新たな年度に入り、今年も新入社員を迎えた企業は多いことだろう。
毎年、日本生産性本部「職業のあり方研究会」がその年の新入社員のタイプを発表している。
今年の新入社員は、「キャラクター捕獲ゲーム型」と命名された。
特徴としては、「はじめは熱中して取り組むが、飽きやすい傾向」があるようだ。人事担当者は、モチベーションを下げずにどのように定着・育成を図っていくか頭を悩ませそうだ。

さて、新たに社員を雇入れた場合、雇用契約書を書面にて作成し、取り交わしが行われる。その中に、試用期間を設け、その期間を仮採用、期間後を本採用とする企業もあるだろう。
だが、「試用期間」の法律的意味合い等について、正しく理解しておられない企業も多いように感じられる。そこで、以下では「試用期間」についての誤解されやすいポイント等について見ていくことにする。
「試用期間」~その意味と注意点について~

「試用期間」について ~解雇と予告~

そもそも「試用期間」の法的な意味とは何であろうか。
「試用期間」は採用後、社員としての適性を判断・評価するため設けられている期間と解され、社員と企業との関係は「解約権留保付」の労働契約が結ばれていると考えられる。

企業の中には、試用期間であれば社員を自由に契約解除できると考えているところもあるようだ。だが、「試用期間」であっても、解雇の問題となることに変わりはない。
つまりは、「客観的な合理性・社会的な相当性がなければ、その解雇は無効」であるとの労働法上の制限がかかることになる。ただし、「試用期間」における解雇は、求められる合理性・相当性が通常の解雇に比べ低いと考えられる。

また、「試用期間」であれば、解雇予告なく又は解雇予告手当の支払いなく解雇できると考えている企業もあるようだが、こちらも誤りである。予告又は手当の支払いが不要とされるのは、解雇が「試用期間」中であり、採用から14日以内に行われる場合に限られる。
上記に該当しない限り、30日以上前の解雇の予告等が必要となる。

「試用期間」としての有期契約

期間の定めのない雇用契約(無期契約)を締結する前に、期間の定めのある雇用契約(有期契約)を結び、社員の適格性等の判断をするという取り扱いを行っている企業も見受けられる。その場合に、契約期間満了後、雇用契約を打ち切ることが可能かが問題となる。
判例では、契約期間が従業員の適格性等を判断する目的で設けられた場合には、その期間は試用期間の性質をもつと解されている。
そのため、有期契約の期間が試用期間としての性格を持つとの判断がなされた場合、契約期間満了にて雇用契約を終了させることは難しく、解雇の問題として、「客観的な合理性・社会的な相当性」が求められることになる。

おわりに

社員の適格性を判断する試みの期間である「試用期間」であれば簡単に雇用契約を解約することができると考えている企業は多い。しかし、現実的には一般の社員と同じく、解雇するには合理性・相当性が求められることとなり、注意が必要である。
また、社員とのトラブルを予防するためには、就業規則・雇用契約書に「試用期間」についてうたうことはもちろん、どのような場合には、本採用に至らないかを明確に伝えることが必要となる。その場合に、目に見える形の目標を設定することが重要だ。


社会保険労務士たきもと事務所
代表 瀧本 旭

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