必要な時間帯のみ、必要な労働力を提供してくれる「アルバイト・パート」は、雇用主にとって非常に都合の良い存在だった。しかし近年は、アルバイト・パートの採用も「売り手市場」である。前回の「キャリア採用」に引き続き、今回は「アルバイト・パート採用」について報告する。

●人事部門の関与は約7割

「アルバイト・パート採用」における人事部門の関与状況を調査したところ、全体では、「すべて人事部門で管轄している」(35%)、「一部支援はするものの、基本的には部門・拠点で管轄」(32%)となり、人事部門の関与は約7割となった。「すべて部門・拠点で管轄」は7%と少ない。
 企業規模別で見ると、大企業では、「一部支援はするものの、基本的には部門・拠点で管轄」(40%)が最も多く、次に「すべて人事部門で管轄している」(15%)、「すべて部門・拠点で管轄」(15%)が続いた。一方、従業員300名以下の中小企業では、「すべて人事部門で管轄している」(48%)が約半数を占めている。
 大手になるほど部門や拠点数も増えるため、アルバイト・パート採用の権限を部門・拠点に移譲する割合が増える傾向にあるようだ。

【図表1】「アルバイト・パート採用」における人事部門の関与状況

HR総研:「キャリア採用とアルバイト採用に関する調査」結果報告 vol.2

●採用計画数は「10名以下」がトップ。昨年より「やや採用増」の傾向。

アルバイト・パートの採用数はどうだろう? アンケートの結果、「10名以下」の採用がダントツで、28%を占めた。以下、「31~50名」(7%)、「11~30名」(6%)と続く。一方、「採用予定なし」は37%だった。
 これら採用計画を立てている企業について、昨年度との増減を聞いたところ、「増えている」(14%)、「ほぼ同じ」(44%)で、「減っている」(7%)となった。アルバイト・パート採用の計画を立てている企業では、「やや採用増」の傾向にあるようだ。これは、業種別でも変わらない。

【図表2】2017年度の「アルバイト・パート採用」採用数

HR総研:「キャリア採用とアルバイト採用に関する調査」結果報告 vol.2

【図表3】2017年度の「アルバイト・パート採用」採用計画数の増減

HR総研:「キャリア採用とアルバイト採用に関する調査」結果報告 vol.2

●「アルバイト・パート採用」も「売り手市場」

アルバイト・パート採用の課題で目立つのは、「応募者の数を集めたい」(43%)だ。次が「選考負荷を減らしたい」(18%)で、以下の項目も10%前後が続くので、選考母数の確保に現場がいかに苦労しているかが分かる。

【図表4】「アルバイト・パート採用」における課題

HR総研:「キャリア採用とアルバイト採用に関する調査」結果報告 vol.2

●「時給の高騰」に悩む声も

フリーコメントでは、以下の回答があった。特筆すべきは、「時給の高騰」である。厚生労働省による地域別最低賃金時給の引き上げもさることながら、日本の労働力が不足している中、景気のみが回復している現状が、アルバイト・パートの時給高騰に拍車をかけているようだ。

<大企業>
・人が集まらない。時給競争。(情報・通信)
・リゾート地のため、母数が少ない。(サービス)
・離職者が多く、採用しても人数が不足したままになる。(サービス)
・週5の勤務を望むが、なかなか難しい状況になっている。(商社・流通)

<中堅企業>
・応募者を集めること。(商社・流通)
・拠点によって応募者数のバラつきが激しく、集まらない拠点は徹底的に集まらないこと。(情報・通信)
・以前より時給や待遇の改善が進み、高騰している感がある。(メーカー)

<中小企業>
・中小企業に興味を持ってもらえない。(サービス)
・売り手市場(商社・流通)
・応募者が集まらない。時給が他と比較して安い。(メーカー)
・時給の高騰により、募集しても採用できない。(メーカー)
・質の向上を図りたいが、選考に負担(費用・労力)を掛けられない。(サービス)
・勤務体系が希望と合わない。(商社・流通)
・必要なタイミングに必要な人数を、最小限のコストで集められるかどうか。(サービス)

●募集職種は「事務職」が約半数。欠員補充のピンチヒッターか。

アルバイト・パートの募集職種では、「事務職」(45%)がトップだった。次に、「工場・倉庫・配送・物流」(18%)、「販売・接客・サービス」(15%)、「軽作業」(12%)が続く。
 従来のアルバイト・パート採用といえば、販売などの接客サービスや、工場などの現場作業員の募集が多かったが、今回の調査から、「事務職」の募集が圧倒的に多いことが分かった。
 補助的な事務職については、正社員から派遣社員へ、さらには「短時間」「短期間」で募集をかけられるアルバイト・パートへとシフトしてきている。
 一方、採用難易度が高い職種は、「工場・倉庫・配送・物流」(70%)、「販売・接客・サービス」(64%)である。「事務職」(50%)、「飲食・フード」(45%)も、約半数が「難易度が高い」と回答している。

【図表5】「アルバイト・パート採用」で募集している職種

HR総研:「キャリア採用とアルバイト採用に関する調査」結果報告 vol.2

【図表6】募集している職種の中で最も採用難易度が高いと思う職種(抜粋)

HR総研:「キャリア採用とアルバイト採用に関する調査」結果報告 vol.2

●ハローワークの利用が最多(50%)。2位は「アルバイト・パート募集サイト」(38%)

「アルバイト・パート採用」で利用している手段・サービスは、「ハローワーク」(50%)が最も多い。続いて、「アルバイト・パート募集サイト」(38%)、「従業員からの紹介」(34%)である。
 また、中堅・中小企業と比較して、大企業では、「従業員からの紹介」(47%)、「フリーペーパー」(33%)や「新聞折り込みチラシ」(33%)の利用も多かった。

【図表7】「アルバイト・パート採用」で利用している手段・サービス

HR総研:「キャリア採用とアルバイト採用に関する調査」結果報告 vol.2

●「アルバイト・パート募集サイト」に「効果あり」が7割

利用しているサービスの内、最も効果が認められたのは、「アルバイト・パート募集サイト」(71%)だった。2位は「フリーペーパー」(28%)、「ハローワーク」(28%)なので、実感の差は歴然である。

【図表8】最も効果が認められる手段・サービス

HR総研:「キャリア採用とアルバイト採用に関する調査」結果報告 vol.2

●今後も「アルバイト・パート募集サイト」の利用が高まる見込み

今後利用がより高まると思われる手段・サービスは、「アルバイト・パート募集サイト」(30%)がトップになった。2位は「従業員からの紹介」(21%)であるが、現状での効果の実感は17%と低かった。紹介による採用は、企業が欲しい人材に出会える確率が高くなるため、今後に対する期待が高いものと思われる。
 また、「ハローワーク」(17%)は、利用度が50%と最も高く、効果の実感も28%と高い。費用対効果の面からも魅力的であり、今後も継続して利用が高まる見込みである。

【図表9】今後利用がより高まると思われる手段・サービス

HR総研:「キャリア採用とアルバイト採用に関する調査」結果報告 vol.2

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】キャリア採用とアルバイト採用に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2017年11月27日から11月30日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び非上場企業の人事担当者
有効回答:176件

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