株式会社帝国データバンクは2023年7月10日、「2023年上半期(1-6月)の企業倒産件数」を集計し、分析結果を発表した。集計期間は2023年1月1日~6月30日で、負債1,000万円以上の、法的整理による倒産をした企業を対象としている。これにより、2023年上半期の倒産件数や業種別の割合、倒産主因別の増減などが明らかとなった。
2023年上半期の“企業倒産件数”は「4,006件」、14年ぶりに全業種で前年同期を上回る。コスト負担増や人手不足による倒産が加速か

2023年上半期の倒産件数は5年ぶりに4,000件を上回る。前期から大幅に増加

物価高騰や慢性的な人手不足が続く昨今、経営難に直面する企業も多いと考えられるが、2023年上半期の企業倒産動向はどのようになっているのだろうか。

まず帝国データバンクが2023年上半期の倒産動向をまとめたところ、2023年上半期の倒産件数は4,006件(前年同期3,045件、31.6%増)となり、上半期としては6年ぶりに前年を上回った。2023年3月に800件を記録して以降、月次ベースで600件を超える件数で推移したこともあり、上半期としては5年ぶりに4,000件を超えたという。

また、負債総額は9,065億8,400万円(前年同期1兆7,630億8,300万円、48.6%減)だった。マレリホールディングス株式会社の超大型倒産があった前年同期から、大幅に減少したとのことだ。
2023年上半期の“企業倒産件数”は「4,006件」、14年ぶりに全業種で前年同期を上回る。コスト負担増や人手不足による倒産が加速か
また、2000年以降の上半期における倒産件数の推移を見ると、2023年3月以降は大型倒産が相次いだこともあり、前期(2022年7-12月)に比べると大幅に上回った。
2023年上半期の“企業倒産件数”は「4,006件」、14年ぶりに全業種で前年同期を上回る。コスト負担増や人手不足による倒産が加速か

14年ぶりに全業種で前年同期より倒産が増加。「飲食店」は上半期として過去2番目

続いて同社が、倒産件数を業種別に集計したところ、上半期としては2009年以来、14年ぶりに全業種で前年を上回った。「サービス業」(前年同期774件→958件、23.8%増)が最も多く、「小売業」(同572件→834件、45.8%増)と「建設業」(同583件→795件、36.4%増)の2業種は、前年同期から200件を超える大幅増だった。また、「運輸・通信業」(同157件→211件、34.4%増)は、上半期としては9年ぶりに200件を超えた。

さらに業種を詳細にみると、「小売業」では、「飲食店」(前年同期208件→378件)が上半期としては2020年(398件)に次ぐ過去2番目の件数となった。「サービス業」では、「広告・調査・情報サービス」(同231件→308件)が大幅に増加し、全体の件数を押し上げた。また、資材価格高騰や人手不足の影響を受けた「建設業」では、上半期としては2年連続で前年を上回り、特に「職別工事」(同246件→353件)の増加が目立った。
2023年上半期の“企業倒産件数”は「4,006件」、14年ぶりに全業種で前年同期を上回る。コスト負担増や人手不足による倒産が加速か

「不況型倒産」は3,000件超、「販売不振」が全体の約8割を占める

次に、同社が「倒産主因別の増減」を分析したところ、「販売不振」が3,130件(前年同期2,330件、34.3%増)で最も多く、全体の78.1%を占めた。「売掛金回収難」(前年同期6件→22件、266.7%増)や「業界不振」(同31件→37件、19.4%増)などを含めた「不況型倒産」の合計は3,197件(同2,379件、34.4%増)となり、上半期としては2年連続で前年を上回った。

「放漫経営」(前年同期45件→61件、35.6%増)は、2000年以降で過去最少だった前年同期からの反動増もあり、大幅に上回った。また、「経営者の病気、死亡」(同136件→132件、2.9%減)は前年同期を下回ったものの、上半期としては3年連続で130件を超える高水準が続いた。
2023年上半期の“企業倒産件数”は「4,006件」、14年ぶりに全業種で前年同期を上回る。コスト負担増や人手不足による倒産が加速か

負債「5,000万円未満」の倒産が約6割となり、小規模な倒産増加が目立つ結果に

また、「負債規模別」に倒産件数を見ると、「5,000万円未満」の倒産が2,307件(前年同期1,787件、29.1%増)で最も多く、全体の57.6%を占めた。以下、「5億円未満」が823件(同599件、37.4%増)、「1億円未満」が658件(同467件、40.9%増)で続き、小規模な倒産の増加が目立った。

また、「資本金規模別」では、「1,000万円未満(個人事業主含む)」の倒産が2,720件(前年同期2,028件、34.1%増)発生し、全体の67.9%を占めた。
2023年上半期の“企業倒産件数”は「4,006件」、14年ぶりに全業種で前年同期を上回る。コスト負担増や人手不足による倒産が加速か
倒産が急増する背景には、「ゼロゼロ融資」に代表される各種公的支援による抑制効果の一巡に加え、インフレによるコスト負担増が大きく影響していると考えられる。加えて「2024年問題」に象徴される、建設や運輸業を中心とした人手不足を要因とした倒産も目立ってきているという。今後、「企業の地力」が問われる中で、資金繰りが難しくなった企業の倒産が増加する可能性があるため、経営難に直面する企業では、早めに対策を検討し存続を目指していきたい。

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