労働契約法第18条に基づく有期労働契約者の無期転換申込が、平成30年4月より可能になる。残り約1年半。今のうちに無期転換後の雇用管理について、検討を始めておきたい
迫る!有期労働契約の無期転換申込の開始。

無期転換者はどの就業規則が適用されるのか?

平成25年の労働契約法の改正により、有期労働契約の「無期転換ルール」が導入された。同一の使用者との間に有期労働契約が5年を超えて更新された場合、労働者の申込により、無期労働契約に転換できるというものである。

平成25年4月時に有期雇用契約者であった労働者は、平成30年4月以降随時、無期転換申込が可能になる。
無期転換ルールの概略については、下記を参照いただきたい。
■無期労働契約への転換(18条)

 では、実際に無期転換申込があった後の雇用管理に、どのような影響が考えられるであろうか。
 有期雇用契約者は大きく分けて次の4つに分類できるだろう。
①フルタイム勤務(正社員と同じ日数、時間数の勤務)で月給制の者
②フルタイム勤務(正社員と同じ日数、時間数の勤務)で時間給や日給制の者
③パートタイム勤務(正社員より少ない日数、時間数の勤務)で月給制の者
④パートタイム勤務(正社員より少ない日数、時間数の勤務)で時間給や日給制の者


一般的には、①、②、③は「契約社員」「準社員」や「嘱託社員」、④は「パート・アルバイト」等と呼ばれることが多いのではないだろうか。

 以上を踏まえた上で、貴社の就業規則の従業員の種類や正社員の定義について定めている条項を確認してもらいたい。

 例えば、
「正社員=契約期間の定めが無くフルタイム勤務する者」と定義されているならば、①と②の有期雇用契約者が無期転換した場合、正社員就業規則が適用される可能性が出てくる。
「正社員=有期雇用以外の者」とされているならば、①~④全ての有期雇用契約者が無期転換した場合、正社員就業規則が適用される可能性が出てくる。
また、上記のような定めが無い場合でも、有期雇用契約者が無期転換した場合、どの就業規則が適用されるのか?明確にしておく必要がある。

無期転換者の3つの雇用管理方法

無期転換者をどのように雇用管理し活用する方法が考えられるだろうか。主に次の3パターンが考えられるであろう。
①正社員と同様の扱いする。
②あくまで従前の有期雇用時代と同様とする。(無期雇用になっただけ)
③新たに無期転換者としての別個の扱いをする。


①を採用する場合、賞与や退職金、その他正社員と同様の処遇等となる。従来から「正社員登用制度」を設けている場合でも、有期雇用契約者が無期転換の申出をすれば、転換試験を経ずに自動的に正社員となる。
例えば、5年以上有期雇用契約にて勤務した者については、正社員と同様に業務遂行し職責を有して、長期的に活躍してもらいたい場合には、これを採用することも良いだろう。

②を採用する場合は、無期雇用になっただけで、その他の処遇等は、有期雇用契約時代と同様となる。
この場合、定年の問題が出てくる。通常、有期雇用契約者の就業規則には、更新年齢の上限が定められていることが多い。無期転換者には、定年の定めを明確にする必要があるだろう。
 また労働契約法第20条により、有期雇用契約者でも正社員と比べて、業務内容や責任の程度が同じである場合、正社員との処遇差は違法とされる可能性ある。増して無期転換した場合には、その点がどうであるか、再度確認しなければならい。

ちなみに下記のような通達も既に出ている。

「有期労働契約の更新時に、所定労働日や始業終業時刻等の労働条件の定期的変更が行われていた場合に、無期労働契約への転換後も従前と同様に定期的にこれらの労働条件の変更を行うことができる旨の別段の定めをすることは差し支えないと解されること。」(基発0810第2号「労働契約法の施行について」)


 上記を踏まえた上で、就業規則については、既に有期雇用契約者の就業規則がある場合には、無期転換者も含む就業規則に改定するか、あるいは、無期転換者用の就業規則を別に定めるか、検討する必要がある。
 なお、長期的に繰り返し契約更新を行っている有期雇用契約者を雇い止めする場合は、正社員の解雇と同等の合理性が求められることから、この点に関しては、無期転換制度による影響は実質的に変わらないと考えられる。

③については、限定正社員(勤務地限定、職務限定等)、短時間正社員の制度を活用する方法が一例として考えられる。既に、これらの制度がある場合でも、無期転換者がスムースに移行できるよう制度を整えること。通常の正社員との処遇差や業務内容や責任の程度とのバランスはどうか、ここでも確認しておくべきである。

もちろん、①~③のいずれかを無期転換者に選択してもらう方法も考えられるだろう。

 有期雇用契約者のいる企業においては、あと約1年半後の平成30年4月以降に、無期転換者が出てくる可能性がある。
出来れば、その1年前、遅くとも数ヶ月前までには、上記の整備をしておかなければならない。逆算すれば、そろそろ本格的に検討を開始すべき時期に入っている。


オフィス・ライフワークコンサルティング
社会保険労務士・CDA 飯塚篤司

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