業からのアプローチ
8割の学生はインターンシップを採用選考とリンクさせて実施することに肯定的
インターンシップと採用選考との関係に対する学生の考え方は、文系・理系ともに「インターンシップからの選考があってもいい」が最多で、文系56%、理系57%と6割近くなっている。また、これに次いで「インターンシップからもっと多く採用選考すべき」が多くなっており、文系22%、理系27%とともに2割を超えている。一方、「インターンシップを選考とリンクさせるべきではない」と考える学生は、文系で22%、理系で16%と2割前後であり、8割の学生はインターンシップを採用選考とリンクさせて実施することに肯定的であることが分かる(図表7)。
就職活動の第一歩としてインターンシップに参加する学生が多く、企業も参加者へのフォローとして「早期選考会の案内」が圧倒的に多いことからも、学生、企業ともに、インターンシップを採用選考の重要なプログラムの一つとして捉える傾向が、主流となっていることがうかがえる。
【図表7】文理別 インターンシップと採用選考の関係に対する考え方
最も活用している就職ナビは「マイナビ」が最多、「ONE CAREER」も健闘
就職活動において「最も活用している就職ナビや逆求人型サイト」を1つだけ選択してもらったところ、文系・理系ともに「マイナビ」が最も多く、文系では49%(2020年卒:40%)と約半数、理系でも33%(同34%)と3分の1に上る。2020年卒の同時期調査と比較すると、「リクナビ」を最も利用する学生の割合は、文系で11%(同26%)、理系で19%(同31%)と2割未満に低下しており、「マイナビ」との差異が顕著となっている(図表8)。昨年の内定辞退率データ提供問題の影響は、大きそうである。また、大手企業やベンチャー企業を目指す学生向けにエントリーシート(ES)を公開する「ONE CAREER」が文系・理系ともに3位に浮上し、1割以上の学生が最も活用しており、学生は採用選考の最初の関門であるESの作成に苦戦していることもうかがえる。逆求人型サイトでは、「OfferBox」が文系・理系ともに6%(同ともに3%)と躍進している。
【図表8】文理別 最も活用している就職ナビや逆求人型サイト
就職ナビで「こんなことができたらいいのに」と思うこと
就職ナビで「こんなことができたらいいのに」と思うことについて、フリーコメントでは、「カレンダー一括管理」や「就活生同士の交流機能」、「地元企業フィルター」などが多く挙げられている(図表9)。
【図表9】就職ナビで「こんなことができたらいいのに」と思うこと(一部抜粋)
回答 | 大学区分 | 文理区分 |
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もっと学生と交流したい | 旧帝大クラス | 文系 |
いちど入力したプレエントリー内容を他の企業に利用できる | 旧帝大クラス | 文系 |
同じ企業を受ける人との情報交換 | 早慶大クラス | 文系 |
スケジュール管理 | 上位国公立大 | 理系 |
ES提出期限カレンダー | 上位国公立大 | 文系 |
就職ナビで、他社の比較やこういった研究がおすすめといったアドバイスがあれば良いなと感じる | 中堅私立大 | 文系 |
より詳細な職種検索ができるようになって欲しい。また、BtoBとBtoC、地元企業かどうかなどのフィルターも欲しい | 中堅私立大 | 文系 |
学歴フィルターの有無をAIで診断すること。 | その他国公立大 | 理系 |
複数アプリの日程をまとめて管理 | その他国公立大 | 文系 |
中小企業の情報を増やしてほしい | その他私立大 | 理系 |
就職ナビ同士の共有 | その他私立大 | 文系 |
他の就活生の情報把握 | その他私立大 | 文系 |
新型コロナウイルスの感染拡大の中、「主催者側による中止を望む」学生が半数以上
ついに政府から非常事態宣言が発出されるまでに状況が悪化している新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、合同企業説明会や企業個別のセミナーの中止が頻発するなど、今年の就職活動生は思うように就職活動ができない環境下に置かれてしまっているが、この状況について、就職活動中の学生はどのように捉えているのだろうか。
「セミナー中止か予定通りの実施か」に対する考え方としては、文系・理系ともに「感染リスクを考えれば中止すべきだ」が最も多く、文系で51%、理系で58%と5割以上となっている。やはり、健康や命を第一優先した対応を求める学生が多く、主催者側で中止を決定してもらうことで、学生もリスクを冒して参加する必要もなくなり、安心して安全な行動を取れるようになるのだろう。このような非常事態発生時の企業による対応も、その企業への学生の志望度を左右する重要なキッカケになるのではないだろうか(図表10)。
【図表10】文理別 「セミナー中止か予定通りの実施か」に対する考え方
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【調査概要】
アンケート名称:HR総研×楽天みん就:2021年卒学生の就職活動動向調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)、楽天みん就(楽天株式会社)
調査期間:2020年3月8日~3月23日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:2021年卒業予定の「楽天みん就」会員学生
有効回答:777件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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Eメール:souken@hrpro.co.jp
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。
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