「改正労働契約法」とは、有期契約労働者の中でも、長年にわたり反復更新している労働者の期間満了による雇止めの不安を解消するための法律です。
この改正にポイントは3つあります。(1)有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換、(2)「雇止め法理」の法定化、(3)期間の定めのあるところによる不合理な労働条件の禁止です。
(1)有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換については、有期労働契約が5年を超えて、繰り返し更新された場合、労働者の申し込みにより、無期雇用に転換できるというものです。ただし、6ヶ月以上の空白期間がある場合は、前の契約期間を通算しない、その労働条件は、別段の定めのない限り、有期契約時と同一条件とするという規定があります。
また、(2)「雇止め法理」の法定化は、有期雇用が繰り返し更新され、実質的に無期雇用と変わりない状態で存在している場合などは、客観的な合理的理由がない限り、雇用期間の満了による雇用契約の終了、いわゆる雇止めができません。これは、判例法理で既に存在していたものを、制定法化したものです。
そして、(3)期間の定めのあるところによる不合理な労働条件の禁止については、期間の定めがあることによる、無期雇用との労働条件などの相違は、不合理であってはならないという規定です。これは、有期契約労働者の厚生な処遇の実現のためのものであって、同じ業務をしている場合、無期雇用と有期雇用の給与に差があってはならないなどが例に挙がってきます。
雇用を無期化しても、必ずしも正社員となるわけではなく、労働条件を有期契約時と同一と書いているので、契約満了による雇止めを防ぎ、正社員ではなくても安心して働けるという状態がつくられました。これにより、正社員採用が減少し、社会的不安が出てきますが、今後、日本でも「正社員」という概念から外国のように「レギュラーワーカー」という考えが浸透してくるのではないかといわれています。
また、懸念される問題としては、無期雇用を避けるために、5年以下で契約を終了する会社が増える可能性もあるので、安定雇用とは逆の結果になる恐れもあります。この問題に関しては、有期雇用が主な戦力となっている小売業など、大量人数の無期雇用が難しく、5年以下で契約を終了せざるをえない企業は、企業側も労働側も負担増となり、既に5年以下の雇止めが多く発生しています。しかも、6カ月以上の空白期間があれば通算しないという規定から、一旦契約を終了し、6ヶ月後にまた採用するというのを繰り返す事ができるため、かえって、雇用は不安定になるのではないかと指摘されています。
なお、今回の改正法の施行日については、(2)の「雇止め法理」の法定化については平成24年8月10日(公布日)、(1)有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換、(3)期間の定めのあるところによる不合理な労働条件の禁止については、平成25年4月1日です。