■働き方データの活用に関する「経営幹部」と「従業員」それぞれの考え
〈全世界1,400人の経営幹部〉・従業員の働き方に関するデータの収集に新しいテクノロジーを活用している……62%
・収集したデータを適切な方法で活用している自信がある……30%
〈全世界1万人の従業員〉
・自分の働き方に関するデータを活用することで、生産性や満足度が向上するなど、個人的なメリットにつながる場合に限り、自分や自分の働き方に関するデータの収集を許容している……92%
・近年のデータ乱用に関する不祥事を踏まえ、自分のデータもリスクにさらされているのではないかとの懸念がある……64%
●データ利用懸念から2つの方向に広がるリスク
従業員からの反発の懸念から、従業員の働き方に関するデータ収集のための、テクノロジーへの投資をできるだけ控えている企業は31%であった。ここから、倫理的な懸念への対応として、従業員の働き方に関するデータの収集を見送っている様子がうかがえる。また、指針となるような適切な法律が存在しないため、適切な追加措置を講じないまま、従業員の働き方に関するデータを収集するための、新しいテクノロジーの使用を推進している、と回答したリーダーも49%に上る。安全対策を講じないままのデータ活用戦略によって、経済的損失のリスクにさらされている企業も少なくないようだ。
■業界別 従業員の働き方データの適切な管理・活用ができた場合の潜在的収益向上額
●データ活用による経済的恩恵は「大」
レポートによると企業が適切でない働き方データ活用戦略を導入した場合、将来の収益成長が全体で6.1%減ってしまう恐れがあるが、一方で適切に採用した場合には、従業員からの信頼によって、将来の収益成長が全体で6.4%増加、という恩恵がもたらされる可能性があることがわかった。つまり、適切な働き方に関するデータ活用戦略を導入している企業は、そうでない企業と比べ、最大12.5%高い収益が見込まれることになる。この差異は金額にして3兆ドル以上の収益増に相当する。
アクセンチュア株式会社 戦略コンサルティング本部 人材・組織管理統括 マネジング・ディレクターの植野 蘭子氏は、こうした結果を踏まえ、次のように述べている。
「企業が従業員やその働き方に関するデータを活用して、企業価値の拡大を図るうえで重要な点は、従業員データの利用に関してきちんとした説明責任を果たしつつ、従業員と共にデータを収集・活用する新しい仕組み・システムを創り上げることです。従業員自身が、自分のデータを以前よりも自由にコントロールし、キャリア構築などに活用できるようになったと実感できれば、従業員の変化への俊敏性が高まり、その環境を整えてくれた所属組織に対する信頼も高まることでしょう。
この信頼を高めることで、従業員のポテンシャルがさらに引き出され、結果、企業の成長が促進されると考えます。経営幹部は、消費者だけでなく従業員の信頼獲得も事業戦略の中核に据え、その実現のための明確なアクションプランを整備する必要があります」