今回は社内体制や連携部署、また必要な情報などについて、皆様の状況やご意見をお聞きした。
「専門のプロジェクト/チームが立ち上がり、取り組んでいる(取り組んだ)」のは19%、「既存の部門部署が適宜担当する形で取り組んでいる(取り組んだ)」が29%で、合わせて48%となった。
約半数の企業が専門のチームまたは担当者を決め、体制を整えてすでに取り組みを始めていることがわかった。
ではワークスタイル変革(働き方改革)への取り組み課題として、人事の皆様が重要だと考えているのは何だろうか。
第1位は、「残業時間、総労働時間の抑制・上限設定」で61%。
第2位は「雇用形態の多様化(多様な人材維持・確保)」で53%。
第3位は、政府が掲げる働き方改革のテーマには入っていないものの、いつも人事が気にかけている○○。51%が課題としてあげているものとは?
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専門チームや担当者により「ワークスタイル変革(働き方改革)」に取り組んでいるのは約半数
政府が主導する「働き方改革」には、11のテーマがある。今回はそれらのテーマのうち、長時間労働是正・テレワーク・育児や介護と仕事の両立といったいわゆる「ワークスタイル変革」にあたるものについて、人事の皆様の状況や意見を聞いた。
最初に、「ワークスタイル変革」に関して、どのような体制で取り組んでいるかについて質問した。「専門のプロジェクト/チームが立ち上がり、取り組んでいる(取り組んだ)」は19%、「既存の部門部署が適宜担当する形で取り組んでいる(取り組んだ)」が29%、合計で48%となり、約半数が体制を整えて取り組んでいることがわかった。
「『ワークスタイル変革』というテーマでの課題意識はあり、今後取り組んでいく予定」と今後予定している企業が34%である。すでに取り組んでいる企業と今後予定している企業を合わせると8割を超えている。昨年から国を挙げて始まった働き方改革であるが、2017年の約半年を経てようやく普及してきた、と言えるだろう。
一方、 「『ワークスタイル変革』という言葉やテーマでの自社の課題意識はない。(自社にはなじまない)」という企業は11%で約1割である。
[図表1]ワークスタイル変革(働き方改革)に関する取り組み(体制・程度)
90%の人事が「ワークスタイル変革を進める必要性あり」と回答
「ワークスタイル変革(働き方改革)」を進める必要があるかについて、回答者個人の意見を聞いた。
「進める必要がある」が54%、「どちらかといえば進める必要がある」が36%で、合計で90%が必要ありと回答した。
「進める必要がある」と回答した人はその理由として、以下のようなコメントをあげている。
・社会の変化、社員のニーズの変化により、多様な働き方を採用する必要性は今後も増していくと思われる為(1,001名以上、 メーカー)
・業界特性による恒常的な長時間労働、労働集約的な業務形態の抜本的見直しが必要。(1,001名以上、運輸・倉庫)
・より良い企業として、社会の一員としても働き方改革を進める必要がある。また、仕事だけでなく、プライベートの部分を充実させるためにも働き方改革は絶対に必要。(301~500名、鉄鋼・金属)
企業として社会や環境への対応だけでなく、働き手として、人としての生き方にもかかわる取り組みだけに、人事の皆様の熱い思いを感じる。
「進める必要がある」以上に、逼迫した状況を示す声もある。
・昨今の「働き方改革」で言われている内容に過去取り組んだことがあるが、掛け声倒れになった。それでもなんとかやってこられたが、これからは違う。今後の人口減少を考えると、今実行できなければ、近い将来市場から退場するしかなくなる。(1,001名以上、建築・土木)
・長時間労働が構造的に発生しやすい業界なので、労務コンプライアンス違反による社会的制裁を受けるリスクが高いためです。(501~1,000名、情報・通信)
・他業種より労働環境が悪い業界なので、積極的に労働環境を改善し、人手不足の解消に努めるため。(301~500名、サービス)
・自己都合退職者の増加、不平不満を持つ社員が多い(活き活きと働いていない)こと。
また他社が取り組む中で当社が変わらないと、相対的に優位性が下がり、良い人材が採用できなくなるから。(1,001名以上、食品)
特に労働人口減少に伴う採用難については、どの企業も事の深刻さをひしひしと感じているようだ。「ワークスタイル変革」が進まないと、企業ブランドにおいてネガティブな印象を与えかねないので、採用のためにも取り組みが必須と言えよう。
[図表2]ワークスタイル変革(働き方改革)を進める必要があるか(個人意見)
「ワークスタイル変革」における重要な課題は、残業抑制・雇用多様化・コミュニケーション
次に、ワークスタイル変革における取り組み課題で、重要だと思うものを選んでもらった(複数選択可)。
第1位は「残業時間、総労働時間の抑制・上限設定」61%、第2位は「雇用形態の多様化(多様な人材維持・確保)」53%、そして第3位は「コミュニケーション活性化」51%となった。
「コミュニケーション活性化」自体は、政府の「働き方改革」のテーマとなっているわけではない。しかしワークスタイルを変革していく上で社内コミュニケーションをどうやって活性化させていくかは、人事の皆様が重要だと考えていることがわかる。例えば、社外や自宅で仕事をするテレワークを推進するには、職場にいなくても一緒に仕事をしているという感覚を身につけることが必要になってくる。管理職は離れて働く部下の業務管理や評価を、職場にいる部下と分け隔てなく行うべきだろう。そうした新しいスタイルのコミュニケーションをどのように促進していくべきか課題となってくる。また多様な雇用形態の人が一緒に働く上でも、お互いの理解が必要になるため、コミュニケーションを活性化していかなければならない。
「時差・時短勤務の導入」(38%)、「テレワーク・在宅勤務の促進」(37%)、「モバイル端末(PC・タブレット)の業務利用拡大」(36%)については、1/3以上が課題であるとしている。
[図表3]ワークスタイル変革(働き方改革)における重要な課題
参考になる事例情報は「変革後の数値的な効果」が第1位
「ワークスタイル変革(働き方改革)に取り組む際、これまでの事例情報の中でも、どのような事例の情報が参考になると思いますか。参考になると思われるものをいくつでもお知らせください(複数選択可)」という質問では、「変革後の数値的な効果(労働時間削減等)」が60%で第1位となった。変革後、どのように数値が変わったのかについては、一番気になるところだろう。
続いて「変革後の現場社員の反応」(56%)、「変革した人事制度の設計」(54%)、「業務に対する評価基準」(53%)がほぼ同率で過半数である。
「テレワーク、在宅勤務等のルール設定」(42%)についても4割が参考になると回答している。
[図表4]ワークスタイル変革(働き方改革)を進めるで参考になる事例情報
人事部門が連携すべきは「経営層」が82%で第1位、第2位は「事業部門の管理職」
ワークスタイル変革(働き方改革)の推進において、人事部門が、今後より連携を強化していく必要がある部門・階層について聞いた(複数選択可)。第1位は「経営層」で82%が選択した。ワークススタイル変革(働き方改革)は、意識や企業文化を変えていくことでもある。その実行には、経営層からの強いメッセージやトップダウンが必要となるため、経営層との連携は必須だと考えているのだろう。
続いては、「事業部門の管理職層」で62%である。社員の働き方を変えていくためには、事業部門の管理職層が新しい働き方を理解し、職場に取り入れていくことになる。現場のマネジメントと連携して、改革を進めていきたい意向だ。
第3位は「情報システム部門」で39%、約4割が選択した。ワークスタイル変革のためには、コミュニケーションのための効果的なシステムの導入や、テレワークのためのモバイルデバイスの活用など、人事と情報システム部門とが蜜に連携して実現していくタスクが発生する。
経済産業省によると、日本の労働生産性が欧米と比較して低水準である原因の一つとしてIT投資の不足があげられている(※)。人事が企業のワークスタイル変革を通じて企業業績向上に寄与するためには、情報システム部門と連携して、生産性の向上・稼ぐ力の強化を実現することが重要である。
※「攻めのIT経営銘柄」の選定方法に関する説明会資料(平成26年12月19日 経済産業省商務情報政策局 )より
[図表5]ワークスタイル変革(働き方改革)において人事が連携強化すべき部門・階層
【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年6月26日~6月30日
有効回答:190件(1,001名以上:25%、301~1,000名:29%、300名以下:45%)
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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