2024年の景気見通しは「踊り場」との回答が4割以上。「悪化」は前年より5ポイント減少に
新型コロナの5類移行後はレジャー産業が国内消費をけん引し、全国的な公共工事や都市圏での大規模開発、地方での半導体関連工場の新設など設備投資も大きく動き出している。市場は景気回復の兆しもみられるが、個人の消費環境については、賃金の上昇が物価の高騰に追いつかず依然として厳しい状況だ。そうした中、企業は2024年の景気に対しどのような見通しを持っているのだろうか。はじめに帝国データバンクは、「2024年の景気見通し」について、過去のTDB景気動向調査の結果を踏まえてまとめた。すると、「踊り場局面」との回答が42.1%で最も多く、2年ぶりに4割を超えた。また、「回復局面」とした企業は、2023年の景気見通し(2022年11月調査)から1.3ポイント増の12.8%だった。一方で、「悪化局面」とした企業は同5ポイント減の20.3%で、5社に1社となった。
企業からは、「正常な経済活動に戻りつつあることは良い兆しだと思う。積極的な設備投資・事業推進を期待したい」(専門サービス)といった声が聞かれたという。他方で、「世界情勢・国内情勢ともに明るい話題がないため、マイナス方向に動く感じがする」(運輸・倉庫)、「物価高騰・増税・人手不足・高齢者人口の増加・2024年問題など、明るい材料が見当たらない」(建設)など、先行きを不安視する声も寄せられたとのことだ。
景気懸念材料のトップは「原油・素材価格」。「人手不足」、「金利」が急上昇
続いて、「2024年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料」を複数回答で尋ねた。その結果、トップが「原油・素材価格(の上昇)」で59%(前年比13.7ポイント減)だった。2023年の後半に入ってから大幅な価格変動がみられないことなどもあり、前年から大きく低下する結果となっている。以下、「人手不足」が40.5%(同14.4ポイント増)、「為替(円安)」が37.4%(同6.1ポイント減)、「物価上昇(インフレ)」が26.7%(同6.6ポイント減)と続いた。そのほかの懸念材料としては、日本銀行の金融緩和政策の見直しにともなう「金利(の上昇)」(同6.4ポイント増)や、運送業・建設業などにおいて猶予されていた時間外労働時間の上限規制適用により生じる「2024年問題」(初出、17%)も上位にあがった。
景気回復に必要な政策は「人手不足の解消」がトップ。前年比12ポイント増に
最後に同社が、「今後、景気が回復するために必要な政策」を複数回答で尋ねたところ、「人手不足の解消」が40.7%(前年比12ポイント増)でトップとなり、前年より大幅に上昇した。以下、補助金・給付金などの「中小企業向け支援策の拡充」(34.8%)、「原材料不足や価格高騰への対策」(34.6%)、「個人向け減税」(33.1%)、「個人消費の拡大策」(32.4%)が3割台で続いた。自由回答には、「人手不足への対応が全業種のカギとなる。人手不足により、設備を稼働できない、発注はあるが対応できないなどの影響が出てしまうと、業況の回復が足踏みしてしまう」(金融)といった声があがったとのことだ。原材料価格の高騰や中小企業向けの施策が必要とされるなか、今後は「人手不足」に対する政策が最も重視されそうだ。