データベースや基幹業務向けソフト会社というイメージが強かったオラクルだが、近年ではビジネス向けアプリケーション全般をクラウドで提供している。人事・人材 (Human Capital Management:HCM)の分野では、給与管理や労務管理といった人事管理と、リクルーティング/パフォーマンスマネジメントなどの人材管理(タレントマネジメント)の両面を統合して、クラウドで提供できる唯一の企業である。
3日間の期間中には、4つの基調講演と、9つのトラックで100以上ものセッションが開催された。基調講演ではプレジデントのマーク・ハード氏が登壇し、Oracle HCMの特徴とユーザーメリットを語った。ハード氏はHRプロのインタビューに応じ、日本の企業経営者や人事担当者に向けて以下のようにメッセージを贈った。
「日本にはイノベイティブで素晴らしい企業がたくさんあります。しかし今、産業界は新たなステージやグローバル化に向けて困難を抱えています。私の、グローバル企業の社長としての経験から言うと、企業というのはベストな人材を持てば、たいてい勝つことができる。日本でも、ブラジルでも、中国でも、インドでも、世界中どこでもこれは同じです。企業競争力の源泉は人材にあると、私は考えています。
アメリカでは、大きな労働力であったベビーブーマーが退職し、経営者は不足した労働力を補おうとしています。人数を確保することだけでなく、より洗練された人材やテクノロジーに明るい人材を採用したい。ではどうやって採用し、定着化させ、育成するかという戦略が必要です。この現象は、日本でも同じではないでしょうか。
私たちを取り巻くテクノロジーは、どんどん進化しています。アメリカで、全アプリケーションの平均耐用期間は20年です。思い出してください、20年前の1994年にアプリケーションがつくられた頃を。業界では何がありましたか? インターネットにおいて何がありましたか? サーチエンジン、facebook、twitter、iPadはありましたか? 全てが実在していませんでした。しかしこれらは今、必要不可欠なものになっています。
facebookやtwitterに見られるようなソーシャルの機能を、社内で活用してビジネスのためのコミュニケーションを促進すること。そしてモバイル機器を活用して、デスクにしばられずにビジネスをスピーディーに進めること。これら2つをビジネス・アプリケーションが実現するためには、クラウドによって提供されなければなりません。こうしたコンセプトで開発されたModern HCMを、企業の競争力を高めるために使うのは当然ではないでしょうか。なぜなら日本で起きている問題は、アメリカの問題と同じだからです。
オラクルが提供しているのは、単にデータを貯めるだけのHCMシステムではありません。人材とコミュニケーションから生まれるビッグデータを、経営に必要な施策に落とし込むための分析機能です。これが世界の競争に勝つための、未来を描く手段です。」
本イベントでは、Oracle HCMのユーザー企業である日立製作所のHRバイスプレジデントが、たった3年でグローバル・グレーディングとHCMシステム導入等を進めた事例を紹介した。日本企業がグローバル企業として事例を発表したことは誇らしかったが、一般的な日本企業でのHCMシステムの導入は、まだ始まったばかりだ。先進的なテクノロジーをうまく活用して人事・人材管理を進め、データを集めて分析し、一歩先取りした戦略をたてていくことが、グローバル競争で必須となるだろう。
HR総合調査研究所 ライター 丸島美奈子
「Oracle HCM World 2014」の基調講演を講演録としてまとめました。日立製作所の事例をはじめ、HCMの最新動向はこちらよりご覧いただけます。