近年、日本企業における深刻な人材不足の対策として、従業員の会社に対するエンゲージメント(愛着心・思い入れ)の向上に取り組む人事戦略が注目を集めている。そんな中、株式会社アスマークは2019年3月14日~5月7日、同社が運営するアンケートモニターサイト「D style web」にて、就業形態問わず、現在仕事をしている15歳以上の男女11,888名を対象に「社員の離職要因とエンゲージメントに関する調査」を実施。5月20日にその結果をまとめ、発表した。
エンゲージメントは仕事に対し、どれだけやりがいを感じているか、喜びを感じているかに直結すると考えられる。そこで、本調査ではまず、「現在の仕事に対する満足度」を尋ねた。すると、全体の満足度は38.7%で4割を下回り、満足していない層が30.5%と3割強存在する結果となった。
なお、職種別では、「製造・現業職・作業職」が30.3%と最も低い結果となった。また、役職別では、事業部長・本部長クラスの満足度が67.2%と、他の役職に比べて高い傾向が見られた。
これらのことから、満足度は職種・役職によって水準が大きく異なることが分かる。よって、ES調査において「自社の満足度は〇〇%だった」など、満足度水準を一括りに比べる事はナンセンスと言えるだろう。そこにはそもそも職種の特徴が反映されており、客観的な満足度水準の判断には、同職種とのベンチマーク比較が不可欠であるからだ。
現在の仕事に満足していない層が全体の3割強であるということは、離職意向を持っている層もそれと同程度なのだろうか?次に、「離職意向を持っているか否か?」を尋ねると、離職意向は全体の25.6%で、約4人に1人が離職意向を持っていることが分かった。
こちらも職種別・役職別に見ると、職種別では「販売・サービス職」が32.7%と最も離職意向が高く、役職別では、課長クラス以上にポストが上がるにつれて23.2%(課長クラス)→16.9%(部長クラス)→12.2%(事業部長・本部長クラス)と離職意向が下がっていく傾向が見られた。
よって、離職意向についても、前述の仕事の満足度と同様、職種・役職などを無視した値の単純比較はナンセンスと言える。
最後に、「満足度と離職意向の関係性」を見てみよう。すると、案の定、ほぼ反比例の関係性が見える。満足度が高いほど、離職意向は低い。逆に満足度が低いと、離職意向は高い。
その一方で、上記表をさらに細かく、職種ごとに見ると、満足度の割に離職意向が高い職種と、満足度の割に離職意向が低い職種といった特徴も見られる。例えば、販売・サービス職は満足度の割に離職意向は高めであり、製造職は低めである。
これには、こうした職種に就く人々の特性といった内部要因と、転職環境などの外部要因が影響していると考えられる。