「未払い残業代」とは、法定労働時間である1日8時間、1週間で40時間(労働基準法32条1項,2項)を超える超過労働に対して支払われるべき時間外割増賃金が支払われてないか、支払われていても不当に低い場合の賃金債権のことをいいます。
この時間外割増賃金のことを一般的に「残業代」と呼んでおり、企業が従業員に残業代を支払うことは労働基準法により定められています。
この取り決めは、会社の規模や、従業員の雇用形態(正社員、派遣社員、アルバイト、パート等)に関係なく一律に適用されるため、万が一残業代が支払われなかった場合には従業員は企業に支払いを請求することができます。
超過勤務しても残業代が支払われない「サービス残業」、「名ばかり管理職」、「みなし労働」という言葉が存在する日本では、残業代が支払われない、もしくは請求しにくいケースが多々ありますが、未払い残業代を請求できる権利は過去2年間分までと定められています。
未払い残業代の請求を行うためには超過労働の実態を記録することが重要です。タイムカード、もしくはシフト表や業務日報、手帳やカレンダーへのメモなどで労働時間の実態を把握します。
また、その労働に対して企業が支払った金額がわかる給与明細なども必要となります。未払い残業代を請求するにはこの2つの証拠資料が無くてはなりません。会社に直接交渉する方法の他に、労働審判や訴訟を利用する方法もあります。
労働審判は2006年4月に開始した新しい制度で、企業と労働者の間で起こる賃金不払いや解雇といった個別の争いについて、実効性のある解決を迅速に図るためにできました。
訴訟と違って弁護士を依頼する必要もなく、裁判よりも手続きが簡単で短期間で結論を出すことが可能です。開始当初は1000件に満たなかった申立件数も、2010年には3375件にまで増加し、うち未払い残業代などの賃金に関する案件が30.9%を占めています。
大手企業の例では2009年3月の日本マクドナルドの店長訴訟が大きく取り上げられました。管理職であることを理由に残業代が支払われない違法性を訴えた裁判では、「名ばかり管理職」であった事実が認められ、過去2年分の未払い残業代を含む約1000万円が原告に支払われました。
労働基準法違反の指摘を受け、平成22年度に100万円を超す残業代を支払った企業は1386社、合計支払い金額は123億2358万円でした。
これは、前年度比165社の増加、金額でいうと7億2060万円の増加を見せています。このように、かつては未払い残業代を容認していた従業員たちも、近年では自らの権利を主張するようになってきています。