「もう暴力しないと誓う」、「度重なる暴力行為によって、不快な思いと恐怖を与えてしまったことを深くおわびいたします」…これらは世間をにぎわすパワハラ報道が出てくるたびに、加害者と目される人物から発せられる言葉だ。当事者双方の言い分が対立していることもあり、世間を巻き込んだ大騒動になっている。どのように収束するにしても、問題解決に多大なエネルギーを使わざるを得ないことが、業界全体にとっては大きな損失となるのは間違いないだろう。なぜあのような事件が起こるのか、今回は労務管理の点から検証してみたい。
パワハラ告発はなぜ起こる?

要因

連日報道されているスポーツ界のパワハラが、大きな問題となる要因として考えれられるのは、下記の要素が含まれるからだろうか。

・暴力
・師弟関係
・(従順な)性格
・世間の風潮、等

各団体の事件には、共通して、「(パワハラを含む)ハラスメントに対する嫌悪感が蔓延する風潮に乗じて、権力に抗った」という構図が見え隠れする。東京五輪が迫り、世間の関心を集めやすいスポーツ団体および時期であることもあり、騒ぎがより大きくなったことも否めないだろう。

上記事件からの教訓(1):ストレス耐性

ストレス耐性には個人差があるが、相手のストレス耐性を見誤ることによって、パワハラが表面化することがある。例えば、体操協会に関する報道によると、当該選手は、肉体的暴力よりも精神的暴力(師弟関係を解かれること)に強いストレスを感じ、結果、パワハラの告発に至ったようだ。

労務管理の現場においても、部下のストレスが肉体的暴力によるのか精神的暴力によるのか、またストレス耐性はどの程度なのかという認識にズレがあるとき、パワハラ問題がより深刻化することがある。

このとき注意したいのは、何をストレスと感じるかについては、本人も理解できていないことがあるということだ。上司は日頃のコミュニケーションにより、部下のストレスポイント・許容量を把握する努力が欠かせないだろう。

上記事件からの教訓(2):相談機能の強化

もう一つ、体操協会のパワハラ問題に関して言えば、強固な師弟関係(主従関係)が事態を複雑にしているようにみえる。師弟関係(主従関係)は、通常、他人が介入することが困難であり、かつ当事者に客観性を失わせてしまうこともある。

よって、仮に、発言の安全性が担保された相談窓口があったならば、事件の深刻化を防ぐことができたかもしれない。

しかしこれも注意したいのは、形だけの相談窓口を設けたところで、機能しなければまったく意味をなさない。相談窓口は、組織内外からの客観的な指摘や、気付き(それに伴う安心感等)を与えることができるものでなければならない。

いざというときに駆け込むことができる相談窓口の設置は、パワハラと考えられる事案において、当事者双方の感情をコントロールすることに寄与する。パワハラ問題解決のための対策・対処法として、相談窓口の設置を検討する余地は大いにあるだろう。

社会保険労務士法人ステディ
代表社員 瀧本 旭

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