「テーマ別研修」第2弾は、「キャリア研修」「メンタルヘルス研修」「ハラスメント研修」に関する調査結果のご報告です。
「キャリア研修」は企業規模により実施率が異なっており、大規模企業ほど実施率が高い状況です。若手向けの内容では「キャリアの考え方」や「強み・弱みの把握」が半数以上であり、シニア向けでは「ライフプラン」がメインとなっています。

企業規模で異なるキャリア研修の「若手向け」「中堅向け」「シニア向け」の実施率

キャリア研修には「若手向け」「中堅向け」「シニア向け」と年代によって異なるタイプがある。その年代によってキャリア研修の狙いは異なっている。
 いずれのタイプのキャリア研修も実施していない企業は全体の52%に達している。ただ規模別で数字は大きく異なり、いずれのキャリア研修もしていないのは「1,001名以上」では38%と少ないが、「301名~1,000名」では62%、「300名以下」では54%と過半数を占めている。
 「1,001名以上」では、「若手向け」「中堅向け」「シニア向け」の3タイプで高い実施率だが、「301名~1,000名」では「若手向け」が少なく(15%)、「300名以下」では「シニア向け」が少ない(2%)。

[図表1]「キャリア研修」の実施(全体・規模別)

HR総研:人材育成「テーマ別研修」に関する調査報告2

若手向けキャリア研修の課題は効果測定

若手向けキャリア研修の内容でもっとも多いのは「強み・弱みの把握、自己理解」で73%と圧倒的に多い。新卒の就活なら「自己分析」に相当し、まず「自分」の理解から始めると言うことだ。続いて「キャリアの考え方」(56%)、「キャリアプランの作成」(46%)があり、これは「何になりたいか」「何になれるか」を明らかにするものだ。そして「スキル・能力の棚卸」(40%)が第4位だ。

 若手向けキャリア研修の目的は、キャリアプランを持つことで成長を加速させることだ。「ロールモデルをどう具体的に形成し、モチベーションアップにつなげるか」(メーカー、1,001名以上)ということだ。しかし実際にはそうならないことが多い。

「教育体系を含め、社員個人が自己のキャリアプランを描ける材料を会社が十分に提示できていない」(サービス、301~1,000名)という声がある。

 ある程度の成果は感じられるものの、効果の測定が難しいという声はとても多い。

「研修内容そのものは前向きに捉え、自己のキャリアプラン作成までできていると思うが、その後の継続的な実行およびローリング作業等について個人差があること。各マネジャーに任せざるをえないため、人事として有効な手立てがない」(メーカー、300名以下)
「即効果が現れるものではないため、効果測定ができていない。」(情報・通信、301~1,000名)、「研修後の実践における効果フォロー」(メーカー、1,001名以上)

[図版2]若手向けキャリア研修の内容(全体)

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中堅向けキャリア研修の内容トップは「キャリアの考え方」

中堅向けキャリア研修の内容は、若手向けキャリア研修と似ているが、順位がだいぶ違う。中堅向けでもっとも多いのは「キャリアの考え方」(56%)、続いて「強み・弱みの把握、自己理解」(55%)、「スキル・能力の棚卸」(51%)、「キャリアプランの作成」(42%)だ。
 若手向けの順位は「強み・弱みの把握、自己理解」→「キャリアの考え方」→「キャリアプランの作成」→「スキル・能力の棚卸」である。

 中堅向けキャリア研修として人事が挙げているのは、
「長期的視点に立ったキャリアプランニングを構築できる力を育む」(メーカー、1,001名以上)
「パワーシフトを想定した研修の場合は、環境変化をどう次のキャリア(スキルを含む)に移行させていくか、具体的な落とし込みができるか、受講を通じて本人がコミットできるプロセスにできるかが課題と考えます」(メーカー、1,001名以上)
「中堅向けの研修は、部下の評価に関するものが中心。今後はさらに、育成と管理といった部分の充実を図りたいと考えている」(マスコミ・コンサル、301~1,000名)

ただしすべての企業で順調とは限らない。

「実施していきたいと考えているが、どこから手をつけるべきか苦慮している」(運輸・不動産・エネルギー、300名以下)
「中堅社員は仕事に対するモチベーションの差が大きいため、どの様にキャリア研修を組み立てるかイメージが湧かない」(運輸・不動産・エネルギー、300名以下)

という悩みもある。

[図表3]中堅向けキャリア研修の内容

本人のライフプランに重きを置くシニア向けキャリア研修

シニア向けキャリア研修は、若手向けとは目的が異なり、内容も変わってくる。
 もっとも多いのは「ライフプラン設計(お金・仕事・家族・プライベートを含む)」で56%。続いてセカンドキャリア(退職後)計画」(53%)、「キャリアの考え方」(47%)、「過去の業務実績の棚卸」(47%)だ。若手向けと中堅向けでは、研修の目的が社員の戦力強化にあったが、シニア向けでは本人のこれからのライフプランに重きが置かれている。意見をいくつか紹介しておこう。

「50代以降のキャリアをどう描けるかをできる限り早い段階で考えてもらう。」(メーカー、1,001名以上)
「役職定年や再雇用嘱託者の増加が今後の課題となる。会社と従業員双方が努力すべき課題とその解決をより前進させるため、処遇、40歳50歳時のビジョン転換等のプログラムを検討したいと思っている。」(メーカー、1,001名以上)
「実施する時期(年齢)の設定が難しい(早すぎても、遅すぎても受講者から文句がでる)」(メーカー、301~1,000名)

[図表4]シニア向けキャリア研修の内容(全体)

メンタルヘルス研修の実施率は大手で81%、中小で26%と大きな差がある

「健康経営」では社員が心身両面で健康な状態で働くことを目指す。肉体面の健康管理は、労働時間も健康状態も把握できる。しかし心の健康は見えにくい。そこで心の健康管理を社員教育の一環に取り入れることが多くなってきている。それがメンタルヘルス研修だ。
 実施状況について聞いたところ、49%の企業が「実施している」と答え、51%が「実施していない」と回答している。昨年の調査では実施企業は45%だったから4%増である。
 実施率は企業規模別で大きな違いがあり、「1,001名以上」では81%が実施、「301名~1,000名」では55%が実施なのに対し、「300名以下」は26%にとどまっており、大手の3分の1、中堅の半分に過ぎない。

[図表5]「メンタルヘルス研修」の実施(企業規模別)

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メンタルヘルス研修の内容は基礎知識、ストレスチェック、ラインケア

メンタルヘルス研修の内容だが、もっとも多いのは「メンタルヘルスの基礎知識」(95%)だ。心の健康について学校で学ぶ人は少ないので、基礎知識から教えているようだ。
続いて「ストレスチェック」(60%)。実際にテストをし、自分のストレス度を知ることでメンタルヘルスを理解させようというものだ。
3番目は「ラインケアの必要性」(58%)。管理職が部下に対して行うケアの重要性を教えている。
4番目は「メンタルヘルス不調の発見の仕方」(52%)だ。過労による自殺が報じられるが、上司が部下のメンタルヘルス不調を見抜けなかったことも原因のひとつだろう。そして5番目は「セルフケアスキル」(49%)。これは、いかにストレスと上手に付き合うかのスキルである。

 研修の内容を人事のフリーコメントから紹介しよう。
「管理職についてはラインケア研修。一般社員については、セルフケア研修」(メーカー、301~1,000名)
「ストレスチェックは、全員実施。当初は、マネージャーに対し集合研修を行い指導していた。最近は、新人教育にも導入し「心と体の健康」について講義を行っている。」(メーカー、1,001名以上)
「ストレスを感じている社員を見抜くため、普段から意識しておくこと、本人からの情報収集能力向上に必要な考え方を学ぶ」(情報・通信、301~1,000名)
「実際に私たちが感じるストレスをわかりやすく説明し、ストレス軽減法の説明等を行っています」(商社・流通、300名以下)
「ほぼ一般的な内容。特に上司においては、復職支援を行い、再びメンタルダウンしないような関わり合いについて、丁寧に指導を行う」(情報・通信、1,001名以上)

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ハラスメント研修の実施率は約4割

ハラスメントにはさまざまな種類がある。1990年代までのハラスメントはセクハラ、2000年代になってパワハラが問題視されるようになり、女性活躍推進が政策になった安倍政権ではマタハラという言葉も使われるようになった。いまではハラスメントへの備えは職場の常識だ。
 ではハラスメント研修の実施率はどのくらいあるのだろうか。意外に少なく「実施している」と答えた企業は41%。企業規模が大きいと実施率は高く、「1,001名以上」では64%、「301名~1,000名」では51%なのに対し、「300名以下」では20%。規模が小さいと実施率は極端に低い。

[図表7]ハラスメント研修の実施(全体/規模別)

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もっとも多いのは「パワハラへの認識」(95%)

ハラスメント研修の内容でもっとも多いのは、「パワハラへの認識」(95%)だった。企業でのハラスメントでは上下の力関係から生まれるパワハラが問題になるからだ。
続いて多いのが「セクハラへの認識」(88%)だ。パラハラ、セクハラへの認識を深めるハラスメント研修が主流である。
3番目は「パワハラの判断基準・定義」(80%)、4番目は「セクハラの判断基準・定義」(73%)だ。何がパワハラやセクハラになるのかという基準や定義。ただ実際には絶対的な基準は存在しないから難しい。
5番目は「ハラスメント防止策」(63%)、そして6番目が「マタハラへの認識」(48%)だ。
 ハラスメントは、ハラスメントを受ける・受けた立場でないと、それがハラスメントであるとは気づきにくい。「こういうケースがハラスメントになる」ということを知識として得るだけでも、ハラスメントに対しての注意力が向上するだろう。

 実際のハラスメント研修の内容を具体的に紹介しよう。
「時代背景を説明して、言動上の着意事項について教育」(サービス、1001名以上)
「どういうケースがセクハラに当たるか?相手の捉え方が問題となること。知らず知らずにパワハラをしているという気付きを与えること」(メーカー、1,001名以上)
「セクハラについては、仕事を行ううえで、性的な発言が不必要だということが大前提にあるという事。パワハラについては、適切な業務指導とハラスメントの境界等の認識を持ってもらう内容」(サービス、301~1,000名)
「事前のアンケートで、参加者が実際に「これはパワハラかも」と思ったことに対し、講師からの判定や、相手の考え方について解釈を交え、座学中心の研修を行った」(運輸・不動産・エネルギー、300名以下)

[図表8 ハラスメント研修の内容]

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【調査概要】

調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年3月8日~3月21日
有効回答:195件(1,001名以上:28%、301~1,000名:28%、300名以下:44%)

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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