「ケイパビリティ(Capability、直訳すると、「能力」「才能」「素質」「手腕」を意味する)」とは、企業成長の原動力となる組織的能力や強みのことを指し、経営戦略を構成する上で重要な概念として考えられています。

従来の戦略では、取り扱う商品をその市場性や価値といった外的な側面によって競争優位性を持たせることを意味してきました。ケイパビリティを活用した戦略では、内的な側面である組織としての強さを武器に優位性を創出します。

ケイパビリティでは、資本や財産権、技術や設備といった資産に依拠せず、それらを活かし、創造することを重要視します。つまり、ケイパビリティは「能力」であって、「資産」ではないということです。例えていうと、自社が所有する油田という資産に依存する企業の戦略と、新規油田の発見や開発能力の向上に力を入れる戦略では、後者のほうがケイパビリティを汲んだ成長戦略であることは明白です。ケイパビリティは企業が独自に持つ、競争を勝ち抜くための決定的な強みです。

よって、企業の数だけ多様性に富んでいます。同業界の企業であっても、市場で勝つために必要なケイパビリティは必ずしも同じとは限りません。コンピューター市場で競合するアップル社とデル社はいずれも異なったケイパビリティで成功を収めました。アップル社は、商品とサービスに対する徹底的な革新や、人とテクノロジーの関係性についての深い理解と新しい生活スタイルの創造が大きな勝因です。これに対するデル社は、スピーディーな納品や商品の低価格化、質の高いカスタマーサービスの提供で成功しました。市場が同じであっても勝つための攻略ポイントが異なるのが見て取れます。

上記の点から明らかなように、企業に必要なケイパビリティは市場の力学によって決められるのではなく、それぞれの企業がそれぞれの市場でどのような役割を演じ、どのように成長していくことを選択するかに大きく起因します。企業が独自のケイパビリティを見極めるために必要なポイントとして、

第一に市場のニーズに合致したものであることが大前提です。その市場が常に変化するものであるということも念頭に置いて日々見直す必要があります。
第二に他社に差をつけて競争優位性をもたらすものであることです。どれだけ優秀な能力を持っていたとしても、それが競合他社にも既に備わっているものであれば、差をつけて成功する要因とは成りえないからです。

こうして企業が設定した独自のケイパビリティを最大限に活用し、競争優位を構築するために立てる戦略を、ケイパビリティ・ベースド・ストラテジー(Capability based strategy)といいます。