人的資本経営の目的は「生産性の向上」が最多に
2023年3月期から、上場企業と一部非上場企業の約4,000社を対象に人的情報開示が義務化される。人的資本経営に対する関心が社会的にも高まる中、企業の経営層は「人的資本経営の目的」をどのように捉えているのだろうか。メンタルヘルステクノロジーズはまず、「勤務先の企業における人的資本経営の目的」を尋ねた。すると、「生産性の向上」が48.2%で最多だった。以下、「自社のイメージアップ」が46.4%、「従業員のエンゲージメント向上」が38.2%と続いた。投資家から注目を集めていると思う理由は「SDGsやESG経営への注目度が高い」など
次に同社は、「人的資本経営は、投資家からの注目が高まっていると思うか」と尋ねた。すると、「非常にそう思う」および「そう思う」との回答が9割を占めたという。これを受け、上記の「非常にそう思う」もしくは「そう思う」とした人に対し、「注目度を高めていると思う理由」を同社が尋ねると、「SDGsやESG経営への注目度が高いから」が59.6%で最多だった。以下、「無形資産の価値が高まっているから」(47.5%)、「市場競争が激化し、他社との差別化が難しくなっているから」(41.4%)と続いた。SDGsやESGの観点などで、投資家からの関心の高さを実感している経営層が多いようだ。
「『情報開示』のための人的資本経営になっている」との懸念も
一方で、「人的資本に関して『情報開示』自体が目的になっていると感じるか」について同社が尋ねると、「非常にそう思う」および「そう思う」との回答の合計が約8割を占めたという。さらに同社が、「非常にそう思う」もしくは「そう思う」とした人に「その理由」を尋ねると、「自社の人的資本経営の目標や目的が曖昧だから」と、「今後人的資本情報開示が義務化されるから」との回答がともに44.8%で最多となった。そのほか、「業界全体として開示を行う企業が多いという理由で始めたから」(42.5%)、「国際的な動向に対応するため」(37.9%)が上位になった。関心の高さや義務化への対応のため、「情報開示」自体が目的となり、本質的な目的とのズレが懸念される結果となった。