「エンゲージメント(engagement)」とは、従業員の会社に対する愛着心や思い入れといった意味です。このような感情は多くの場合、会社側の努力もあって初めて従業員側に生じるものです。そのため、最近では「個人と組織が対等の関係で、互いの成長に貢献し合う関係」のことを指すとされています。

我が国の人事制度は、長い間、終身雇用・年功序列を基本としてきました。しかし、ここ20年ほどの間に大きな変化が起き、成果主義的な要素が強くなってきました。人材育成においても、長期的な能力開発よりも、すぐに業績成果に結びつくようなものが重視されるようになっています。

このような変化は働く人の会社に対する意識も変えることになりました。より良い待遇や環境を求めて転職することに、以前のような抵抗感がなくなったのです。特に優秀な人材ほどその傾向が強いとされています。優秀な人材ほど、上昇志向が強く、キャリアアップやスキルアップに関心を持っていることが多いからです。

その結果、多くの企業が人材の流出に悩むようになりました。一方、少子高齢化の進展と人口減少社会の到来で、採用の難しさは増し、人材確保を最優先課題とする企業が増えています。

以上のような環境変化から、エンゲージメントへの関心が高まっています。「個人の成長や働きがいを高めることが組織の価値を高める」「組織の成長が個人の成長や働きがいを高める」という関係が構築できれば、人材の流出を最小限に抑え、業績の向上も期待できます。

個々の従業員のエンゲージメントの状態を把握し、高めていくためのツールとして「エンゲージメント指標」というのもあります。コンサルティングファームなどが提供しているもので、従業員がどの程度、「この会社にいれば自分のありたい姿に向かって成長できる」「自己実現のための努力が会社のビジョンにも貢献できる」と考えているかを測定するというものです。こういったもので現状を把握することが、エンゲージメント向上施策の第一歩となります。