「リテンション」とは、【retention】と書き、保持・維持といった意味です。人事で使う場合は、「人材の確保」、マーケティングで使われる場合は、「既存顧客維持」といった意味になります。
人事用語としては、企業にとって優秀な人材を自社に確保しておくためのさまざまな施策のことを言い、報酬や福利厚生などの金銭関係だけではなく、働きやすい環境づくりやワークライフバランスの推進などが求められています。
欧米諸国では、優秀人材の定着のために、人事報酬制度の見直しや、職場でのメンターなどによるキャリア支援活動が行われていますが、日本では、終身雇用制度の崩壊や、団塊の世代の大量退職、少子高齢化や急速なグローバル化によって、人材獲得競争が激化し、人材の流動化が激しく進んでいます。
日本では、柔軟に給与や賞与を変更できないことや、それについて、企業も社員もなじんでいないことから、組織風土や、個人のライフスタイルに合致した勤務環境、自身が成長するキャリア形成の支援など、仕事にもやりがいがあり、専門的スキルの向上、自己成長、そしてワークライフバランスの実現など、金銭的ではない非金銭報酬を重要視する企業が増えています。
リテンションを金銭的報酬のみで行ってしまうと、多くの成果を上げる優秀な社員は、すぐに高い報酬が得られるようになります。しかし、日本において、拡大解釈された成果報酬と、単に高報酬だけでは、社員はすぐに息切れしてしまい、人材の流出をふせげなかった企業が多くありました。
この場合、金銭よりも精神的な報酬のほうが、社員はやりがいや自己成長を感じるので効果的です。ルーティンワークが多い社員には、「学びの場」を与え、知的刺激と業務に役立つ意識を醸成したり、公募制度での希望職種への異動や、キャリア・プラン形成の相談制度、また、社員同士の投票による表彰制度などで、事務などの目立たない仕事を着実にこなしている社員に光をあて、モチベーションアップを狙う企業も増えてきています。
また、在宅勤務やフレックスタイム、育児休暇制度の充実によるワークライフバランスの実現はもちろんのこと、組織の風通しをよくし、団結力・企業理念の意識付けを明確に行うために、社員が自主的にプロジェクトや議論に取り組めるような環境づくりや、濃密なコミュニケーションがとれるよう、一定のタイミングで、山登りなどの非日常的な活動にチームで取り組み、その振り返りを行う企業もあります。
これらの施策を、段階的に取り入れ、具体的かつ継続的に行うことで、会社に対する帰属意識を高め、優秀な人材の確保につながります。