被害認識も加害認識も「間接的な内容」の言動が最多
令和2年6月に施行された「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」により、職場におけるハラスメント防止対策が強化された。労務行政研究所は、筑波大学の心理支援開発研究センターとともに、「職場のハラスメント言動」について、2つの観点からの調査を実施した。「周囲調査(被害認識):職場のメンバーが、自身を含む同じ職場内の人々に対してハラスメント言動を行ったか」、「当人調査(加害認識):自分自身が同じ職場内の人々に対してハラスメント言動を行ったか」という観点でそれぞれ回答を得ている。はじめに、「被害認識」について周囲調査で「過去6ヵ月間に、職場のメンバーが自身を含む職場内の人々に対して、項目にある言動や行為を行ったか」を尋ねた。上位は「相手が嫌がるような皮肉や冗談を言う」が36.2%、「陰口を言ったり、悪い噂を広めたりする」が35.5%、「矛盾した言動をする」が34.7%となった。全項目の平均値は31.9%となり、3人に1人が、「自身や周囲にハラスメントと受け取れる言動があった」と感じていることがわかった。
また、全項目の平均は22.2%で、約4~5人に1人が「自分自身がハラスメント言動を行っている」と認識していることが明らかになった。先述した「周囲調査」の回答平均値が3割だったのに対し、「加害調査」の回答平均値は2割と1割程度低いことから、加害者側は無意識のまま「ハラスメント言動と捉えられる発言」をしている可能性もあるようだ。
役職に比例して被害認識は低いものの、加害認識は高い傾向に
続いて、「職位別」にハラスメント言動の認識について調べた。「周囲調査(被害認識)」では、「主任・係長」が34.3%と被害認識が最も高く、次に「課長」(34%)、「担当者」(31.6%)、「部長」(30.4%)、「役員」(19.9%)という結果に。役職があがるほど、「自分自身もしくは周囲がハラスメントを受けた」と感じる認識が低くなる傾向にあるとわかった。上司や部下の人数によって、被害・加害認識はともに異なる
また、ハラスメントの言動を「上司・部下の人数別」で比較した。その結果、「周囲調査(被害認識)」では上司人数が「3人」が最も高く38.5%、次いで「4人以上」が35%となった。部下人数は、「1~4人」が31.5%と最も高く、次に「5~9人」が30.7%、「0人」が29.2%、「10人以上」が27.9%と続いた(図表上:上司人数別のハラスメント言動、図表下:部下人数別のハラスメント言動)。
また、部下の人数を見ても、「0人」は16.2%と低いのに対し、「10人以上」では31.6%と3割を超える結果に。部下がいない、または少ない場合は、自身の加害言動が起こりづらいものの、部下人数が増えるにつれてハラスメント言動も増える傾向にあると言えるだろう(図表上:上司人数別のハラスメント言動、図表下:が部下人数別のハラスメント言動)。
上司の人数は「4人以上」になると周囲・当人の両者とも認識が高く、自覚できるハラスメントが顕在化していることがうかがえる。しかし、上司が「1人」のときは周囲・当人とも認識が低く、「ハラスメント自体が少ない」と認識していることが示されている。さらに、部下の人数が「10人以上」になると、「周囲へのハラスメントへの認識」は低くなっている一方で、「当人がハラスメント言動を行った」という認識は大きくなっていることから、周囲へのハラスメントに対して「やや認識しづらい」という現状が明らかとなった。