株式会社帝国データバンクは2024年1月24日、「令和6年能登半島地震(以下、能登半島地震)の影響と防災に関する企業アンケート」の結果を発表した。調査期間は2024年1月12日~17日で、全国の企業1,255社(甚大な被害を受けた能登地方の企業は除く)より回答を得ている。本調査結果から、能登半島地震による企業活動への影響や、企業防災(企業が行う自然災害への対策)に対する意識が明らかとなった。
『能登半島地震』による企業影響は全国に。“企業防災の大切さ”を9割以上が実感も、「BCP(事業継続計画)策定」はいまだ進まず

能登半島地震により「企業活動に影響がある(見込み含む)」との声が1割を超える

2024年1月1日に発生した能登半島地震は、甚大な人的・物的被害をもたらしており、交通の寸断などによって生産・消費活動に広く影響が出ると懸念される。復旧・復興が長期化すれば、能登地方の企業と取引きを行う全国の企業にも影響が広がる可能性があるが、能登半島地震により企業活動にどのような影響が出ているのだろうか。

はじめに帝国データバンクは、「能登半島地震による自社の企業活動への影響(直接・間接問わず)」の有無を尋ね、1,238社から回答を得た。すると、「影響がある(見込み含む)」(既に影響が出ている:4.3%、影響が見込まれる:9%の計)とする企業は13.3%だった。

既に影響が出ている企業からは、「社屋の一部が損壊した。幸い生産設備に問題はなかったが、一部配管漏洩や防煙ガラス破損、部材転落などの被害があった」(精密機械/医療機械・富山県)といった、地震による直接的な影響を示す声が聞かれたという。他方で、「材料が納入できなくなり、工期延長が発生した」(建設・埼玉県)、「金属製品の納入を検討していたが、取引先の工場が被災して納品時期が不明とのことで、別製品に切り替えることになった」(専門サービス・茨城県)といった声もあり、被災した地域以外でもサプライチェーンなどへの間接的な影響がみられたとのことだ。

また、「影響の有無を確認中」とした企業は7.4%、「現時点で影響はない」とした企業は75.3%だったが、現時点で影響が出ていないとした企業からも、「今後、仕入先の工場などの稼働状況がどうなるかが懸念される」といった、今後の影響を懸念する声が寄せられたという。
能登半島地震による自社の企業活動への影響

企業規模別の影響度は「中小企業」より「大企業」が高い傾向

そこで同社が、「能登半島地震による自社の企業活動への影響がある(見込み含む)」とした割合を企業規模別に調べたところ、「中小企業」(12.1%)は全国(13.3%)より僅かに割合が低かった。一方、比較的幅広い取引ネットワークを持つ「大企業」(20.1%)は全国を6.8ポイント上回る結果となった。
能登半島地震の「影響がある(見込み含む)」企業割合

被災地「北陸」での企業活動への影響は4割にのぼる

続いて同社は、地域別に「能登半島地震による企業活動への影響」をまとめた。すると、「影響がある(見込み含む)」は「全国」で13.3%だったのに対し、被災地である「北陸」は43.2%と突出して高かった。

企業からは、「人的・物理的被害は甚大であるが、震災による自粛・萎縮マインドにともなう地域経済活動の停滞も心配。災害復興の継続支援のほか、風化させない取り組みが必要」(金融・石川県)といったコメントがあったという。
地域別の能登半島地震による企業活動への影響

企業の9割以上が「企業防災」の大切さを再認識。「BCP策定・見直し」は5社に1社

さらに同社は、「能登半島地震の発生を機に、企業として改めて大切だと考えた防災対策」を複数回答で尋ねた。すると、「飲料水、非常食などの備蓄」が39.2%で最も多かった。以下、「社内連絡網の整備・確認」(38.3%)、「非常時の社内対応体制の整備・ルール化」(31.6%)、「非常時向けの備品の購入」(28.4%)が上位に並んだ。また、「事業継続計画(BCP)自体の策定・見直し」(20.6%)は5社に1社となった。なお、今回の地震を機に何らかの企業防災対策の大切さを改めて実感した企業は94.9%と、9割を超えた。

企業からは、「自然災害の強力な破壊力に対して何かをするというより、起きた後の社員と社員の家族の生活をどのように安定させるかを真剣に考えるきっかけになった。備蓄をどのように進めるかをしっかり検討していきたい」(情報サービス・岡山県)、「危機管理の重要性を再認識した。今回のように長期休暇中での災害は安否確認などに時間がかかる。緊急連絡網の整備と災害時での対応を常に議論することが重要だと実感した」(建設・栃木県)といった声が聞かれたとのことだ。

対して、被害の軽減につながり得る「建物や設備の強度確認、耐震補強」(10.7%)が1割程度にとどまるなか、「自社では、自然災害への備蓄保存や自家発電、社内マニュアルなどすべて対策を講じているが、今回のような災害ではどこまで実際に対応できるのかが不安。自然災害が起こる前に、建物老朽化の確認のほか、災害の起きやすい地域では事前に対策を講じる必要があると考えている」(不動産・大阪府)とのコメントもあったという。
能登半島地震の発生を機に、企業として改めて大切だと考えた防災対策
本調査結果から、能登半島地震により国内企業の約1割が影響を受けていることがわかった。また、今回の地震の発生を機に企業の9割以上が「企業防災」の大切さを改めて実感しており、なかでも「飲食料備蓄」や「連絡網の整備」といった基本的な企業防災対策を必要とする声が4割近くで上位となった。一方で、政府が近年推進している「BCP策定・見直し」は5社に1社にとどまった。企業においては、いつ起こるかわからない自然災害による被害を最小限に抑えるため、防災・減災対策をさらに強化することが求められるだろう。

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