●キャリア採用計画がある企業は約8割。1割の企業は「採用予定なし」。
2017年度のキャリア採用について、採用計画数を聞いたところ、約8割の企業が計画的にキャリア採用を実施している。もっとも多いのは「10名以下」(47%)で、企業規模による差異はない。次に「11~30名」(19%)、「31~50名」(7%)と続く。「採用予定なし」は1割で、「未定」と回答した企業は13%だった。
【図表1】2017年度の「キャリア採用」採用計画数
●キャリア採用市場は、相対的に「やや積極採用」の方向か
前年度と比較したキャリア採用計画数の増減を質問したところ、「ほぼ同じ」が50%を占めた。「増えている」は29%、「減っている」は7%である。この傾向は、企業規模別でもほぼ変わらない。キャリア採用市場は、昨年よりも優秀人材の争奪戦が激しくなっているのは間違いないようだ。
【図表2】前年度と比較した「キャリア採用」計画数の増減
●採用計画数の達成率「8割未満」の企業が6割
2017年度の採用計画数に対し、11月末時点での企業の達成率はどの程度なのだろうか。 「達成した」と回答した企業はわずか14%、「8割以上」達成は17%。「今年度は採用予定なし」の企業11%を除いた、残り58%の企業は、達成率が「8割未満」であった。中小企業では達成率「2割未満」が19%に及ぶなど、採用現場の苦労がしのばれる。
【図表3】2017年度のキャリア採用計画数の達成率
●キャリア採用の目的は「欠員補充」
「キャリア採用」を実施する最も大きな目的を質問したところ、「欠員補充」(49%)がトップを占めた。続いて「増員」が32%、「自社にない知識・スキルの獲得」が15%である。
約半数の企業にとって、キャリア採用は「現状維持」のための採用のようだ。ただし、各企業を取り巻く環境が大きく変化している今、今後は「自社にない知識・スキルの獲得」のためのキャリア採用が増えていかざるを得ないだろう。自社内での育成では追い付かなければ、外から供給を考えるしかない。
【図表4】「キャリア採用」実施の最も大きな目的(全体)
●募集職種は「営業職」がトップ
募集職種について聞いたところ、1位はダントツで「営業職」(52%)となった。以下、「IT関連職」(26%)、「経理・財務」(21%)、「生産技術職」(21%)と続く。
メーカーの場合は、上位から「営業職」(51%)、「生産技術職」(44%)、「研究開発職」(34%)となっており、「IT関連職」は11%にとどまった。非メーカーの上位は、「営業職」(53%)、「IT関連職」(37%)、「経理・財務」(22%)で、全体よりも、やや「IT関連職」の割合が高い。
いずれにせよ、業種に関係なく、「営業職」のニーズが圧倒的に高いことが分かる。
【図表5】今年度の「キャリア採用」で募集している職種(全体)
●「一般社員」の募集が8割以上。大企業では「役員・執行役員」の採用も。
募集している役職では、最も多いのは「一般社員」(83%)で、以下「係長・主任クラス」(56%)、「次長・課長クラス」(30%)と続く。
大企業も同じ傾向にあるが、「次長・課長クラス」の割合が49%で、中堅・中小企業の倍近い。現場近くでのマネジメント人材に、ニーズが高いようだ。
また今回の調査では、「役員・執行役員」のキャリア採用も確認された。その中には、従業員5,000名以上の大企業も含まれる。経営のグローバル化や競争力アップが叫ばれる今日、「経営層は内部昇格する」という従来の認識を改め、変革のためにしがらみのないプロ経営者を外部から迎え入れる時期が来たのかもしれない。
【図表6】「キャリア採用」で募集している役職
●ターゲット層の応募者確保が最優先
キャリア採用における課題については、企業規模に関わらず、「ターゲット層の応募者を集めたい」(51%)がトップとなった。次が、「応募者の数を集めたい」(33%)である。
企業規模別で見ると、大企業では「選考負荷を減らしたい」(29%)、「選考辞退者を減らしたい」(23%)、「採用数の根拠を明確にしたい」(20%)などの割合が、他よりも大きい。
中堅企業では、「応募者の数を集めたい」(40%)の割合が大きく、中小企業では、「採用コストを抑えたい」(26%)が他に抜きん出ている。
【図表7】「キャリア採用」における課題(全体)
各企業が抱く課題感を、具体的に聞いてみた。
<大企業>
・ターゲット層からの応募が少ない。(メーカー)
・要求レベルが高すぎて母数が集まらない。(メーカー)
・営業職の人気がない。(メーカー)
・人材紹介会社の紹介は、数ばかりで質を伴っていないので負担が増える。(サービス)
・各事業所の責任者の採用スキルがない。地方事業所は応募者が少なく、経験することがあまりないため経験値が上がらない。(メーカー)
・職場の育成力が弱いため、未経験を育てることを前提とした採用ができない。(メーカー)
・業務内容、人物像、スキルレベル、入社後の業務イメージが不明瞭なまま、時間だけが過ぎていく。(メーカー)
・前職よりも提示年収が下がるため、内定辞退が多い。(メーカー)
<中堅企業>
・応募者数の減少および同業他社との競合。(メーカー)
・欲しい人材の母集団が集まらない。(メーカー)
・営業職の採用が難しい。(サービス)
・基本的に欠員補充での募集だが、募集背景や部署の状況で採用スペックが変動するため、紹介会社に採用要件を把握してもらうための説明が難しい。(サービス)
・求めるスキルとのマッチングが困難。(サービス)
・他社との競合による内定辞退。(サービス)
・退職者が突然出た場合にタイムリーな補充ができない。(商社・流通)
<中小企業>
・応募者がいない。(メーカー)
・中小企業には興味を持ってくれない。(サービス)
・ブランド力が弱い。(サービス)
・業務量増加に伴う、専門職の補充・増員。(メーカー)
・ニッチな職種のため、母集団が集まらない。(サービス)
・エンジニア職のキャリア採用(特にフロントエンジニア)は母集団も少ない為、縁故以外での採用は難しい。(情報・通信)
・大手企業がほとんど選考ナシで採用を決めている中で、きちんと選考して採用しようとすると辞退者が増えてしまう。候補者と会うことすら難しい。(メーカー)
・業界に対するマイナスイメージが強く、リーチがしづらい。(商社・流通)
・選考期間の短縮と、費用削減。(情報・通信)
・面接スキルのレベルが低く、スキル向上のセミナー等を受けるべき面接官が多い。(メーカー)
・リファーラル採用を導入したいが、ノウハウが不足している。(サービス)
●最も利用が多い手段・サービスは「人材紹介」。半数以上が効果を実感。
キャリア採用で最も利用が多い手段・サービスは、「人材紹介」(63%)となった。続いて、「転職ナビ」(50%)、「従業員からの紹介」(46%)、「自社ホームページ」(46%)、「ハローワーク」(43%)が並ぶ。
「新聞広告」(5%)と「SNS」(2%)は、ほとんど利用がない。
企業規模別で見ると、大企業では「転職フェア」(29%)と「転職者データベース」(17%)の割合が大きい。中小企業では「従業員からの紹介」(53%)、「ハローワーク」(49%)の割合が大きく、採用にかける経費の差異が感じられる。
また、効果を実感する手段・サービスとしても「人材紹介」(56%)、「転職ナビ」(45%)が上位を占める。「従業員からの紹介」(15%)と「ハローワーク」(15%)は、利用しやすいが効果の実感が少ない。ただ、「リファーラル採用」と言えるほど、「従業員からの紹介」をちゃんとした仕組み・制度として運用できている企業は、まだまだ少ないのではないだろうか。
【図表8】「キャリア採用」で利用している手段・サービス(全体)
【図表9】最も効果が認められる手段・サービス(各サービス利用者を分母とする)
●大企業では「SNS」に期待が高まる
今後利用が高まると思われる「キャリア採用」の手段・サービスでも、「人材紹介」(39%)、「転職ナビ」(31%)、「従業員からの紹介」(25%)が上位となった。
特筆すべきは、利用率がもっとも低い「SNS」に期待する大企業が、23%に上っていることだ。「求職者と直接コミュニケーションを取りたい」という企業のニーズが伺える。
【図表10】今後利用が高まると思われる「キャリア採用」の手段・サービス
●webサービスの2強は、「リクナビNEXT」と「マイナビ転職」
「キャリア採用」で利用しているwebサービスで目立つのは、「リクナビNEXT」(36%)、「マイナビ転職」(33%)の2強である。この後に、「DODA」(20%)、「[en]社会人の転職情報」(16%)、「indeed」(13%)が続く。近年、米国の採用現場で利用されるようになってきた「LinkedIn」は、0%という結果となった。
利用している中で、最も効果を感じるwebサービスは、「[en]社会人の転職情報」(32%)、「リクナビNEXT」(31%)、「DODA」(29%)、「マイナビ転職」(27%)となった。
【図表11】「キャリア採用」で利用しているwebサービス(複数選択可)
【図表12】最も効果が認められるwebサービス(各サービス利用者を分母とする)
●webサービスにかける年間予算は、企業規模に比例
webサービスにかける年間予算は、企業規模が大きいほど多い。大企業では「100~300万円未満」(25%)、「500~1000万円未満」(11%)で、「1000万円以上」も25%を占めている。中には「1億円以上」をかけている企業もあった。一方、中小企業では、「100~300万円未満」(19%)、「50~100万円未満」(15%)で、「1000万円以上」はゼロである。中堅企業でも「3000万円以上」の予算を持つ企業はない。
【図表13】利用しているwebサービス全ての年間予算
●人材紹介会社は、「2~3社利用」が最も多い
人材紹介会社の利用状況を調べてみると、「2~3社」(31%)の利用が一番多い。ただし業種による違いがあり、メーカーでは「4~5社」(37%)、非メーカーでは「2~3社」(37%)が最も多かった。
専門領域・スキルなど、求める人材要件が狭くなりがちなエンジニア採用では、窓口を多く持ちたいと考えるのも、もっともなことである。ただし、窓口が増えてくると各社とのコミュニケーションが希薄となり、かえって人材要件が正しく伝わらなくなってしまうこともあるので、注意が必要である。
【図表14】利用している人材紹介会社の数
●「人材紹介」で利用する「募集職種」は、業種によって異なる傾向
人材紹介会社に依頼する「募集職種」を見ると、全体では「営業職」(48%)、「IT関連職」(27%)が多い。
メーカーでは、「営業職」(50%)、「研究開発職」「生産技術者」(35%)の割合が大きく、非メーカーでは、「営業職」(47%)、「IT技術職」(36%)、「経理・財務」(26%)、「人事・総務」(23%)の要望が目立つ。
【図表15】「人材紹介」を利用する募集職種(全体)
【図表16】「人材紹介」を利用する募集職種(メーカー)
【図表17】「人材紹介」を利用する募集職種(非メーカー)
●人材紹介会社の選定基準は「レスポンスの良さ」
人材紹介会社を選ぶ際に、企業はどこに選定基準を置いているのだろう。結果は「レスポンスの良さ」(42%)、「取引実績企業」(35%)、「営業担当者」(32%)、「登録者数」(31%)が上位を占めた。
キャリア採用の目的として、「欠員補充」がトップであることを考えると、「スピード」が求められるのは理解できる。ただ、ここでいう「レスポンス」には、スピードだけでなく、コミュニケーション頻度であったり、自社の理解度なども含まれるものと思われる。
【図表18】人材紹介会社を選定する際の基準
【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】キャリア採用とアルバイト採用に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2017年11月27日から11月30日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び非上場企業の人事担当者
有効回答:176件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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