リクルートマネジメントソリューションズは2019年6月、3~4月に行った「2019年新入社員意識調査」の結果を発表した。対象はこの春から社会人となった新入社員1,178名(平均年齢:21.8歳/男女比:約5対5)。同社では2010年以降、新入社員が考えていることや不安に思っていることなどを定点調査している。これまでの回答と比較し、その年の傾向や変化を把握することで、企業や上司が彼らをどう育成したらいいかを分析する。
まず「働いていく上で大切にしたいことは?」と質問したところ、昨年まで不動の1位だった「社会人としてのルール・マナーを身につけること」がワンランクダウンの42.2%となり、代わりに「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が43.8%で首位となった。また、「何があってもあきらめずにやりきること」は調査開始以降下がり続け、今年は17.2%と過去最低を記録した。一方、「仕事で高い成果を出すこと」は過去最高の19.1%となっている。
このことから、彼らは実直さや粘り強さよりも、仕事の成果につながるものを着実に身につけたいと望んでいるようだ。「働き方改革」によるここ数年の働き方の変動に加え、子どもの頃からインターネットが身近にあり、ほしい情報がすぐ手に入る状況だったことなどが背景にあると考えられる。
ビジネスの基本であるマナーについて、やや関心が下がっているように受け取れるのは、企業側としては気になるところだろう。上司が「さまざまなステークホルダーと仕事を進める上でマナーが必要である」、「マナーあっての関係性構築であり、それがチャンスとなって生産性の高い仕事につながりやすい」など、新入社員が納得できるような説明をすることで、彼らの取り組む姿勢にも変化が出てくると期待できる。
続いて「仕事・職場生活をする上で不安に思っていることは?」と尋ねると、最多は「仕事についていけるか」(61.6%)だった。なお、第3位の「自分が成長できるか」は32.9%で過去最低、第7位の「やりたい仕事ができるか」は17.8%で過去最高となった。仕事そのものについての関心は高くなっている一方、仕事を通じた自己成長への欲求は下がっていることになる。
新入社員はやりたい仕事がすぐにできない場合も多いだろうが、中長期的に見て現在の仕事がやりたい仕事につながっていく道筋や、目の前の仕事の積み重ねが将来のキャリアにとってプラスになることなどを、上司が伝えていくことが大切だ。
次に「どのような職場で働きたいと思っているか」を質問した。「お互いに助けあう」(60.4%)、「アットホーム」(47.4%)、「お互いに個性を尊重する」(43.4%)がこの3年の不動のトップ3だが、中でも「お互いに個性を尊重する」の伸長が著しく、2010年の調査開始当初から16.4ポイントも伸びている。一方、「活気がある」(10年間で―11.2%、以下同年と比較)、「皆が1つの目標を共有している」(―8.9%)、「お互いに鍛えあう」(―8.9%)は下がり続け、過去最低値となった。
このことから、おそらく1位の「お互いに助け合う」も、調査開始当時とはニュアンスが違っていると思われる。以前は「一丸となってひとつの目標を目指し、集団の中で助け合うこと」を指していたのに対し、今回は「お互いの個性や特徴を認め、尊重し活かしながら助け合うこと」をイメージしていると想定される。
企業側は、1人ひとりの意見を聞きながら共に目指すべきものを見出す、といった “個人が大事にしていること”につなげて物事を進める工夫が必要だろう。
最後に、「上司に期待すること」を聞いた。その結果、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」(49.2%)、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」(44.8%)、「好き嫌いで判断をしないこと」(34.5%)、「よいこと・よい仕事をほめること」(26.5%)の4項目が著しく上昇した。そして、「言うべきことは言い、厳しく指導すること」(24.4%)、「周囲を引っ張るリーダーシップ」(16.7%)、「仕事がバリバリできること」(11.8%)がポイントを落とし続けている。
これらを踏まえると、新入社員が上司に期待するのは「メンバー1人ひとりの声を聞き、良い点をしっかりキャッチし個別指導できる人物像」だと考えられる。
2019年の新入社員は、マナーよりも仕事に必要な知識・スキルへの関心が強く、仕事を通じた成長欲求が薄くなりつつあり、個人にフォーカスする職場や上司を望んでいることがわかった。企業側は、新入社員があまり関心を示さないような“必要だけど地味なこと”などを、彼らそれぞれのやりたいことや思考と紐づけ、働きかけていくことが求められるだろう。