「アサーション」とはコミュニケーションスキルの1つで、「人は誰でも自分の意思や要求を表明する権利がある」との立場に基づく適切な自己表現のことです。
最近では企業や学校など様々な場面でアサーション・トレーニングが行われており、トレーニングを通じて、お互いを尊重しながら率直に自己表現できるようになることを目指します。 アサーションの観点から望ましい対人関係のあり方とは、相互的な関係であり、これは「相手に気兼ねし自分のことを後回しにする」タイプや「自分のことばかり考えて相手のことを顧みない」といったタイプの一方向的な対人関係とは異なります。
アサーションの考え方とトレーニング方法は1950年代のアメリカで行動療法と呼ばれる心理療法の中から生まれました。その後、対人関係に悩む人のためのカウンセリングに取り入れられ、60~70年代には「人権拡張」「差別撤廃」運動において、それまで言動を圧迫され続けていた人達に大きな勇気を与えました。アメリカでその理論を学んだ平木典子氏によって80年代に日本へ紹介され、日本の風土にあった方法で実践を行っています。
アサーションの理論では、コミュニケーションを以下3つタイプに大別できるとされています。その3つとは、アグレッシブ(攻撃的)、ノンアサーティブ(非主張的)、アサーティブです。
アグレッシブな方法とは、自分のことを中心に考え、相手のことはまったく考えず、自身の考えを主張するやり方です。自分が正しいという前提が強くあり、理由や言い分など聞く余地もなく頭ごなしに叱責をするような表現です。
ノンアサーティブな方法とは、自分の意見や感情は押し殺し、相手に合わせるようなやり方です。自分に対して自身が持てず、自分を後回しにして周りの人のことを考えようとする傾向にあり、それが何よりも相手に対する思いやりと信じている状態から生まれることが多いといえます。
アサーティブな方法とは、自分の気持ちや考えを相手に伝えるが、相手のことも配慮し、自分も相手も大切にしたやり方です。お互いの意見に賛同できず、意見が食い違ったときに、攻撃的に相手を打ち負かしたり、非主張的に相手に合わせたりするのではなく、お互いが歩み寄って一番いい妥協点を探ることがアサーティブなあり方であると言えます。
これらの3つのタイプを知ることは日頃のコミュニケーションを振り返る上で役に立ちます。私たちは、人との関わり合いの中で、感情的・攻撃的になって後味の悪い思いをしてしまったり、反対に不本意に自分を押し殺して後悔してしまうことが多々ありますが、アサーションの考え方を知り、実際に体験することにより、他者との違いを知り、相手のその人らしさを受け入れることは、ありのままの自分を大切に感じることにもつながります。