【2016年】
08月:夫、大阪本社にて採用
【2017年】
10月:夫、東京本社へ異動
11月:妻、就職
【2019年】
03月:夫、育休
04月19日:夫、育休終了
04月23日:夫、5月付での関西へ異動の内示
04月23~25日:妻、組合・労働局に電話相談(→違法ではないとの回答)
05月07日:夫、5月末日付で退職願提出
05月10日:妻、育休終了
06月01日:妻、Twitter発信・炎上
「違法性がない」という会社側の言い分
企業側は弁護士を通じ、次のようなコメントを発表した。・育休前に、元社員の勤務状況に照らし異動させることが必要であると判断しておりましたが、本人へ内示する前に育休に入られたために育休明け直後に内示することとなってしまいました。
・育休をとった社員だけを特別扱いすることはできません。したがって、結果的に転勤の内示が育休明けになることもあり、このこと自体が問題であるとは認識しておりません。
・着任日を延ばして欲しいとの希望がありましたが、元社員の勤務状況に照らし希望を受け入れるとけじめなく着任が遅れると判断して希望は受け入れませんでした。
―― 以上を見て分かるように、企業側は一貫して「違法性はない」という立場を取っている。確かに、「転勤あり」という条件で雇用されていた社員について転勤命令をすることは違法とは言えない。このケースでも、相談を受けた組合・労働局は、転勤の違法性は否定している。
問題点と「育児休業」のこれから
では、なぜこんなにも騒ぎが大きくなったのか。一つには、個別の事情を配慮する姿勢が足りなかった(感じられなかった)ことが挙げられる。同時に、待機児童問題がある中で子供を保育園に入れている、もしくは家を購入したばかりである、などの事情がやはり会社から配慮されなかった“同じような境遇にある人々”から、同情を集めたと考えられる。
この事件で法的に問題になりうるのは、「退職時の有給休暇を拒否したか否か」である。しかし、法的に問題がないからといって、社会的に受け入れられるとは限らない。実際、悪評が広がってしまったこの事件では、一時的に同社の採用活動にも悪影響を及ぼしたようだ。ただでさえ採用難が続く中で、このような事態は絶対に避けたいだろう。
子育て世代の社員の定着や採用をするためには、「育児との両立を支援する企業姿勢」を示していくことが大切だ。厚生労働省の“くるみん認定”がその一例である。
>>厚生労働省:くるみんマーク・プラチナくるみんマークについて
問題解決のために、例えば下記施策を実施するのはいかがだろうか。
(1)在宅勤務の認容・拡大
(2)企業内施設・保育施設の用意
(3)残業抑制
企業の属性や社風・方針等々にもよるだろうが、今後は、子育て世代をあえて優遇する施策も十分ありうるだろう。
瀧本 旭
社会保険労務士法人ステディ 代表社員