過半数の企業がインターンシップを実施
学生のキャリア支援という本来の目的を離れて、もはや自社の新卒採用施策の1つとして年々実施する企業が増え続けるインターンシップ。昨年夏から3月までのインターンシップ実施企業は、今回から始めた企業16%を含めると55%と、全体の過半数の企業で実施されたことが判明した。
前年実施したものの今年は実施していない企業は3%のみ。この中には昨年の夏は2016年卒採用の活動が継続しており、インターンシップの受け入れまで手が回らなかった企業もあるものと思われる。
【図表1】2017年卒採用を意識したインターンシップの実施状況(全体)
大手企業の8割がインターンシップを実施
インターンシップの実施状況を企業規模別に見てみると、大企業では79%の企業が実施している。中堅企業で56%、中小企業でも44%の企業が実施している。大企業ではこれまでも実施していた企業が多く、今回から始めた企業は5%に過ぎないが、中堅企業では20%、中小企業では17%の企業が今回から始めたという。中小企業では、実施した企業の4割近くが今回から始めている。広報解禁の3月からでは企業認知、動機づけの面で出遅れを取るとの思いが強くなっている。
【図表2】2017年卒採用を意識したインターンシップの実施状況(企業規模別)
インターンシップの主力は「1週間」から「1Day」へ
実施したインターンシップの期間で比べてみたい。かつては、経団連よるインターンシップの定義が「5日間以上」とされたことから、「1週間以上」のインターンシップが最も多かったが、採用広報解禁日が12月から3月に変更となった2016年新卒採用から状況が変わった。できるだけ多くの学生との接点を持つことを狙った「1日」や「半日」タイプのインターンシップ(1Dayインターンシップ)が急増したのである。現在の経団連の指針においても、その手引きにおいて、インターンシップは「5日間以上」とされているものの、大手企業の中にも「5日間以上」と併せて1Dayタイプを実施する企業が少なくない。
【図表3】インターンシップのタイプ(全体)
今年もインターンシップの実施企業数は「2月」が「8月」を抜く
これまでインターンシップの実施時期としては、「8月」「9月」のサマーインターンシップが主流であったが、採用広報解禁日が12月から3月に変更となった2016年新卒採用からは、解禁日直前の「2月」に実施する企業が続出した。サマーインターンシップでは時期的に準備が間に合わない企業もあるが、サマーインターンシップ実施企業の中にも「2月」に実施する企業がある。
今年の状況を見てみると、「8月」が43%なのに対して、「2月」は44%とわずかではあるが上回る結果となった。大手企業に限れば6割以上の企業が「2月」に実施している。中堅・中小企業ではメーカーと非メーカーで傾向が異なる。メーカーでは、中堅企業21%、中小企業15%と実施率が高くないが、非メーカーでは中堅企業60%、中小企業でも45%と極めて高い。
【図表4】インターンシップの実施時期(全体)
6割以上の企業がインターンシップを選考と結びつけている
インターンシップと選考の関係を聞いたところ、はっきりと「選考と結びつけている」という企業が35%、直接結びつけてはいないが「優秀な学生は考慮する」とする企業が26%、併せると6割以上の企業が何らか選考につなげているという。
「考慮する」の内容を聞いてみると、「二次試験に進める」「書類選考の免除」「自由応募とは別枠で対応」「定期的な連絡」「アルバイト等での登用」「面接を軽減」「グループで食事」等の対応がされているようである。
【図表5】インターンシップと選考の関係
3割以上の企業でプレエントリーが前年よりも少ない
3月末時点でのプレエントリーの状況では、51%の企業が「前年並み」と回答するものの、「前年よりも多い」とする企業は16%なのに対して、「前年よりも少ない」とする企業は33%にも及ぶ。「前年よりも3割以上少ない」企業が16%ある。
「前年よりも多い」企業の内訳をみると、中には「2倍以上」「3倍以上」の企業がそれぞれ2%ある。企業の人気がさらに二極化している様子がわかる。
【図表6】プレエントリーの対前年同期比(全体)
プレエントリーの状況を企業規模別にみると、「前年よりも少ない」企業の割合は大手企業で最も少なく、中堅・中小企業が35~36%なのに対して、25%にとどまる。ただし、「3割以上少ない」企業の割合は、大手企業が19%で最も多い。学生の大手企業志向がうかがえる一方、大手企業の中でも人気・不人気が分かれている。
【図表7】プレエントリーの対前年同期比(企業規模別)
6割の企業がエントリーシートを導入
エントリーシートの導入状況を見てみると、全体では「webエントリーシート」32%、「紙エントリーシート」28%で、「webエントリーシート」の利用企業の方が多くなっている。
エントリーシートによる書類選考の有無では、エントリーシート導入企業の53%が「選考あり」となっている。「紙エントリーシート」利用企業では、「選考あり」と「選考なし」は同数となっている。
【図表8】エントリーシートの導入状況(全体)
大手では3分の2の企業が「webエントリーシート」を利用
企業規模別に見てみると、大手企業でのエントリーシート導入割合は83%で、「webエントリーシート」の利用が67%にも達し、「紙エントリーシート」利用企業は17%にとどまる。エントリー数が多い企業は、「紙エントリーシート」での対応よりも、「webエントリーシート」の方が効率的なのであろう。
中堅企業でのエントリーシート導入率は65%、中小企業では48%と半数以下である。また、「webエントリーシート」導入企業は、中堅企業で23%、中小企業でも25%にとどまり、大手企業の67%とは大きく開きがある。
【図表9】エントリーシートの導入状況(企業規模別)
エントリーシートの最終締切は「4月」が最多
エントリーシート導入企業に締切時期を聞いてみた。複数回の締切を設定している場合には、最終締切を答えてもらっている。それによると、「7月以降」までエントリーシートの受付をしている企業が27%ある。企業規模別にみると、中小企業で33%と最も高くなっており、もともと採用活動の長期戦を覚悟しての設定ということなのであろう。
締切時期として最も多いのは「4月」の27%で、続いて「5月」19%、「3月」17%となっている。中小企業の中には、採用広報解禁前にエントリーシートを締め切っている企業が1割以上もあるのには驚く。
【図表10】エントリーシートの締切時期
【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の新卒採用担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2016年3月23日~3月31日
有効回答:215社(1001名以上:42社、301~1000名:69社、300名以下:104社)
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