新入社員研修の内容は、例年同様「マナー」、「社会人としての心構え」がトップである。その実施方法は「集合研修」が9割で、実施日数の最多は「1週間程度」(21%)がトップ。「1か月以上」(19%)、「1ヶ月程度」(17%)、「2週間程度」(16%)が続いた。
配属後の「新入社員フォロー研修」は65%が実施しているが、メンター制度は46%と半数にやや満たない。
これら配属後の課題に関するフリーコメント回答など、気になる結果をご覧ください。
●新入社員研修の内容は「社会人としての心構え」「マナー」がトップ
新入社員研修の内容は、「マナー」(90%)、「社会人としての心構え」(89%)がトップだった。3位以降には、「会社の仕組み・ルール」(78%)、「報連相」(72%)、「コミュニケーション」(69%)、「各事業の説明」(69%)、「コンプライアンス」(68%)が続く。この傾向は昨年の調査結果とほぼ同じである。
「PCスキル」(29%)、「語学・英語」(8%)といったスキル系の研修は少ない。
「ストレスマネジメント」は35%の企業が実施している。新しい環境になじめず、すぐに離職する若者が増えている昨今、「心のケア」も大切な人事の課題だ。あらかじめ想定されるストレスといかにお付き合いするか。せっかく獲得した新入社員の離職リスクは、芽が出る前に摘み取っていきたい。
【図表1】新入社員研修の内容
●新入社員研修は「集合研修」が9割。実施日数は「1週間程度」(21%)がトップ。
新入社員研修の実施形態を質問したところ、95%が「集合研修」という回答だった。
集合研修の実施日数を聞いたところ、もっとも多かったのは「1週間程度」(21%)であり、2位以降に「1か月以上」(19%)、「1ヶ月程度」(17%)、「2週間程度」(16%)が続く。「1日」「2日」「3日」は、全部あわせて17%と少ない。
新入社員研修は1週間以上行うのがスタンダードと言えるだろう。
ただし、従業員規模別で見ると、300名以下の中小企業は1~3日の割合が26%にも及ぶ。中小企業では、あまり集合研修に時間を割かず、すぐに個別研修、またはOJTによる現場教育に移行する傾向が高いようだ。
【図表2】新入社員研修の実施形態
【図表3】新入社員研修(集合研修)の実施日数
●研修効果が「出ている」という回答は66%
新入社員研修の効果について質問したところ、「大変出ている」(6%)、「まあまあ出ている」が60%で、合わせて66%が「効果が出ている」という回答だった。
一方で、「どちらとも言えない」(31%)、「あまり出ていない」(1%)、「全く出ていない」(2%)という回答は、合計34%存在する。
新入社員研修の課題について、フリーコメントで意見を求めた。
一方的な「詰め込み型」の研修方法や、受講生の力量差やストレス耐性などにどこまで個別対応すべきか、などの問題意識が散見される。
・知識研修を中心とした集合研修が多く、消化不良感が出ている点(メーカー/1001名以上)
・双方向教育でないので、成果が「?」。成果よりも(研修を)やった実績で満足している。(メーカー/1001名以上)
・ストレス耐性が極度に下がっている傾向があるため、簡易的な業務から実地体験で慣らしていかないと、本配属部署でアレルギー反応が出やすい。(商社・流通/1001名以上)
・個人のレベルが違いすぎる(女性新入社員の方が圧倒的に男性より優秀)(サービス/301~1000名)
・採用が大学院卒~地方の工業高校まで幅がひろく、同一研修でよいものか検討が必要
(メーカー/301~1000名)
・新人側の意識や習得度合いの個人差が激しい為、研修後に安心して配属先へ送り込める迄の平準化が大変。(商社・流通/301~1000名)
【図表4】新入社員研修の効果
●大規模企業では5割が「メンター制度」を導入するも、廃止は15%。
新入社員研修を終えて職場に配属されたのち、メンター(ブラザー・シスター等)制度を実施しているかを聞いた。昨年調査では、1001名以上の大規模企業では、7割が「メンター制度(それに準ずる制度・取り組み)がある」と回答していたが、今回は54%にとどまった。一方で、「以前はメンター制度があったが今はない」と回答した企業が15%に上り、前回調査よりも7ポイント増えている。
メンター制度を実施する上での課題について、フリーコメントを求めたところ、大企業ではメンターの質と数の確保、メンター自身の負担増などの課題が多かった。
こうした課題傾向は、中堅・中小企業でも同様に多く、導入・継続の壁となっているようだ。
・メンターの異動や退職によるメンティーのモチベーション低下。(サービス/1001名以上)
・メンターの育成能力により、立ち上がりのばらつきがある。(サービス/1001名以上)
・メンターに負担が大きい事。(メーカー/1001名以上)
・メンターの人材がいない。(メーカー/1001名以上)
・メンターの質量の確保。(メーカー/1001名以上)
・要員不足(商社・流通/1001名以上)
・個人間の相性とメンターに起用する人材不足。(サービス/301~1000名)
・メンターの負担を吸収する体制が確立されていない。(情報・通信/301~1000名)
・メンターに適する人材が少ない。(メーカー/300名以下)
・メンターの質によって効果が著しく変わる。(マスコミ・コンサル/300名以下)
【図表5】配属後のメンター制度(ブラザー・シスター等)
●新入社員フォロー研修は65%が実施
新入社員フォロー研修は、全体でみると65%が実施している。
大企業では73%、中堅企業では71%が実施しているが、中小企業での実施率は56%とまだまだ低い。
【図表6】新入社員フォロー研修の実施
●「新入社員フォロー研修」実施時期は入社半年後が約半数
「新入社員フォロー研修」を実施している企業に、その時期を聞いたところ、最も多かったのは「入社半年後」で46%で約半数だった。続いて、「入社3か月後」と「入社年度末」が17%であり、この傾向は昨年調査と概ね同じである。
【図表7】新入社員フォロー研修の実施時期
●フォロー研修実施時に新入社員が抱える課題は「モチベーション維持」と「配属先での悩み/ミスマッチ」が同率トップ
新入社員フォロー研修を実施する時点で、新入社員はどのような課題を抱えているか質問したところ、「モチベーション維持」、「配属先での悩み/ミスマッチ」がともに63%でトップだった。第3位は「早期戦力化」(37%)、第4位は「自社への帰属意識」(20%)である。
特に注意したいのは、「配属先での悩み/ミスマッチ」だ。対処の時期を誤ると離職リスクにもつながりかねない。適性検査やアセスメントサービスの利用で、マッチングの精度を上げる努力をすると共に、配属後の定期的な経過チェックにも取り組む必要があるだろう。
【図表8】新入社員が抱えている課題(フォロー時)
●現場配属後、さらに複雑化する「新入社員フォロー」の課題
新入社員研修の課題では、研修内容に関する「双方向性の模索」や「平準化の弊害」などが挙げられていた。
では、「新入社員のフォロー」に関する具体的な課題についてはどうだろうか。
コメントを見ていると、現場と人事がそれぞれ期待する内容のギャップが、配属後さらに顕著になることが見受けられた。
たくさんのご意見が寄せられたが、いくつかを抜粋してご紹介したい。
・配属先で実施している(一任している)ため、内容(レベル)の精査(確認)が出来ていない。(サービス/1001名以上)
・頻度をあげたいが現場との乖離。現場で必要な習得作業を集合研修で教えることの限界。(サービス/1001名以上)
・配属先(先輩・上司)による教育方針と、人事が望む教育とのギャップ。(メーカー/1001名以上)
・新入社員研修時に学んだことと実際の現場のギャップ。(メーカー/301~1000名)
・所属された部署で抱えている課題が異なるため個別対応が必要になる。(メーカー/301~1000名)
・配属後半年ぐらいでのモチベーション維持が必要。(メーカー/301~1000名)
・新入社員の会社に対するイメージと実際とのギャップ。新入社員自身の思い込みが強い。教えてもらうことが当たり前の姿勢(受け身)であることに気付かないと苦しむ(他責思考からの脱却)。(情報・通信/301~1000名)
・入社半年後の戦力度合いに個人差があること。(商社・流通/301~1000名)
・先輩上司のフォロー時間が十分確保できているか不確定。(メーカー/300名以下)
・やる気はあるのですが、1年くらいで希望部署に行けると思っていたり、半年やって「自分には向いていない」と判断する子が多く、とにかくがむしゃらに3年間頑張ってみて欲しいということが理解されないことです。(メーカー/300名以下)
・フォロー研修を実施する上で、事前に各現場に新入社員の足りない能力についてリサーチしても、イマイチな反応しか返ってこないので、フォロー研修の内容を設定するのに困っています。(商社・流通/300名以下)
【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】人材育成(階層別研修)に関するアンケート調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2018年10月1日~10月9日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び未上場企業の人事責任者・人材育成ご担当者
有効回答:194件
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